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眠り子アリサ  作者: 武志
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第2話 数年後のアリサ

 数年後、アリサは小学校を卒業しました。小学校は五年生からほとんど登校していませんでした。周囲の大人達の勧めもあり、小学校は卒業でき、中学校に入ることになりました。

 中学生になったものの、二年生の途中からは、行くのがおっくうになりました。

 結局、二年留年して、通信制の高校に入り、卒業しました。

 

 アリサは好きな絵の道に進むため、美術の専門学校に通うことになりました。彼女は大人になっていたのです。

 でも、ジャバーゾの夢は何度か見ました。悪い精霊せいれいはずっと彼女にりついていたのです。彼女は体がまだ重く、心も重たかったのです。大人になっても、涙を流していました。

 悲しい時は、絵を描いて没頭し、心の苦しみを忘れるしかありませんでした。


 ある時、アリサは数年ぶりに、夢の中で精霊ジャバーゾに出会いました。ジャバーゾは年老いていました。善人の仮面を被り、苦しみの中にいる子どもを探しているようでした。

 でも、夢の中に立っている大人になったアリサには気付きません。

 

 ジャバーゾは以前と同様に、闇の精霊界の王でした。アリサはジャバーゾに対して怒りに燃え、彼の行動を見守りました。年老いたジャバーゾは、アリサの横を素通りし、ベッドの上の子どもに本を読み聞かせています。アリサはそれを見て、私は帰ろう、と思いました。ジャバーゾとはもう関係ないんだ──。


 その時、精霊ジャバーゾはギョロリとアリサの方を見やりました。物凄く恐ろしい顔をしています。


「いつでも憑りつくぞ。いつでもこっちにおいで。君は、いつでもこっちに来れる人間なんだ」


 ジャバーゾは善人の面を被り直して、声色を変えて言いました。「アリサ、いつでもいらっしゃい。無理すると、良くないからね」


 アリサは大人になっていましたが、心がくじけそうでした。ジャバーゾが恐ろしくて仕方がなかったのです。しかし──。


「あなたも、私に構わず、あなたはあなたの生き方をすれば良いんじゃないですか?」


 アリサは、声を振り絞って言いました。


 ジャバーゾはおや、という顔をして、「私の、生き方ですか?」と驚いたように言いました。「あなた、どこでそんな言葉を覚えたんですか? 私からは絶対に逃げられないんですよ」

「逃げないわ。あなたからは逃げられないってわかったから」


 アリサはジャバーゾに自分から近づいていって、きっぱり言いました。ジャバーゾは動じませんでした。しかし、善人の面が泣いています。


 アリサはそこで目が覚めました。怒りで、にくらしくて、悲しい夢でした。だってずっと、ジャバーゾが近くにいるのですから。自分の影はずっとついてくる。それが分かったのですから。光がある限り、精霊ジャバーゾは、アリサに憑りついて行動するのです。

 

 でも、アリサは大人になっていました。ジャバーゾに負けまいと、生きるのです。自分の影を背負って──。影の色は、もうアリサの光に負けていました。アリサは震えながら、それでも勇気を持って、夢から立ち上がりました。


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