第022話 第二層
前回のあらすじ
いいかあ、若いの。マッピングとはなあ……て、あっという間に出来ちゃった。
昔はあんな苦労したのに……
「おっさん、ちょっと見てきてよ!」
「わかった。行って来る」
「師匠、わたしも行くニャ」
「じゃ、わたしも」
「あ、皆さん待って下さい。これを付けるとわたしの声が届きます。皆さんの声もわたしに聞こえるので、様子を教えて下さい」
ミリナに言われて通魔石を一つずつもらい、身につける。
受け取る側だからキャフも問題ないようだ。
3人は慎重に落とし穴の脇を通り、静かに階段を下りた。
確かに、階段を下りた先に大きな生物が寝ている。
「厄介だな。人食い熊か……」
この時期は冬眠中だから、起きると気が立って手がつけられなくなる。パワーも人間の十倍以上あり、剣で闘うとしたらCかDランクが適正だ。あいつらには荷が重そうだ。
ミリナに説明する。
「人食い熊が一匹。冬眠中だ」
「どうしますか?」
「そうだな……。こちらで相談して、出来そうなら対処する」
「分かりました。お気をつけ下さい」
「で、どうするニャ?」
ラドルは熊が恐いのか、足が少し震えている。
「お前、アイスボール出せるよな?」
「フニャ?」
「それで、凍らせろ。畜魔石も満タンだから、かなりのパワーが出るはずだ。最低でも、オレたちが通るまで低温状態にすれば良い」
「こ、怖いけど、わかったニャ……」
ラドルは魔法ステッキを持ち、恐る恐る熊の正面に出た。
「あ、あい、《アイスボール》ニャ!」
小さな声で詠唱すると魔法ステッキから白い空気が現れ、人食い熊を包み込んだ。みるみるうちに、人食い熊はカチンコチンに凍る。
「よし。2人とも通ってみろ」
キャフに言われ、2人とも凍った熊の脇を通り道の先へ辿り着く。
ラドルが灯す明かりの様子から、特に問題ないようだ。
キャフは一層に戻ると4人に報告して、一緒に来るよう伝える。
半信半疑の4人だったが、階段を下りて目の前にいる動かない人食い熊を見て理解したようだ。とりあえず先に進む。
ここの廊下もそれなりに広い。分岐路の手前でモンスターの不在を確認し、ミリナとアーネで索敵を開始した。しばらくして問題なく完了すると、ミリナが図を描き始めた。
「さっきより広くなりましたが、階段はここの一つしか無さそうです。そうですね、少し遠回りですがこの道を行けば、トラップにも会わずにたどり着けます。ただモンスターらしき挙動の物体が、幾つかあります。移動しているから、位置は変わりそうです」
「どんなモンスター?」
「そこまでは分かりません。動きが単調なので、人間タイプでは無さそうです。あとここだけ通路の幅と合わない窪みがあります。宝物かトラップがあるのかも知れません」
「え、宝物? 行こうぜ!」
宝物に反応し、シドムが興奮する。
「まあ、慌てるな。じゃあ、道案内を頼む」
「はい、ではこちらで」
ミリナの導きで、一行は奥へと進んだ。
「……あれが、モンスター?」
拍子抜けしたようにアーネが言う。そこにいたのは、大きなブロッコリーの塊であった。確かに動いているが、一つの通路を行き来するだけの自動プログラムらしい。
「あれなら簡単だ。剣でも魔法でも一撃だろう」
ミリナだけ高いとはいえ、他の3人もEランクはある。Fランクレベルの初級モンスターでは、魔法石稼ぎにしかならない。多分さっきの人食い熊が門番で、後はいい加減に配置したのだろう。
「少しでもポイント欲しいし、倒しとく?」
「そうだね」
若者3人の意見は決まったようで、シドムとキンタが背後から剣で襲う。
グサ!!
大上段から振り下ろされた剣はサクッとモンスターを真っ二つにし、ブロッコリーは動かなくなった。2人はゴソゴソとブロッコリーを調べ、魔法石を取り出す。
「まあ、こんなもんしょ」
「食糧にする?」
「今は沢山あるけど、念のため一切れぐらい持ってくか」
この調子で、一行は階段のある場所を目指して進む。
そして、件の物が現れた。
「ここです、何かあります」
確かに、壁に埋め込まれた何かがある。