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魔法を使えない魔導師に代わって、弟子が大活躍するかも知れない  作者: 森月麗文 (Az)
第六章 魔導師キャフ、クムール帝国に潜入する
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第090話 皇子との別れ

前回のあらすじ


キャフのイキっていた過去、バレる。

 皇子が言うように、世界樹に劣らず高く険しく聳え立つ山々が雲間から現れた。


 皇子の住処、ペリン山脈である。

 標高4000メートル以上の険しい山々が連なり、人の気配はない。

 神々の住む山として信仰の対象になっている。


 皇子の根城は、頂上付近に万年雪を被った活火山のペリスカ山である。

 大地を司るアースドラゴンだけあって、高熱のマグマ溜まりがお風呂らしい。


「どこに着陸するんだ?」

『そうだね、昔の決戦場所辺りで良いかい?』

「そうだな、あそこなら標高も低いから帰れるな、助かる」

『分かったよ』


 皇子は大きく旋回すると、キャフも以前来たことのあるペリスカ山の中腹へと降り立った。

 4人とも、荷物を持って皇子の背から下りる。


『すっかり緑も回復したね。あの時はキャフ君の雷撃魔法で、この辺り一帯が真っ黒焦げになったからね』

「よせよ」


 標高1000メートルほどの中腹にある台地が、最終決戦の場所であった。岩肌が目立つが、まだ高山植物の層では無く、開けた台地の周辺には木々が生い茂っていた。


 久々に降り立ち、あの時を思い出すキャフである。今より二回りは大きなアースドラゴンに、果敢に立ち向かっていった。ギムは勿論、サムエルやシェスカさんと強い絆で結ばれ、完璧な攻撃を繰り出していた。


 もうあの頃には戻れないと分かっていても、キャフにとってはかけがえいの無い思い出だ。


 そんなキャフの想いとは別に、皇子が話しかけて来た。


『見ての通り、僕はまだ、完全体になりきれてないんだ。だからもう少し上にある僕の家で、しばらく休もうと思う。だからここでお別れで良いかな?』

「あ、そ、そうだな」


 恐らくそうなると、分かっていた。


 とは言え皇子として旅を共にして来た仲間であるから、心中は複雑だ。思えば道中、皇子には何度も助けられて来た。クムール帝国との戦争が起こりそうな今、本音は一緒に闘って欲しい。だが皇子に取って人間の諍い事は興味の対象外だ。仕方ない。


「何時まで休むんニャ?」

『どうかな。五十年あれば確実に完全体になるけど』

「そんなんだったら、私達、おばあちゃんですよ!」


 思ったより時間がかかると知り、ミリナとラドルはビックリしていた。 


『そうかもね。人間達は寿命が早すぎて、次に会うのはミリナやラドルの孫かもね』

「じゃあですね、これあげます」

 

 そう言って、ミリナは皇子の左小指に大きな通魔石をいれた指輪をはめた。


『いつの間に、作ったの?』

「回復魔法をかけていた時から、考えていたんです。材料は船に置いていた道具を使いました。私達の魔素なら十分ここまで伝わりますから、私達が困った時は、かけつけてきて下さいね」


 皇子は自分の左小指に付けられた指輪を、まじまじと見つめた。


『ありがとう。ホントは人間達の争いには不可侵なのだけれど、本当に困った時は、五十年と言わず直ぐにかけつけるよ。お話もするからね』

「約束ですよ!」


「これで、お別れだな」


 しんみりと、キャフは言った。


『ああ、そうだね。あ、僕のせいで今から大変かも知れないけど、自力で何とかしてね』

「分かった」


 確かに、ここからの道程も大変だ。キャフは最終決戦で来たから知っているが、下山途中にはAランク以上のモンスターがうようよいる。生き延びて冒険者ギルドに行けば大幅ランクアップは確実だろう。だが生きて帰れる保証は、ない。


「じゃあな」

「ありがとう、皇子」

「元気でね」

「また会おうニャ〜」


 こうして4人は、山を下りていった。

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