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第063話 出発

前回のあらすじ


旅の準備はできたし、いよいよ出発!

「はじめまして! 自分はキアナ少尉であります! 宜しくであります!」

「え、女?」

「ああ、そうじゃ。そっちも3人いるし、むさ苦しいのは嫌かと思ってな」


 ガッハッハッと豪快に笑うナゴタ少将の傍らに直立不動で立っているのは、まだミリナやラドルと同じ少女といって良いくらいの年端も行かぬ兵士であった。この旅の案内役だ。


 ただ兵士だけあって、フィカと同様体は鍛え抜かれている。真っ黒に日焼けして短髪の容姿は、出るところが出てなかったら野球少年といった風貌である。整った顔立ちだから男になってもイケメンの部類に入るだろう。ハキハキした態度がいかにも体育会系で、甲子園でも目指しそうだ。


「ああ、これから頼むぞ」


 体育会系と対極のキャフは、挨拶もそこそこだった。魔法の能力に長けてはいるが、あまり礼儀は気にしない。そんなところが、長老達や第三皇子に疎んじられた理由かもしれない。


「じゃあ、進路を確認するが、先ず《猿人の森》を抜け、《鬼の山岳地帯》を進む。この辺りのモンスターにも、十分気をつけてくれ。そしてこの《デクスタ山》の麓で、野宿だろうな。ここは、モンスターの集落もない。そして山を越えた先には、《魔瘴の沼地》が続く。ここのモンスターも、高ランクだ。それに、魔法を操る高次モンスターもいる。空気を吸い込むと死ぬ穴もあるから、気をつけろ。恐らく、ここを通り抜けた後の森でもう一泊。そこから馬車で二、三時間ほど行けば、《幽霊砦(ゴースト・フォート)》に到着って訳じゃ。軍の行軍より、遥かに楽じゃな」

「はい! 少将!」


 少将とキアナは、ちょっとした訓練ぐらいに思っているようだ。だが結構の距離だ。キャフは冒険慣れしているものの、やはりミリナとラドルがどこまでやれるか心配ではある。それに自分の体力が保つかも分からない。


「《猿人の森》って、凶暴猿(キラーエイプ)凶暴猿人(キラーコング)がいるとこか」

「知ってるのか?」

「ああ、行ったことがある」

「じゃあ序盤は簡単だな。だが山岳地帯から沼地まで、とにかく油断ならん。ま、お前らなら出来るじゃろ」

「分かった。じゃあ行って来る」

「幸運を祈っとるぞ」



「キアナ少尉の荷物はこれだけ?」


 あてがわれた馬車に乗り込むとき、キャフは荷物の少なさに驚いた。


「はい! 軍人は常に必要最小限の携帯であります!」

「そういうもんか。じゃあ、行くぞ!」

「しっかり捕まってろ! どうっ!」


 パシッ! ヒヒーーッン!!


 フィカがかけ声と同時に馬に鞭を入れ、馬車は動き始めた。

 軍用だから派手な装飾はないが、堅実な造りで乗り心地は悪くない。

 普段は歩いて渡り続けた橋を、馬車で行くのは新鮮だった。

 軍用と分かるせいか、道ゆく冒険者も振り返りこちらを見ている。


「じゃあ、猿人の森を突っ切るぞ。警戒態勢!」


 フィカは馬車の速度を上げる。キャフは弓を構え、リムロとキアナは剣を、ラドルとミリナは魔法杖を持って待機した。だが凶暴猿(キラーエイプ)達は遠方からこちらを警戒して見ているだけで、襲撃して来ない。凶暴猿人(キラーコング)も見当たらない。


「なんで襲って来ないんだ?」


 キャフがフィカに聞く。


「私達にビビってんだろう!」


 馬車は威勢良く森を通り抜けて行った。

 しばらく何も無く、見渡しのいい草地を走る。



「はあ〜 かったりぃなあ…… お宅ら、何でこんなクエストやる気になったの?」


 《猿人の森》の緊張から開放されたとたん、キアナの言葉遣いは乱雑になった。まるで輝かしい甲子園の栄光を目指す野球少年が、裏で隠れてタバコを吸ってるような印象に変わる。初対面では、人の本質など分かるものでは無い。


「まあ、金になりそうだからな」

「そっか。おっさん、ババ踏んだな。ホント良い迷惑だよ。さっきも偶々入り口で掃除してたら、ナゴタ少将と目が合っちゃって。で、急に呼出されて行って来いだからな。やってらんねえよ〜 ねえ、タバコない?」

「悪いが、誰も吸わないんでね」

「しけてんな〜 やせ我慢しないで持ってくりゃ良かった。あーあ、何でこーなっちまったんだろ?」


 馬車は相変わらず軽快に走る。キャフは旅の行く末が気になった。

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