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人は死んだらTS転生するんだ!

人は死んだらどうなるのか?それは死んだ人間にしかわからぬことであり、今を生きる人間には到達できない答えの一つである。


逆に言えば、死んでしまったものにはその答えが分かるということだ。そして私が得た答えを教えよう!


——————人は死んだらTS転生するのだ!!!!


意味が分からないって!?安心してくれ、私もだ。そもそも何でこんなことが言えるのかというと私が前世の記憶を持っているからだ。


前世では平凡な高校生だった私は、気が付けば異世界に転生していた。記憶が戻ったのは、転生して10年がたったころ。始めは絶望した。それ以上に驚愕した。性別が変わるというのはそれなりの衝撃だったのだ。はっきり言って転生したことよりも、TSしたことの方が衝撃的できつかった。加えて、私が記憶を取り戻した時住んでいた孤児院は突如として現れた魔女によって焼き払われ、挙句の果てに『一定の条件を満たさなければ、年を取ることも死ぬこともできない』という意味の分からない呪いを押し付けられるという怒涛の展開。心の整理がつくまでに随分と時間を要した。


しかしだ。心の整理がつき受け入れてしまえば、あら不思議


———美少女の体は悪くなかった。端正な顔立ち、ほんのりと上気した頬、透き通るような白い肌に膝のあたりまで真っ直ぐ伸びた純度の高い銀髪。宝石のごとく美しい輝きを放ちつつも、吸い込まれてしまいそうな狂気と魔性をはらんだ緋色の瞳。

身長こそ157cmと低めだが、身長に似合わずそこそこスタイルはよく、個人的には大満足だ。前世の自分なら迷わず、惚れて告白して玉砕したのちに自殺したであろう容姿だ。


厄介だったのは、呪いの方だ。この呪い、一定の条件を満たせば解けるのかと思いきや。条件を満たすと一年、年を取るだけで、条件を達成したら他の条件が追加されるというクソ仕様だったのだ。

加えて、何が条件になっているのか見当がつかないのだ。よくぞ、6回も条件を達成したものだと思う…。


最初の条件は魔法を習得することだった。二番目は魔法を自分の限界まで極めること。三番目の条件は、私を呪った魔女の研究資料を基にさらに魔法を極めることだった。


最初の三つは比較的簡単な部類だった。時間こそかかったものの、無限の時間がある私にはあまり関係がなかった。もともと魔法を極めることは決定事項だった。子供が生きていくには力が必要だったからだ。だから、何故だか、誰も訪れない森の中に引きこもり鍛錬を続けた。故に意図せずに条件を三つ達成した私は外見年齢は13歳になっていた。


が、地獄はここからだった。研究をさらに進めようとも、条件を達成することはなくなっていた。試行錯誤を繰り返し、様々なことを試した。|ペット《よく分からないけどたぶん魔獣》を飼ってみたり、魔女の館をリフォームして、いい感じの城にしてみたり、料理してみたり、街に出て男を少し誘惑して遊んだり…………挙句の果てに首を切ってみたりもした。まあ、意図して切ったわけではなく不慮の事故なわけだが‥……結果的に残念ながら死ぬこともできなかった(痛かったので痛覚遮断の魔法を開発した)。


数十年がさらに経過した時、私は森に迷い込んできた少年を拾い弟子にした。ある種の現実逃避でもあり、暇つぶしでもあった。後は、独りでいるのがつらくなってきたからだ。


素直で物覚えのいい少年だったが、時折ゾッとするほど冷たい目をして空をにらんでいる闇が深そうな少年だった。少年を弟子にしてから、5年が過ぎ少年が私の元を離れた時、驚くことにピロン!っと頭の中に音が鳴り私は一年時を刻んだ。


そう、条件を達成したのだ。そこで私はある可能性にたどり着いた。第一、第二、第三の条件同様、次の条件も同系統の条件なのではないか?当てがなかった私は、その仮説を信じ街に赴いて目についた少女と青年を弟子にした。


数年後、見事に条件を達成しさらに一年時を刻むことに成功した。味を占めた私は、弟子が卒業していくたびにめぼしい子供を弟子にした。


六回目の条件を達成した私の外見年齢は16歳となった。


この時点で私はあることに気づいた。


「魔女が私に呪いを押し付けたように、私も誰かに押し付けられるのでは?」


何故気づかなかったのっだろう?考えてみれば、可能であるかどうかも分からない呪いを解く方法を考えるよりも、可能であると分かっている押し付ける方法を模索したほうがいいに決まっているだろう。


私は魔女の研究資料を漁った。が、残念ながら方法に書かれていなかったが、それにつながりそうな研究を見つけた。それさえあれば問題ない。時間は無限にある。ゆっくりとのんびりやればいい。


この時点で、私の行動方針はライフワークとなった弟子の育成と呪いを他人に押し付ける研究へとシフトしていった。














俺が先生に拾われたのは2年前。当時、帝国軍に村を焼かれ家族や村民が惨殺されていくのを中偶々生き残ってしまった俺は、なけなしの金で王都に出稼ぎに出ていた。だが、たかが13歳の子供ができる仕事は残っておらず結局、スリや殺しをして暮らしていた。


ある日目を覚ますと縄で手足を縛られて、馬車に閉じ込められていた。瞬時に、王都の裏で有名な人身売買の組織に捕まったのだと理解した。身寄りのない子供は狙われやすく、スラムの子供たちも何人もさらわれていたという話を聞いていたのですぐに確信を得た。


「出せ!出せよ!こっから出してくれ!!!」


ぶわっと焦りと共に汗が噴き出た。


こんなところで、終わるわけにはいかないんだ!!!何時か、力を手に入れて村を襲ったあいつらに報復をッ!!!


焦りと絶望と後悔が支配する中、その人は現れた。


地面をたたく雨の音や人さらいどもの怒号、素構った子供たちの悲鳴。それらをかき消すほどの轟音と共に馬車は吹き飛び、人さらいどもは胴体が泣き別れした状態で地面に叩きつけられていた。


自分以外の子供たちは気絶しており、意識があるのは自分だけだった…………


恐る恐る、馬車の外を覗き見るとそこには圧倒的な美が立っていた。降りしきる雨に髪を濡らしながらも、その美しさは微塵も揺らがない。あたりは血と死体で埋まっているのにもかかわらず、それが気にならないほど俺はその人に魅せられていた。


その人が—————パチンッっと指を鳴らした瞬間、俺とその人を避けるように雨が反れていく。


「そこの少年、理不尽にあらがうすべが欲しくはないか?」


鈴のような可憐な声、それでいて芯のある覇気のこもった声が響いた。


俺は気付かぬうちに馬車から出て、頷いた。


これが、先生と俺の出会いだった。


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