第061話 第七師団ナゴタ少将
前回のあらすじ
だまされたけど、ランクアップは順調! む、新たなクエスト?
「貴様らか、あの幽霊砦に行きたい命知らずのくそ野郎は!」
「あんたが募集かけてんでしょ?」
紙を持って受付に聞き通された部屋の中には、第七師団の将校が待ち構えていた。白い軍服に汚れはなく左胸には沢山の勲章が飾られている。白髪の混じった角刈り頭にきっちり整えられた髭は、キャフより年配で身分も上である事を示していた。
「そんなんだったら、あんたらがやれば?」
「いやいや、すまん。軍のお約束と思ってくれ。最近言う機会もなくての。改めてだが、儂が責任者のナゴタ少将だ」
苦笑いするだけで、全く悪いと思ってない。第七師団と言えども、この少将はモンスター達の討伐を重ねて来た強者なのだろう。
「さて募集の案内だが、本当に行ってもらえるのか?」
「それより”除霊”って何すりゃいいんだい? オレ達、僧侶とかいないんだけど」
「ああ、かまわぬかまわぬ。行けば分かるさ。そもそも除霊が必要なのか儂も知らん。あそこに幽霊が出るなら、散々モンスター達を血祭りに上げてきた儂の所に来なくては割にあわないと言うもんだ。一度も見たことないけどな」
「良く分かんねえが、じゃあ、何すりゃ良いんだい? お札でも貼って来るのか?」
「それも良いな。とりあえず、夜になったら幽霊がうじゃうじゃ湧いてくるらしい。そのせいで砦を再活用できないのじゃよ。腰抜け共の兵隊が、情けない声を出して逃げおった。儂がもう少し若かったら、気合いで追い出すのじゃがな。だからその幽霊とやらを仕留めて二度と出て来なくすれば、何でも良いんだ。募集にあるように、遠路だから馬車も支給してやる。ダイナマイトも必要か? 武器は非合法なのしか渡せんが」
「砦が壊れちまうだろ」
「もちろん冗談じゃよ」
「ホントに幽霊でるニャんか?」
「ああお嬢ちゃん、そこに泊まると出てくるってよ。怖いかい?」
「い、いや……」
ナゴタ少将が怖い顔をすると、ラドルは顔が引きつった。
その顔を見て、ナゴタ少将は豪快に笑う。
「わっはっは。まあ行ってみなされ。じゃあ契約ということで良いな?」
「ああ。出発は少し後になるけど良いか?」
「急ぎはせん。準備はしっかりせい。よろしく頼むぞ」
交渉は成立し、キャフ達はこのクエストを受ける事にした。ギルドから出て、新たな武具を購入しにショッピングモールへと行く。フィカの勧めで弓矢もグレードアップした洋弓にする。
「今のお前なら大丈夫だ。飛距離も三倍になるし、弓の威力も倍増する」
「ありがとよ」
「キャフ師、やはり除霊系に効く魔法道具とか探してみますか?」
「そうだな、無いよりマシか」
モールでも人通りの少ないところにある、暗くて妖しげな『大霊界への入り口』という店に入る。入ってみると、いきなり迫力ある店員が待ち構えていた。サングラスをかけている。
「死後の世界はぁ、あぁるんです!」
そう言われるものの、「はあ、そうですか」としか言えない5人である。転生してきた皇子がいるから、確かに死後の世界はあるようだ。ただあいつに聞いてもドラゴン転生の仕組みは良く分からないらしい。
「除霊グッズとか、ありますか?」
「ああ、じゃあこのお札を買いたまえ。一つ千ガルテだ。二つ以上買わねばならん」
前にも述べたが、一ガルテは約千円だ。
つまり得体の知れない紙切れに百万円払え、ということである。
「たかっ!」
「何を言う。値切ったらお前たちの霊格が下がるぞ! 死後にミジンコになっても良いのか?」
「は、はあ……」
仕方なく、二枚ほど購入する。
「ありがとさん。また来たまえ」
店に入って来た時とは裏腹に、お金を貰った後はニコニコ顔の店員だった。




