第028話 最下層へ
前回のあらすじ
最後の迷路は時間がかかったけど、無事クリア!
そういえばフィカは、これ終わったら仕事に戻るんだった。
扉を開けた先には道が続き、やがて広場に出る。
「おしっ、階段見っけ!!」
先頭を歩くシドムが叫んだように、そこには階段があった。だがその階段は今までと違い、かなり長く緩やかに下る。自然の岩を積み重ねて作ったようだ。そして先に続くのは、今までより更にひんやりした空気が流れる自然の洞窟であった。
「きれい……」
「すごい……」
ラドルとアーネが灯す明かりで見える範囲だけでも、地上では見られない幻想的な光景が広がっている。沢山の石が、天井からツララのように垂れ下がっていた。光の反射なのか、星のように瞬いている。
そうかと思うと足元には変わった形の岩で囲われた池があったり、奇妙な形で盛り上がった岩が立ち並んでいる。暗闇の中から奇妙な形の岩が突然浮かび上がるので、人や生き物かと間違えて驚くときもあった。
地下水の川は川底が見えるほどにとても清らかで冷たく、飲めそうだ。
ちょうど少なくなっていたから、各自水筒に水をくんだ。
滲み出た水が岩を溶かすのか、足元の岩も湿気を含んでいる。
「これは、鍾乳洞ってやつか。滑りやすいから、足元に気をつけろ」
冒険者時代、キャフも自然の洞窟に入ったことはある。人工物よりも複雑で入り組んでいるから、厄介だ。しかもここは、他の冒険者の手は入ってない。少しの移動にも注意せねばならない。
「ゆっくり歩け、離れるな」
ポタン……,ポタン……
ちいさく水滴の落ちる音がする。時折その水滴がキャフ達に当たり、音質が変わる。何万年か何十万年か、悠久の時を刻んできた水の音。岩の芸術はずっとここに居ても飽きないほどに、進むたびに多様な姿を見せてくれた。
だが観光旅行に来た訳では無いことを、直ぐに思い知らされる。
「危ない!」
突然天井の鍾乳石が折れて、キャフ達目がけ落下して来た。
ガシャーン!
地面に突き刺さり、派手な音を立てる。
先端が尖っているから、ぶつかっていたら確実に死ぬところだ。
「どうした?」
「剣のような岩が降って来た」
すると、
グァシャーー!!
再度、鍾乳石が降って来る。あれよあれよと、沢山の尖った岩が降り注いできた。
数万年の芸術が、一瞬にして壊されていく。無残な光景だ。
ガーン!! ガッシャーン!! ドーーン!
「逃げろ!」
頭を腕で隠しながら、逃げ場を探す。
丁度良い岩の穴場を見つけ、皆で隠れた。
「これ、敵の攻撃?」
「恐らく」
暫くして音が止む。すると今度は、足元がグラグラと揺れ始めた。
ゴゴゴゴ!!!
「地震だ!」
「崩れるぞ!」
そのまま穴の中にいたら、生き埋めになる。
慌てて脱出する7人。だが攻撃は、容赦なく続いた。
「イテェエ!!」「キャー!!」「ウワ!!」
シドム達が次々と鍾乳石の刃にかかり、負傷して動けなくなる。
大量の血が流れ、虫の息だ。
「み、みんな、大丈夫? キャーーー!!!」
皆を回復させようとしたミリナも、鍾乳石に体を貫かれた。
フィカが駆け寄って応急処置を施すものの、時間の問題である。
「まずいな、今のままでは全滅だ」
「わ、わたし回復魔法使えないニャ……」
「オレが魔法を使えたら、一瞬なんだが」
「キャフ、攻撃はどこからか分かるか?」
「分からん。だがこの奥っぽい。強い魔素を感じる」
「じゃあわたしがお前たちを守るから、先を進め」
「分かった」
ドスン! ガシャーーン!!
ラドルの灯りを強めにして、フィカの剣で天井から落ちる鍾乳石を防ぎつつ、3人は先に進んだ。まずは敵を見つけねばならない。4人が心配だが、今はできることをするしかなかった。




