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魔法を使えない魔導師に代わって、弟子が大活躍するかも知れない  作者: 森月麗文 (Az)
第六章 魔導師キャフ、クムール帝国に潜入する
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第084話 異空間での戦闘

前回のあらすじ


う、裏切ったな! 僕の気持ちを裏切ったな!

(これが、クズフの異空間魔法ニャんか……)


 ラドルはこの魔法を、弟子仲間から噂で聞いていた。


 ”2人で特訓”と言って、気に入った子をこの異空間に連れて行くのだ。グタフが止めると言うまで、2人きりである。そして相手は女の子。現代日本であれば当然セクハラ案件だが、グタフの口のうまさと気の弱い子ばかり選ぶ卑怯さで、事実が発覚することはなかった。おそらく、キャフも気付いてないだろう。


 中には割り切ってその後もグタフと懇ろになり、取り入って地位を確立した強者もいた。就職にも有利だったのでグタフの行為は冗長し、なかなか複雑である。人間は力ある者に弱い。


 ただラドルは生理的にグタフが嫌いだったので、そうなることはなかった。


 この異空間は地面と重力もあり、7人とも装備もそのままで立っている。

 月面のように砂と岩だけの何も無い世界だ。


 そしてグタフの精神を表しているのか、空はラブホみたいなピンク色だ。

 いや、ラドルはそんな所に行った経験はもちろん無い。

 勘違いしないように。多分そんな感じだろうと思っただけである。


 キャフは未だ茫然自失として戦意喪失気味である。

 キャフを良く知る新旧2人が、自分を殺そうとしているのは分かっている。

 だが分かっていても実感が無い。


 学校の親しい友人に、何時も通りに挨拶したら突然刺されたようなものだ。

 無いとは言えないが、人間の常識では否定するだろう。


「キャフ先生、本気でいきますよ。超爆(スプリーム・)(フレイム)!!」


 グタフの魔法杖から凄まじい爆炎が幾つも現れ、キャフ達に襲いかかった。


「シールド! きゃぁあ!!」


 ミリナが瞬時に前方に出て防御魔法をかけるが超爆(スプリーム・)(フレイム)の威力は凄まじく、全ては防ぎきれずに5人とも吹飛んだ。


「師匠、どうすれば良いニャ!」

「あ、ああ。オレがやる」


 殺意が込められた超爆(スプリーム・)(フレイム)を浴びて流石に目が覚めたのか、キャフは弓を構えてグタフを狙う。だが腕はぶれて、弱々しく放たれた矢はシールドをかけているグタフの手前であっけなく落ちる。


「坊や、ひと思いに楽にしてあげようか?」

「させない!」


 高速移動(テレポーテーション)でキャフの目の前来たシェスカを、フィカが剣で薙ぎ払う。シェスカは遊んでるかのように、また高速移動(テレポーテーション)で元の位置へと戻った。


「アイス・ブリザード!」


 ラドルが必死の思いで魔法を放つが、グタフはいとも容易く跳ね返す。


「ラドルゥ、前よりマシになったが、そんなんで兄弟子に対抗しようって無理じゃねえか?」


 相手にならないと言った風に、グタフは苦笑いをしていた。



(これは、まずい)


 キャフは状況の打開策を見出せなかった。幾ら成長したとはいえ、この2人とはランクが三以上の差がある。そうなると、そもそも相手にすらならない。キャフの弓兵としての戦力も意味が無かった。


 打つ手が無いまま時間だけが過ぎていく。相手は余裕の顔をしている。


「キャフ君?」


 そうだ、()()()()()()()()


 キャフは振り返り、最後の頼みの綱として、すがるように皇子を見た。

 その皇子の体はいつの間にか白金色に輝き、その光はどんどんまばゆくなっていった。


「おい、どうしたんだ?」


 キャフは驚き、声を上げた。人間じゃなくなっている。いや元々人間では無いのだが、その姿が全く違うモノに変貌を遂げようとしていた。


「気付いたかい? こう言う魔素が充満した閉鎖空間は、僕に取ってはご馳走で満たされた、大変ありがたい場所のようだよ。どうやら昔に戻れそうだ」


 光にすっかり包まれた皇子の体は、人間からドラゴンのそれへと変化したのであった。この空間によってとうとう覚醒したらしい。


「シェスカさん、あいつ人間じゃありません!」

「あの魔導師を異空間(ディメンジョン・)転移(トランスファー)させたんだ、ただ者じゃないと思っていたが…… 依頼主も知らなかったようだねぇ、こいつがアースドラゴンなんて」


「皇子!」

「どうしちゃったニャ?」

「これ、お前は知っていたのか?」

「ん? ああ」

 

 3人も、皇子の正体を知り驚愕する。

 全長二十メートル、高さ五メートル。

 未だ完全体では無いようだが立派なドラゴンだ。


『喰らえ! 竜の咆哮(ドラゴン・ブレス)!!』


 グタフの超爆(スプリーム・)(フレイム)など比較にならないほどの、まるで核爆弾のような光がグタフとシェスカを襲った。

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