第027話 第四層
前回のあらすじ
オーガ、怖そうだけど良い奴でした。
でもこのダンジョンの主、ちょっと強そう。
「あと少しっすよ。気合い入れて行きまっしょう!」
相変わらず、シドムは元気がいい。これは冒険で必要な要素だ。この元気があれば他の6人もやる気になる。だが第四層は、本格的な迷路であった。
「だめ、風が届く範囲より広いわ、これ」
「わたしの魔法でも、完全なマッピングは無理そうです」
残念な顔をするミリナであったが、「大丈夫、出口見つけりゃラスボスの魔法使いだから!」とシドムはあくまで気楽にかまえている。
「じゃあ、3人で二組に分かれる?」
「ミリナは大丈夫なのか?」
「わたしは大丈夫です、シールド系の魔法もあるので。何かあったら連絡させてもらいます」
「そうか、何か変化があったら、言えよ」
「はい!」
キャフに気遣われ、嬉しそうな顔をしている。
「お前ら、とにかくトラップに気をつけろ」
「はいはーい」
「分かってるって、おっさん」
「また後でねー」
キャフは若いときを思い出していた。苦労してマッピングしたものの偽の出口に入ってしまい、元の道に戻るのに一日半かかった時もある。とにかく油断は禁物だ。
こうして二組に分かれ、探索が始まった。
「思ったより、ダンジョンは楽しいニャ〜」
「ラドル、気をつけろ。低層で小型だから確かに楽だが、創った相手がいる以上、何があるか油断ならないぞ」
「はいはい、師匠。それよりフィカにゃん、体は大丈夫?」
「ああ、まだ節々が痛むが、戦闘はできる」
「良かったニャ〜 このダンジョン終わったら、フィカにゃんも海に行こうニャ〜」
「いや、私は捜索隊に戻る。この旅も、これをクリアすれば終わりだ」
「え〜 寂しいニャ〜」
「ラドル、仕方ないだろう、我がまま言うな」
「そうだけどニャ…… 旅を彩る綺麗な華は、幾らでも側にいて欲しいニャ……」
耳も尻尾も垂れて、本当に残念そうな様子だ。
だがそれより今は、ここをクリアせねばならない。
キャフ達は、迷路を隈無く探索し続けた。時折出てくる低級モンスターを倒し、多少の金と魔法石を手に入れる。落とし穴や吊り天井のトラップもあったが、キャフの機転で事なきをえた。どうやら迷路が複雑なだけで、特別なモンスターは居ないようだ。
大分進んだと思った時、通魔石を使ってミリナに様子を聞いた。
『あっちはどうだ?』
『迷路にはまっていますが、大丈夫です』
『出口は見つかりそうか?』
『分かりません…… 皆さんの歩いた経路をこちらでまとめているのですが…… どうも、真ん中の地点に誰もたどり着けてないようです』
『壁に見せかけた扉でもあるのか?』
『その可能性があります。注意して調べて下さい』
本格的なようだ。気持ちは焦るが、めぼしい扉は見つからない。
「あ、ネズミさんだ♡」
薄暗い通路で、ラドルは目ざとく足元を走り抜けるネズミを見つける。夜の渋谷を我が物顔で徘徊しているのと同じぐらいの大きさだ。猫娘と言えども人間だから、捕って食べはしない。だがラドルにとって、本能的に気になる存在ではあるらしい。無意識に追いかけて先に進んでいった。
「おい、気をつけろ」
キャフの言う事も聞かず、ネズミを追いかけるラドルだ。
だが、壁の際で突然立ち止まった。
「フニャ? 消えたニャ??」
気になったようで、足元を何度も見ている。
「師匠、この壁の下に、隙間があるニャ!」
ラドルの言葉に、2人とも反応してその場へ向かう。ラドルが言うように、その壁は下に人為的に作られた隙間があった。動かせるかを確認したが、重くて3人では無理なようだ。
『おい、隠し扉を見つけたぞ』
『本当ですか? じゃあシドムくん達にも声をかけますので、待ってて下さい』
しばらくすると、シドム達4人がやってきた。
「おっさん、見つけた?」
「もう歩きっ放しでクタクタ……」
「もう少しだ!」
「すまんが、お前らの力もいる。扉を動かすのを手伝ってくれ」
「オーケー」
「分かった」
シドムとキンタも加わり、壁を動かす。前に動かしてもびくともしなかったが、横に動かすとズズズッと壁が動き始めた。引き戸だったらしい。
「お、いける!」
男3人の力で何とか動く。開いた扉の先には、道が更に続いていた。




