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第229話 祝宴(前編)

前回のあらすじ


キャフ、マジで魔法が使えなくなる。

「……ラドル、聞こえるか?」

「……駄目ですニャ、猫耳を持ってしても聞こえないですニャ」

「もしかして濡れ場?」

「いや、そんな急展開は流石に無いんじゃないですか?」

「分からんぞ。あの女、結構やるからな」


 4人はキャフの部屋の扉に耳を押しつけ、じっと中の様子を伺っている。

 だが距離があるのか、何の音も聞こえない。


「そもそもルーラ女王は公務で忙しいのでは?」

「大方マドレーが代役してんだろ」


 当たりである。


「しかし、どうする? もう殺されないからメインヒロインになる意味もないしな。邪魔するのは野暮か……」


 フィカは、どことなくつまらなそうだ。

 女王様に恨まれたくないので乱入しづらいが、他の3人も同じである。


「結局、みんな死んじゃったけどニャ」

「まあ、それはそうですが……」

「あいつ頼りなさそうだけど、居心地は良いんだよな」


 4人とも、複雑な心境のようだ。

 真剣な顔で耳をそばだてるが、やはり聞こえない。


 ギィイ〜


 すると、扉が急に開いた。


 ワ! ウワッ!!


 内開きだから、扉に耳を押し付けていた4人は前のめりになってドスンと転ぶ。

 キャフは4人を見てキョトンとしている。


「お前ら何やってんだ?」

「へへ、」


 4人は笑ってごまかした。

 奥にいるルーラ女王が、こちらを見て微笑んでいる。

 さすが女王、全身ユ◯クロの侍女姿でも気品が滲み出ていた。


「ちょうど良かった、皆でお茶しましょう」

「分かった。シーマを呼んでくる」


 2人に促され、4人もおずおずと部屋に入った。

 しばらくするとシーマとメイド達が現れ、手際良くお茶が用意される。


 だがどうも会話が弾まない。

 ルーラ女王は微笑みを絶やさないが、肝心な話はしない。

 キャフも居心地が悪く、4人が来てくれて助かったようだ。


 この場を進めるため、ミリナが意を決して口を開く。


「そ、それでお二人は、け、結婚するんですか?」


 動揺して噛みまくりだ。ルーラ女王は、余裕の笑みで返す。


「どうでしょう? 私は何度もお願いしているのですが……」


 事もなげにサラッと話すルーラに対し、キャフは煮え切らない態度でうつむく。

 4人は”やはり”という顔だが、どう場を繕えば良いか分からない。


「師匠どうするんですかニャ? ルーラ女王が嫌ニャ?」

「嫌じゃないけどな。うーん…… 王家は大変だしな。オレみたいな奴が表に出たら面倒だろう。弟も、また何をしてくるか分からんし。それにもう魔法使えないからな……」


 それは今までのキャフを知る人間なら、誰もが思うことだ。ただでさえ経歴にいろいろケチがついている。反対する気ならいくらでも出来る。


 ルーラ女王がその気でも一悶着あるのは確実だろう。


「そんな事ありませんよ。リルにはきつく言っておきます。魔法が使えなくても何とかなります」

「それでもなぁ……」



 ルーラは必死に懇願する。

 確かに今のルーラなら、リルは手出しが出来ないかもしれない。

 だが粘着質の相手は兎にも角にも厄介だ。


 因みに4人はこの様子を見て、結婚すれば尻に敷かれると確信していた。


 4人は知らなかったが、ルーラはキャフへ何度も登城要請をしていた。

 通魔石電話もかけたけれど、キャフの魔素が減ったので繋がらなかった。


 幾ら連絡しても返事が無く、我慢できずついに家まで来た次第だ。

 相変わらず、こういう時の行動力はある。


「それより、お前達はこれからどうしたいんだ?」


 キャフからの逆質問に、4人は顔を見合わせた。

 確かにキャフが結婚するとなると、ここに居る理由が無くなる。

 ぼんやりと思っていたものの、いざ家主から言われると困惑した。


「今のままの生活は捨てがたいニャと……」


 ラドルの言葉に、3人も同意してうなずく。


「そもそも結婚なんて人生の墓場ですよ? キャフ師、本当に良いんですか? 一時の情で人生棒に振りますよ? 数年でメンタル崩壊して離婚したカップル、沢山いますよ?」


 彼氏もいないミリナに説教されるキャフだが、言いたい事は分かる。

 ちなみにルーラ女王の少し引きつった顔に気づいた者はいない。


「じゃあさ、ぶっちゃけて聞くけど、この結婚に賛成の人、手を上げて!」


 キアナの質問を受けて、手をあげたのはルーラ女王だけだった。


「そうなんですか…… でも、そんなもんですかね」


 ルーラは意に介さない。子供の頃から想いがあるから、手強い。


「じゃあ、キャフと結婚したい人?」


 それにも真っ先に手を上げたのは、ルーラだった。


「うーん、そう言われると悩むな」


 フィカはじめ、4人は躊躇しつつ手を挙げてみた。


「結婚……だと、他の皆と一緒に暮らせないんですよね……」

「まあ、それが当たり前だな」


 ミリナの質問に、キャフが答える。


「皆と離れ離れになるのも嫌だな…… じゃあ、このままが良い人?」


 ミリナの提案に、キャフも含めルーラ以外の全員が手を上げる。


「……分かりました」


 ルーラ女王は、苦笑いしていた。


「そうですね、キャフ様にこれ以上の責務を要求するのは酷かも知れません。じゃあ私も時々遊びに来ますので、このままでいきましょう」

「女王様、ありがとニャ!」


 これで4人とも、ホッとした表情になり会話も弾み始める。

 結局何も変わらなかったが、そんなもんかも知れない。

 

「じゃあせめてもの記念にパーティーでもしませんか?」

「さんせーい!」

「どうせだから花嫁姿でもしよっか?」

「いいね!」


 という事で、ささやかなパーティーを催すことが決まった。

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