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今日死ぬ君に  作者: 降木星矢
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運転

「車を運転するにはどこにいけばいいと思う?」

 牛丼屋から出てしばらくあてもなる歩いていた。

「……普通ならレンタカーとか借りるんだろうど、君って免許は……」

「そんなの持ってるわけないじゃない。年齢的に無理よ」

「ですよね~……」

 彼女の夢を叶えるにはどうやら相当、かなり、大変のようだ。

 出来るだけ叶えようと誓って早々これだ。

 それにしても急に難易度あがったな……。今までは比較的楽だったんだけどな。

「う~ん……」

 困ったものだ。

 車も免許も持ってない学生二人が、車を運転するのはどうしたらいいんだろう……。

 これはネットで質問しても絶対に答えが返ってこない質問だな。是非大喜利に期待したいところだ。

「…………あっ」

 思いついてしまった。車の免許がなくても、学生でも、車を運転できる方法を。

「何か思いついたの?」

「まぁね」

 これだったら彼女の願いを叶えることが出来るかもしれない。

 でも彼女はこれで納得してくれるかどうか……?ある意味一休さんみたいな性根の悪い頓智だからな。

「それで一体どんな方法なの?」

 流石に彼女も何か疑っているようで、素直に従わずに内容を聞こうとする。

「え~とっ……」

 あれ?もしかしてこれ彼女に怒られるパターンか?

 思いついたって言ってしまった以上答えないといけないから、それがしょうもない内容と知った瞬間また機嫌が悪くなってしまうような……。

「それでどうやって運転するの?」

 返事に困っていると、何かを察したのか彼女がぐいぐい聞き出そうとしてくる。

 流石に言わないわけにもいかない……。でもこれ、言ったら確実に怒られちゃうな……。

「何?」

 しかもこれ言わなかったら言わなかったらで、機嫌が悪くなるからどっちもどっちなんだよな。

「――え~と、その怒らないで聞いてほしいんだけど」

 一応、という感じで保険をかけておく。

 まぁ、恐らく彼女に保険は適用外だろうが。

「ゲームセンターにレースゲームあるじゃん?それしたら車運転したことにならないかなって……思って……」

「…………」

 彼女から無言の圧力がかかる。

 ……あ、これやっぱりだめだった奴だ。

 でもゲーセンのレースも以外と侮れないんだぞ?

 流石にリアルなものはないだろうけど、リアルっぽい奴ならいくらでもあるんだ。

 だからそれなら満足してくれるかなって思ったんだけど……。

「やっぱだめ……だった?」

 恐る恐る訪ねてみる。

「…………だめではない」

 あれっ、だめじゃないんだ。でもだったらなんでそんな微妙な表情してるんだ?

「……忘れてるの?」

「え?何が?」

 忘れてる……?一体何を?


「……そのレースゲームって一回何円でプレイできるの?」


「――あっ」

 そうだ、忘れていた。俺達今一文無しなんだった。

 ゲーム自体は百円で出来るんだけど、今の俺達にはその百円すらない。

「……出来ないな」

「……そうよ」

 ていうか今更ながらこの状況のヤバさを実感した。

 俺達一文無しなのか。つまり何も出来ないということだ。

 ……あれそういえば金がないってことは俺ってどうやって帰ればいいの?

 もしかして歩いて帰らないといけない?

 ……まぁ、先のことはいいか。それこそ彼女次第だから俺にはどうしようもない。

 今は目の前の問題だ。

「……自販機の下でも漁ってみるか?」

 ここは最終手段をとるしかないか。本当にあるのか分からないけど、お金に困った場合はそれに頼りしかなさそうだ。

「……私はやらないからね」

「えぇ~……」

 まぁ、当然か。そんなみっともない真似はしないか。

 でも本当に自販機の下になんかお金はあるのか?

 あるか分からないのに、彼女にみっともない姿を見せるのもな。

何か他に方法があればいいんだけど……。


「………………あっ」


「……今度は何?」

 先ほどのことがあったからか、今度は初っ端から疑いの視線を向けてくる。

「いや、今度こそ多分大丈夫だよ」

「本当に?」

「う、うん。多分だけど……」

 正直上手くいくか分からないけど、ここは背に腹には変えられない。

 彼女の願いを叶えるために少し頑張ってみようと思う。

 ――まぁ、その分彼女にも頑張ってもらわないといけないけど。

「じゃあちょっと電話してくるから待ってて」

「……電話?」

「そう、ちょっと待ってて」

 スマホを取り出しながら彼女から離れる。

 そもそも上手くいくか分からないので、この段階で彼女にバレないに越したことはない。

 だから彼女に声が聞こえないところまで移動してすぐに電話をかける。


「あっ、もしもし~!待ってたよ~」


 電話口からは明るい声が響くのだった。

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