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第030話 脱出

前回のあらすじ


ちょっとだけ、俺TUEEEEできた! 

「はあ、はあ……」

「ふにゃあ……」


 エスドワルが去り、ようやく戦闘は終結する。

 だがラドルのダメージは相当で、キャフが肩を貸して何とか歩ける状態だ。


「ラドル、大丈夫か?」

「はニャ、大丈夫でありますニャ……」


「悪いが、皆を生き返らせるのにお前の力が必要だ」

「分かったですニャ。でもさっきの魔法は、どうやったんですニャ?」


「多分だが、あのステッキはお前の識別コードでオンの状態だった。そこに、オレの魔素が加わったんだと思う」

「つまり2人でステッキを握れば、師匠も魔法を使えるニャ?」

「ああ、恐らく。この理屈でいけば、ミリナの魔法杖を2人で握って回復魔法もできる。オレは回復魔法を操れるからな」


「そんなもんですかニャ。でも良かったですニャ! ただ……」

「ただ?」

「師匠とずっと手を握るのは、ちょっと恥ずかしいですニャ♡」


 顔を赤らめる、ラドルであった。


「それくらい、我慢しろ」


 そう言って誤魔化したが、確かにさっきラドルの背中を抱きしめたとき、魔導服からも伝わる体のラインと肌の柔らかさを意識してしまった。非常時とはいえ、今もちょっとムラムラする。


 ともかくまずは、倒れているフィカの下に行く。

 甲冑のおかげで、幸い致命的な怪我はない。このまま歩けそうだ。


「おい、フィカ? 大丈夫か?」

「……あ、ああ。何とか。魔法使いは?」

「逃げて行ったよ。すまんがあの4人を助けたいから、先に行って良いか?」

「ああ、後から追いかける。明かりを一つくれ」


 フィカに頼まれ、キャフはシャツの一部を破いて小さな火を灯して渡した。


 2人は魔法ステッキで体をささえ、よろけながら瀕死の仲間達の下へと向かう。

 まずミリナからだ。鍾乳石が胸に突き刺さっている姿が痛々しい。


 魔法杖も、近くに転がっていた。ラドルの操作で、識別コードがオンになる。

 ミリナを突き刺す岩を抜き、2人で回復魔法をかけた。


「う、うーん……」


 みるみるうちに傷が治って生気が戻り、無事に生き返ってくれた。

 予想通りミリナの魔法杖でも、ラドルのおかげで魔法が使える。


 側に落ちていた眼鏡を拾いラドルがかけてあげると、2人と分かったようだ。


「あ、わ、わたしは…… それより皆さんは?」

「オレたち以外、瀕死の重症だ。生き返って直ぐですまんが、回復魔法をかけてもらえるか? オレと一緒に魔法杖を持てば、直ぐに蘇生できる」


「は、はい! 喜んで!」

「あ、わ、わたしも……」

「いや、ラドルは魔素をかなり使ったし、皆の荷物を持って来てくれ」

「わ、かったニャ……」


 少し不満そうなラドルだが、指示を受けて皆の荷物を回収に出掛けて行った。それからはミリナとキャフで回復魔法をかけ、残る3人を蘇生させる。ただ効率としては、どうもラドルと一緒にやる時が一番良いらしい。相性かもしれない。


「い、たあ……」

「お、おい……」

「あ、苦しい……」


 生き返った3人の意識が戻る。


「キャフ、どうだ?」

「来たか? ああ、みんな無事だ」


 遠くから声が聞こえる。フィカも来たようだ。

 ここまで歩かせて申し訳なかったが、フィカにも回復魔法を与えた。

 すぐに、痛みが消える。


「すまんが、前いた穴の辺りに行ってもらえるか? ラドルが荷物の整理をしているはずだ」

「分かった」


 フィカは文句一つ言わず、キャフの指示に従う。

 しばらくすると、荷物をもってラドルとフィカが戻って来た。


「よし、みんな無事か。傷跡はまだ残っているかもしれないが、帰ってから正式な処置をしてもらってくれ。とにかく今は、脱出が先決だ」


「おー!! おっさんありがとう! ちゅうか、あの魔法使い、何か宝物残してないの?」

「それだが、あいつが消えた場所に、何かあったと思う」


 薄暗い混乱の中だったが、それらしき物は確認していた。


「マジ! 取りに行こーぜ!!」


 現金なものだ。シドムは相変わらず元気に先頭をいく。さっきと同じ細く曲がりくねった複雑な道を進むと、エスドワルと闘った大広間に出る。そしてキャフが指差す先には、鍾乳石に突き刺さっている剣があった。


「おっしゃーー!! お宝ゲット!!!」


 シドムとキンタが、渾身の力をこめて、剣を抜いた。

 確かに、品質が良い。彼らが持つレベル以上の剣だ。

 喜ぶ彼らだが、しばらくして再び地面が大きく揺れ始めた。


 ゴゴゴゴゴゴッッーーーー!!!!!


「うわ、何これ!」

「きゃー!!」


 皆立上がれず、時折落ちて来る岩を避けるぐらいしか出来ない。


「これ、地面が上昇してる?」

「そうみたい!」


 シドムらの言う通り、まるで火山の爆発のように7人のいる岩場がモリモリと上がって行く。そして崩れた岩間から、光が差し込むのが見えた。


「出口かも!!」

「やったー!!」


 ガガーーン!!


 派手な爆発音と共に、彼らは再び地上へ戻って来た。

 何日経ったのか分からないが、久しぶりの太陽は眩しく良い天気だ。


「じゃあ、管理ギルドに戻る? おっさん達もどう? 世話になったから、オヤジに会わせたいんだけど」

「そうか。フィカは?」

「彼らの住むサローヌにある管理ギルドは、ちょうど旧道を通る道の駅にあるんだ。捜索隊支部もあるから、そこまでは一緒するよ」

「じゃあ、戻ろうか!」


 周りの地形を調べると、入り口だった丘も見えた。

 シドムを先頭に、その丘を目指して歩いて行く。


「し、師匠、ちょっと……」


 ラドルが、深刻そうな顔をして話しかけて来た。


「どうした?」

「私の魔法ステッキ、壊れちゃったニャ……」

「じ、実は私のも……」


 ミリナも同じらしい。

 2人の魔法杖を見せてもらうと、確かに2人が発動させても術式が稼働しない。


「もしかすると、オレの魔素に耐えきれなかったのか」


 元々、魔導師が使える魔法杖は特殊な識別コードを使う。それは一般の魔法杖より強力な魔法を操れるからで、資格剥奪が出来るのも魔導師以上だけだ。


 だから彼女達の魔法杖は、キャフの能力に対応し切れなかったのだろう。


「そうすると、この技は使えないかニャ?」

「何度もは無理だな。後で修理してやるが、使用者のレベルアップが必要だ」

「がんばるニャ〜」


 そんな話をしながら戻る途中、ダンジョンで会ったオーガが居た。


「あの魔法使いに勝ったのか。流石だな。ありがとよ」


 その顔はダンジョンにいたときとは打って変わり、笑っていた。


「倒せなかったけどな」


「呪縛が解けたから、それで良いさ」

「どうするんだ? これから?」

「村人の供養をして、どこかで暮らすよ。じゃあな」

「元気でな」


 そうして一行はオーガと別れ、旧道へ続く道を進んでいった。

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