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第055話 再びモンスター生息域へ

前回のあらすじ


弓兵に転職したキャフは、フィカの特訓を受けた。

 早朝、5人は完全装備をしてギルドへ赴いた。いよいよモンスター生息域(ハビタブル・ゾーン)に入り、狩りを始める。


「まずは、日帰りで行ける範囲だ」


 と言うキャフの指示に従い、簡易テント等の宿泊設備は持参していない。

 初心者らしく、堅実にいくのが最善だろう。


 朝だから、モンスター生息域へ向かう他の冒険者達も大勢いる。個人で行く者もいれば、キャフ達のようにパーティーで出発する者達もいた。出発前だからまだ装備も汚れていない。キャフ達のように此処が新鮮で晴れやかな顔をしている者、疲れ切って死んだ眼をしながら赴く者。行く理由はそれぞれだ。


 裏口と言っても、非常に間口は広い。様々な装備の冒険者がいるし、モンスターの死体を運ぶ必要もあるので、馬が数頭は横並びできる幅がある。


「いよいよだな」

「ああ」

「怖いニャ〜」

「大丈夫ですよ、この前も頑張ってたじゃないですか」

「楽しみですね」


 この時間帯、裏口は開きっ放しであった。遠出なのだろう、馬に乗って向かう冒険者達も居る。開かれた先には生息域とモドナを結ぶ、頑丈で大きな橋がかけられていた。5人も足を踏み出し、記念すべき最初の一歩を刻む。橋の上では徒歩の冒険者は脇を通り、真ん中は馬が使っている。 


 橋のたもとには、大きな鳥がとまっていた。翼は鷲のようだが、その顔と上半身は人間の女性そっくりであった。


「あれは?」

ハーピー(女面鳥)だ」

 

 一部が女性の見かけと同じであるだけで、垢で汚れ不潔な上半身とだらしなく涎を垂らし薄笑いを浮かべた姿は、幾ら顔が美しくとも知性を微塵も感じさせない獣である。数匹が冒険者達を見ながら時折威嚇するかのように羽根を広げたり、空堀や森の上空を奇怪な声を上げて飛んでいた。


「あれも魔法石持ってるニャんか?」

「やめとけ。あれは死体しか喰わんし、一体を殺すと、次から次へとやってくる。しかも一番安い魔法石だ、殺す価値もない」

「そうニャんか……」


 ハーピー(女面鳥)に見送られて橋を渡った先には、旧道沿いの生息域と同じ姿の森が濃い密度で果てしなく広がっていた。先がどうなってるか、橋の上からは全く見えない。


 渡り終えた先には道が沢山あったので、その中の一つを選び進んでいく。森は太陽も通さず、鬱蒼としている。それぞれ目的地があるのか、最初は幾つもいたソロの冒険者やパーティー達もやがて散って行った。


「とにかく、お前の経験値を積ませなきゃならん。先頭でいつでもファイアボールを打てるように用意しとけ。あと、オレの力に頼るな。今回は目的がレベルアップだから、畜魔石や魔法杖の補助はせん」

「ひえ〜 師匠、ご無体な…… 最近皇子ばかりかまってるから、妬いてるニャんか?」

「ち、ちげえよ」


 半ば図星であったのか、キャフはイラついて話を止めた。

 言われた通り先頭に立ったラドルは、怯えながらキョロキョロ見渡している。

 時折耳や尻尾がビクッとしているので、かなりビビっているようだ。

 両脇をミリナとフィカ、やや後ろがムナ皇子で、最後尾がキャフの陣形だ。


 ガサガサ!


 側の茂みで、動物の動く音がした。


「ひえ〜!!」

「ラドル、ちゃんと構えとけ!」


 ギィイイイーー!!!


 甲高い叫び声を上げて、一匹の毛むくじゃらなモンスターが茂みから飛び出して来た。素早くて全体像は分からないが、大きさは人間より一回り小さい。ラドルが杖を構える間もなく、さっと反対側の茂みに逃げ込む。


凶暴猿(キラーエイプ)だな」


 フィカは剣を取り出し、キャフも弓矢を構えた。だがあのスピードではミリナの追尾機能も役立たずだろう。ラドルは震えながらも術式を起動させ、いつでも放てられるように種火を付けていた。


 ガサガサガサ、ギャオォオオ!!!


「ふニャーー!!!」


 再び飛び出して来たとき、凶暴猿(キラーエイプ)はラドルに襲いかかって来た。怯えながらも、ラドルの繰り出せる最大値の炎を、凶暴猿(キラーエイプ)に放つ。見事、命中した。


 フギャァアアアーー!!


 断末魔の叫び声を上げ、凶暴猿(キラーエイプ)は真っ黒な炭になる。ラドルの魔素でも倒せた。今までの冒険で、成長したのかも知れない。


「やったニャ!」


 ラドルは喜び勇んで凶暴猿(キラーエイプ)の遺体に行き持っていた携帯ナイフで腹を割くと、魔法石を取り出した。無事採り終えたその時、辺りに不穏な空気が流れる。ずっと森の仲で鳴いていた鳥のさえずり声が、気付くと止んでいた。


 キィイイ!!

 ギーーギィイイイーー!!

 ギャーー!

 

「囲まれたか」


 気付くと樹上には、沢山の凶暴猿(キラーエイプ)達が枝から枝へと渡り歩いていた。どうやら群れがやって来たらしい。


「ヤバいな」


 キャフは、弓を持つ手に力を込めた。

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