第062話 旅の準備
前回のあらすじ
良く分かんないけど、新たなクエスト受けました。
その後もキャフ達はクエストの準備に余念がなかった。馬車は二頭立てで荷物も含め6人乗りだ。フィカが扱えるし、乗馬経験のある皇子もいる。キャフも含め乗馬経験は経験は皆あった。
次の日、ホテルのフロントから連絡が入る。「サローヌ地方のギム様からです」と言われて部屋に持って来てもらうと、通魔石の山だった。
一緒に入っている手紙を読んでみると、フミ村との交渉はうまくいき、現在サローヌの技術者達が、通魔石を使って電話とか言う機械を発明したそうだ。遠く離れても言葉を交わせると驚いているらしい。
「これだけあれば、今回の冒険に十分だな」
流石にこれをギルドの保管庫へ持って行くのは手間がかかる。
ホテルに頼んで配送業者を手配してもらった。
ミリナもラドルも、現時点で使える魔法の術式を全て取り入れた。ラドルは火や氷系のランクを上げ、弱い威力ながら風や大地系も使えるようになった。ミリナは回復系の魔法を最大限にした。細胞一つから完全復元できる最高位とはいかないまでも、その手前くらいの回復力を持つ魔法だ。
今回は無償で馬車供与なので、武器も沢山持って行ける。購入はフィカが担当し、Cランクで購入可能な剣を数本、加えてハンマーやスピアを手に入れた。盾も軽くて丈夫な凶悪カブトムシ製にする。甲冑も動きやすくて防御力が高い錬鉄製に新調だ。
「そんなに武器必要か? 幽霊に物理攻撃は効かないんじゃないのか?」
「本当に幽霊だと思っているのか?」
「? じゃあフィカは何だと思ってる?」
「アンデッドモンスター。捜索隊の時も動く死体に遭遇した」
「そうなのか」
「逆にその方が、やっかいだぞ。下手すると噛まれて同類になる」
「ひえ〜 わたし、ゾンビになっちゃうニャ?」
「あくまで可能性の一つだ」
「逆に本物の幽霊だったら、フィカさんは怖くないのですか?」
「な、何を言う! わ、わたしは怖くなんか、ない!」
明らかに狼狽している。きっとアンデッドという事にして、幽霊はいないと信じ込みたいのだろう。珍しく動揺を隠せないフィカだが、今後を考えてここでは煽らないでおく。
「今度は、最低でも数日間の旅になるんだよね? 着替えは?」
「替えの下着とかは、自分で用意しろ」
「僕、着替え一人でできないんだけど?」
「お、皇子…… それならわたしが…… い、痛い!」
キャフは眼が血走っているラドルを見て、頭を軽く小突いた。
「分かってると思うが、これは訓練じゃねえ、実戦だ。場合によってはオレが死ぬ時もある。そしたらお前らで進めるしかない。ある程度約束事は決めるが、あとは自分で判断しろ」
「分かったよ、キャフ君」
その後も着々と準備は進む。日用品の他に妖しい道具も含め、しこたま買い込んだ。あとは予め進路も決めたいので、目的地への地図も貰う。軍の支給だけあって渡された地図は正確だ。最新のモンスター分布も詳細に記述されている。冒険者達もこれを持っていたら楽だろうと皆思った。
「これ、ギルドに渡せないの?」
「軍はあくまで管理だからな。よほどじゃないとモンスターを倒さない。あと管轄外の件に関しては、手を出さない。オレが若かった頃と、何も変わっちゃいねえ」
「まるで、どこかのお役所だね」
「そう言うもんさ」
「キャフ君、ガイド役お願いする?」
皇子が提案をした。確かに居たほうが心強い。
「どうだろう。あんたはどう思う?」
「馬車にも余裕あるし、お願いしたら?」
「イケメンだと良いニャ〜」
事務所へ行きナゴタ少将に伝えると、「そうかそうか、分かった。行くのは何時頃だ?」と聞いてきたので、「急で済まんが明後日で」と返答する。
「どうせ第七師団なんか暇な穀潰し共の集まりじゃ、直ぐに連れて来させよう」
と、頼もしい言葉が返って来た。
「じゃあ、今日で準備も一通り終わったな。何時帰って来るか分からないから、明後日の出発時にホテルはチェックアウトする。これからの冒険の為にも、明日は観光でリフレッシュするか」
「海だニャ! 海!」
「どうせなら他の場所も行きたいから、海は朝でその後に観光はどうですか?」
「良いだろう」
翌日、朝は海水浴を堪能し、お昼には市街地に出て観光を満喫した。
モドナ名物のオレンジシャーベットは、噂通り果汁が濃くて美味しかった。
記念だからと、広場にいる絵描きに5人の集合似顔絵を描いてもらう。
この世界にカメラは無いから良い思い出になるだろう。
夜はモンスター肉のステーキ屋に入る。
みんな元気よく飲んで食べた。
冒険慣れしたのか、特に緊張も無い。
そして次の日いよいよホテルをチェックアウトし、ギルドへと向かう。
新たな冒険の始まりだ。




