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第025話 第三層 その弐

前回のあらすじ


とりあえず、一部屋目はクリア。

「どっちが良い?」

「ぶっちゃけ、どっちもヤだなあ」

「けどシドム〜、お宝手に入んないよ?」

「そうだよな…… 調査書に書けたらAO入試も楽勝だよな……」


 押し問答が続き,結論が出ない。まあ若い冒険者パーティーなんてそんなもんだ。しかし、時間を無駄に浪費する訳にもいかない。キャフはそれぞれの扉に耳を押し付けて、内部の様子を探った。


 確かに二つの部屋にいるのは、二足歩行らしい。一匹ずつだ。

 だが歩く足音の響きから察すると、片方はもう片方より軽く聞こえる。

 違う種のようだ。


「多分こっちが大型だ。どっちも二足歩行型だから、ゴブリン、オーク、オーガ系だろう」


「じゃあさ、じゃあさ、こっそり開いて直ぐ閉めるから、中に何いるか、ちょっと見て!」


 アーネの提案で、小さい方のモンスターがいるドアをそっと開く。


 だが扉は錆びていて、ギギギーーっと明らかに気付かれそうな音が出た。そっと覗くと、部屋の奥では大型ゴブリンが鼻くそほじってベッドの上でマンガを読んでいる。


 バーン!!


 慌てて扉を閉める。この音じゃ、もう気付かれているだろう。


「ど、どうする?」

「気付かれた?」

「うん、ちょっと目が合った」

「ホブゴブリンだな」


 ちらっと見た限りそれなりの防具を身につけ、武器の槍を傍らに立てている。レベルとしては、DかEぐらい。シドム達のレベルアップには絶妙な相手だ。ラドルの魔素消費量とフィカの剣の耐久力を考えたら、ここはこいつらに頑張って欲しい。


「次なんだが、お前ら、レベル上げたいんだろ?」

「ああ、もちろん」

「このままじゃ、オレたちの取り分が多くないか?」

「あ、別に良いよ。おっさんら冒険者じゃないんだろ? 管理ギルドの責任者はオヤジの部下だから、どうにでもなるって」


 つくづく質が悪い。作戦を変える。


「実はだな、最初に見たお前たちの闘いぶりに感心したんだ」

「マジで! イケてた?」


 シドムの目が輝く。


「ああ。オレが見た中でも、一二を争うレベルだった。ギムの若い時にも負けてない。高校生と知って驚いたよ。このまま行けば、勇者になれるんじゃないか?」

「やっぱり? やっぱり! そうだと思ってたんだ〜」


 予想以上に単純でチョロい。だがここは、シドムを気持ち良くさせるのに専念する。


「だから、このホブゴブリンを倒すのは、お前らが相応しいと思うんだが?」

「んだね…… じゃ、やってみる? ミリナ、いつものようにお願い」

「は、はい!」


 シドムの指示で、アーネとキンタも戦闘準備に入る。


「ああそうだ、魔法石はこれに変えたらいい。お前さん達の魔素にプラスされるから、威力も上がるぞ」


 そう言ってキャフは、アーネとミリナに畜魔石(チャージ・ストーン)を渡した。


「あ、ありがとうございます」

「ふーん」


 2人とも魔法杖に付けられた石を入れ替える。彼らが戦闘する間にラドルの畜魔石(チャージ・ストーン)を充石できるから助かる。


「じゃあ、行くぜ!」


 シドムのかけ声と同時に扉は勢い良く開かれ、4人はホブゴブリン目がけて突入した。何かあった時の為に、半開きにしておく。



 ウガアーー!!


 おだててその気にさせたが、4人が揃ったときは確かに強い。

 フォーメーションも的確で、攻撃のタイミングも抜群だ。


 ホブゴブリンは槍を操り必死に反撃するものの、ミリナの回復魔法で直ぐ怪我が治るシドムとキンタ相手では、倒されるのも時間の問題であった。


 ギャアーーー!!


 断末魔の叫び声をあげ、ホブゴブリンは陥落した。


「やった!」

「すごーい♡」

「良い感じだな!」


 4人みな喜んでいる。キャフら3人もほっとした。嬉々として魔法石やホブゴブリンが持っていた宝物を回収する4人を脇目に、キャフはもう一つの扉が気になっていた。


(さて、最後の敵か……)


 四つ目の部屋にも、モンスターは居るかも知れない。だが今は、この敵に集中するしかない。ホブゴブリンより大型とあれば、オーガ系だろう。知性もあるし、あいつらだけじゃクリア不可能だ。


 しばらく休息を取り、準備を念入りにする。


「じゃあ、行くぞ」


 覚悟を決めて、扉を開ける。ギイーーーッと、気に障る音を立てながら扉は開いた。

 そこには身の丈3m、正に鬼の形相のオーガが仁王立ちしていた。

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