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第048話 夜のモドナ

前回のあらすじ


やっぱ海はいいわ〜


夜も遅いけど、ちょっと外に行くか。

 光ある所に、闇あり。


 優等生のミリナがお酒で豹変するように、人は誰しも闇を抱え込んでいる。

 良い子は、夜の歌舞伎町や六本木、渋谷センター街には行かないはずだ。

 いや、行っては行けない。

 外から見る分には面白いが、引ったくりやオヤジ狩りに会ったら最悪だ。

 遭遇した経験は無いけれど、オヤジじゃなくても気をつけろと言っておく。


 そしてキャフは、夜のモドナを知らずに入り込んでしまった。

 そこは妖しく輝きモンスター(遊女)蠢く(うごめ)、魔境であった。


「シャッチョさん、シャッチョさん!!」

「トップレス、トップレス!」

「良い子いるよ! 安くしとくよ!」

「一時間十ガルテ! サービスタイムだよ!!」


 昼間とは全く異なる夜の顔。目的の店が分からないまま彷徨うと、いつの間にやら歓楽街に来てしまったらしい。ここだけが未だ昼間であるかのように、灯りが煌々とそこら中を照らす。潮の香りでも消せない、猥雑な空気で満ち溢れていた。


 酔った大胆さもあいまって、キャフはそのまま通りを歩いた。あちこちに立って勧誘してくる艶やかな女性や店からキャフに艶かしく目を合わせる女性達に興味が無いと言ったら、噓になる。キャフも男だ、誘惑には弱い。


 だがその時いつも思うのは、同期の魔法使いであったアストの事だ。


 初めて会った時から、彼はキャフより明らかに才能があった。

 周りからも将来を嘱望されていた。

 だがある日、『好きな人ができました』の言葉と共に、行方をくらませる。

 風の噂では、女で身を持ち崩したらしい。彼のその後はようとして知れない。

 血色の良かった彼が、げっそり痩せた姿を見たとの噂もある。


 それ以来、キャフは女性が怖くなった。


 そう言いつつ女性に魅かれるのは矛盾しているが、それが人間である。

 念のためだがあくまでキャフの心情であり、作者のでは断じてない。


 今までは地位を失うのが怖くて、こんな店には入れなかった。

 だが地位は失ってもお金があるから、入っても誰からも咎められない。

 それにモドナに知り合いはいない。行くなら今だ。

 キャフの目はギラギラし始め,獲物を狙う狼のようになる。

 傍目からは、変◯と同値だろう。


「お兄さん〜 ちょっとどう?」


 運命のように、キャフ好みの女性が色っぽい目でキャフを誘惑する。

 誘惑(チャーム)の魔法を使っているかのように、キャフの思考は重くなった。


「は、はい」


 思わず快諾したキャフは、悦びの世界へと足を踏入れようとしていた。

 

「さっさっ、こちらへ」


 昔は彼女と同じ身分であったであろう老婆が、キャフを店内へ案内する。


 その時だ。


 ガッシャーンン!!

 キャー!!

 逃がすな! 追えー!


 女の悲鳴や男共の怒号が、直ぐ側のビルから聞こえて来た。

 するとその入り口から、小柄な金髪の少年が走って出てくる。


 ここに似つかわしくない上品な白い服を来ていて、どう見ても、訳ありだ。

 その少年はキョロキョロ辺りを見回していたが、キャフを認めると走り寄って来た。


「お願い、お父さん!」

「お父さん?」


 この少年から見たらそうかも知れないが、今からアダルトな世界に行こうとしていたキャフだけに、保護者役をするのは心の切り替えが大変だ。


 だが事態は一刻を争う。


 やがて屈強な男共もビルから飛び出して来て、辺りを見回した。

 当然キャフと少年を見つける。


「見つけたぞ!!」

「追え!!」


「逃げて!」


 言われなくても、キャフは少年の手を取って走り出していた。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 「シャッチョさん、シャッチョさん!!」に始まって「一時間10ガルテ! サービスタイムだよ!!」の流れが……また大笑いしてしまいました。 異世界なのに現実感が半端なく、かと言って違和感を覚え…
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