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第023話 第二層から第三層へ

前回のあらすじ


楽勝、楽勝。宝物もきた!

「キターー! 宝物!」

「たっからもの! たっからもの!」

「はい、宝物一つきました〜!!」


 3人はもう宝物をゲットしたものとして騒いでいる。

 自分も若い頃はそうだったので、あまり批判はできない。


「まあ、慌てるな。あんたら、調査スキルは持ってるのか?」

「わたし持ってる」


 アーネが行って、窪みにある箱を調べ始めた。

 だが戻って来ると、少し複雑な顔で皆に言った。


「分かんない。わたしじゃムリ」

「……どういうこと?」

「プロテクト強過ぎて、透視不可だった」

「じゃあ、中身分かんないの?」

「うん……」

「鍵はかかってる?」

「ううん、多分開けられそう」


「おっさん、どうする?」

「お前ら、どうしたい?」

「そりゃあ、お宝ゲットしたい」

「爆弾の可能性もあるぞ?」

「じゃあ、おっさん取って来てよ」


 軽々しくお願いするのは、若さ故か。

 仕方ないと、キャフは箱に近づいた。


「師匠、一緒に行くニャ」


 心配なようで、ラドルも付いてきてくれる。


 近づくと、その箱はキャフが見たことのない形だった。

 確かに押しボタンがあるから、それで開きそうだ。

 だが単なる宝物かトラップか、巧妙に作られていて全く分からない。


 昔のパーティーでは、こういう面倒ごとはシェスカさんが全部やってくれた。職業は盗賊で、フィカを更に色っぽくしたお姉さんだった。裏の世界に精通していたらしく、とても色んな情報を知っていた。宝箱とトラップを瞬時に見分けられるのは、凄い才能だったと今にして思う。


 キャフが鍵を開けるのは、これが初めてだ。拒否しても、良かったかもしれない。だがその場合、他の誰かを危険に晒すことになる。それだったら自分がやろうと、キャフは決心していた。


 危険を少しでも減らす為に、入念に箱の周りを調べる。『偽物は一目で不自然さが見える』とシュスカが言っていたが、いざキャフが調べてみてもそんな不自然さは微塵も感じられない。


(まあ、つまり大丈夫なんだろう……)


 何もしなければ進まないから信じる事にして、キャフはボタンを押した。


 すると白い閃光がキャフの目から視界を奪い、凄まじい衝撃波がキャフを吹っ飛ばした。


 ドドーーン!!!


(うわ、やっちまった……)


 キャフの後悔も空しく、その意識は彼方へと消え去って行った。


      *    *    *


(……キャフ坊、キャフ坊?)


 だ、誰だ…… その呼び方はグラファ聖しか……


(そのグラファじゃよ。どうした? わしを忘れたか?)


 グラファ聖? 死んだ筈じゃ……


(未だ生と死の境界におるのじゃ。そこに、お前も来た訳じゃ)


 え? じゃあオレ死んだの?


(お主は、未だ境界にいる。だから、わたしの声も聞こえるのじゃ)


 そうでしたか…… お久しぶりです! じ、実は魔導師の資格を失いまして……


(知っておる。災難だったの)


 す、すいません…… グラファ聖の名を辱めてしまいました……


(いや、そんなのはどうでも良い。それよりお前はどうするんじゃ? このままじゃ、こちらに来てしまうぞ? もう現世に未練は無いのか?)


 ……いえ、まだやりたい事があります。


(そうかそうか。頑張るがええ。だが、今から大きな厄災が押し寄せて来る)


 厄災?


(ああ。大きな波じゃ。お前も飲み込まれる。生き延びよ。お前ならできる)


 ……あ、はい。分かりました。


(さらばじゃ。戻るがいい)


 え? グラファ聖?


      *    *    *


……夢か。


キャフは意識が戻った。


……何か、柔らかいものに包まれている。母さんの感触と似ている。もう何年前だろう。多くの人間が覚えている、幼少期の温かく甘い記憶。顔の上にある柔和でとろけそうな感触がとても気持ち良くて、無意識に手を伸ばし触ってみた。


 その瞬間だった。


「ひえぇえ〜〜!!」


 ドゴッ!


「うぉおーー!!」


 股間に強烈な痛みを感じ、キャフは肉体的な意味で悶絶した。

 温かい物体から引き離され、冷たい床に這いつくばり体を左右に振る。


「痛い! 痛い!!」


「お前、ロ○コンだったのか? 念のためだが、アルジェオン王国の法律でも、未成年との淫行は犯罪だぞ。刑務所に入ったら、一番最低の待遇だぞ」


 フィカの冷たい声が聞こえる。

 股間の痛みといい、生きている実感が急速に蘇った。


「はぁあ?」


 事情を良く飲み込めず目を開けて事態を把握しようとつとめたキャフの傍らにいたのは、真っ赤な顔をしてブルブルふるえているミリナだった。すっかり怯えた目でキャフを見ている。


「おっさん、意外にやるね〜」

 シドム達3人は苦笑い、ラドルは覗きがバレた時と同じくジト目をしている。


「も、もしかして……」

「そうだ、今お前はミリナの胸をつかんで、襲おうとしたんだ。回復(ヒール)魔法で一生懸命お前を回復させていた彼女に、だ。切られなかったのは幸運と思え」


「は、はい…… すみません……」

「あ、いえ、突然のことでビックリしちゃっただけで、わ、わたし気にしてませんから! 回復されて何よりです。お体、動かせますか?」

「あ、ああ……」


 どうやら、さっきの爆発の後に回復魔法をかけてくれたらしい。神経の感覚がいつもと違うが、とりあえず体を動かしてみる。まだ動きが固いものの、問題ないようだ。ゆっくり四つん這いになり、二本足で立上がる。痛みは無い。


「すまなかった、どうや大丈夫のようだ」

「いやいや。おっさんのおかげで、宝物も手に入ったよ。あれ、二重底だったんだ」


 シドムの足元には沢山の宝石があった。死にかけたかいがあったというものだろう。一行は先を急ぎ、階段を見つけた。馴れた様子で、若者四人が階段を下りて行った。だが、直ぐに戻って来る。


「ごめん、次マッピングむり」

「す、すいません……」


「どうした?」


 意外な言葉に、キャフは驚いた。

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