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魔法を使えない魔導師に代わって、弟子が大活躍するかも知れない  作者: 森月麗文 (Az)
第六章 魔導師キャフ、クムール帝国に潜入する
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第086話 ネオ・ゴーレム

前回のあらすじ


あっち、ドラゴンスレイヤーも持ってた!

 兵舎から出て来たのは、動く石像(ゴーレム)であった。

 オークの村を襲った動く石像(ゴーレム)と良く似ている。


「な、何ですかあれ?」


 初めて見たミリナは、動揺していた。

 魔法書で読んだことはあっても、実物を見るのは初めてなのだろう。


「あの時のバケモノだな」

「そのようですニャ。でもオークの村で見た時のより強そうだニャ」

「何を持ってるか分からん。とにかく気をつけろ!」


 キャフ達の二倍以上の背丈で、オークの村で見たのよりも動きは滑らかだ。相変わらず不思議な顔は、クムール帝国の土着の神様か何かを体現したのかも知れない。二足歩行だが、この動く石像(ゴーレム)の足首脇には車輪も付属している。


 ミリナはシールド内で回復魔法を使い、皇子の回復に務めている。そのため今の状況で攻撃できるのは3人だけだ。フィカとラドルはオークの村で戦闘した時よりランクアップしたから、以前の動く石像(ゴーレム)であれば問題ない。だがこの動く石像(ゴーレム)は、以前のより明らかに強そうに見える。


「あの子達の魔素が詰まった畜魔石ですから、新鮮で長持ちします。存分に闘って下さい」


 グタフは挑発的に微笑む。尊い犠牲の下に造られた動く石像(ゴーレム)だと思うと、尚更怒りが込み上げてくる。

 動く石像(ゴーレム)は3人を認識して目が光り、足にある車輪がギュイーーンと回り始め、スコープドッ◯のように一気に突撃して来た。


「逃げろ!」


 ドドドドと迫力ある動きは直線的で単調で、3人は難なくかわす。だが少しでも油断したら命取りだ。校庭であるため身を隠す場所が無く、平面的な動きしかできないのも辛い。


『敵ノ動キヲ、記憶シマシタ』


 動く石像はそう言うと、再び突進を試みた。


「うわぁあ!」


 先ほどより速度が増した動く石像(ゴーレム)は、フィカを突き飛ばした。

 どうやらこいつは、学習能力も備えているらしい。


「大丈夫か?」

「あ、ああ。少し油断した」


 幸い、かすっただけのようだ。


「ミリナは皇子にかかりきりだから、ダメージを最小限にしろ」

「言われなくても、分かってる」


(ミリナが使えないから、魔法矢も駄目か……)


 キャフは動く石像(ゴーレム)の関節部を狙って矢を射るものの、動きが早く当たらない。


『矢ノ速度、記憶シマシタ』

『剣ノ速度、記憶シマシタ』

『魔法ノ威力、記憶シマシタ』


 一太刀浴びせるごとに動く石像(ゴーレム)の動きは俊敏になり、3人の攻撃を巧みにかわし始める。闘えば闘うほど、ますます厄介になっていく。キャフ達は疲労の色が濃くなり始めた。


「兵器と言うのは、欠点をすぐ直すものですよ」


 グタフとシェスカは高みの見物と決め込み、正面玄関近くにある朝礼台に上がって、余裕の笑みを浮かべている。悔しいが、今の状況ではグタフへの攻撃は困難だ。そもそもこの動く石像は自律型なので、グタフを倒しても動きは止めないだろう。


『ロケット砲、発射シマス』


 キャフ達が無策なままでいると動く石像(ゴーレム)は突然宣言し、胴体の腹部分が開いて大きな大砲が打ち出された。3人は慌てて避ける。


 ドカァアアンン!!!


 着弾地点の半径三メートルほどの地面が、粉々に吹飛んだ。一難去ってまた一難。動く石像(ゴーレム)は再度撃ち出す。アルジェオンの軍にも無いほどの高性能な武器だ。


「ラドル、フィカ、逃げろ!」

「フニャニャ〜!!」


 炸裂する爆音と熱風の中を、3人は逃げ惑う。


「あちち、尻尾が焦げるニャ〜」


 校庭の狭い空間で逃げてばかりいても、埒があかない。


(そろそろ、やるか)


『ロケット砲、発射シマス』

「よし、今だ!」


 動く石像(ゴーレム)が腹を開けて大砲を撃とうとした時、キャフは弓を引き、腹目がけて撃ち放った。


 ヒュッ、ズドン!


 上手い具合にタイミングがあい、大砲が撃たれた後の砲身に、弓が刺さる。すると矢が腹のカバーに引っかかり、閉じなくなった。今は装甲に覆われていない砲身周辺が、剥き出しの状態だ。


「ラドル、あいつの腹目がけて撃て!」

「ファイア・アタック!!」


 以前より遥かに大きな火の玉が、動く石像(ゴーレム)の土手っ腹に直撃する。動く石像(ゴーレム)はとたんに動きが鈍くなったかと思うと、動きが止まり、崩れ落ちた。


 どうやら倒したようだ。


「やったニャ〜!!」

「安心するのは、未だ早いようだぞ」


 フィカが言う通り、兵舎からは、更なる動く石像(ゴーレム)が続々と現れた。

 

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