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第211話 死亡フラグ 前編

前回のあらすじ


ルーラ女王とマドレー、久しぶりに出てくる。

「いや〜 クムールの酒、意外とうめえな。もう旅も最後だからな。前祝いに飲むぜ!」


 夕食、近くの村から入手した酒を飲むキアナはご機嫌だった。


 ハグータ島襲撃のあと日中は身を潜めていたが、この辺りまでは警戒されていないようで危険はなかった。夕方なじみになった村に行っても、特に問題なく食材を入手できた。


「あ、確かに美味しいニャ! ほんのり甘くて飲みやすいですニャ〜」

「私も飲みたいです〜」

「敵もいないしな、今日ぐらいは良いだろう」


 4人の乙女達は、これ幸いと飲み始める。

 キャフは軽く夕食をとった後、近くのテントで寝てしまった。

 魔素を消費しすぎたようで、ぐったりしていた。


「けど、良いのか? まだ最終章始まったばかりだぞ?」

「フィカ姐さん、堅いことは言いっこなしよ。大体こっから負けて鬱展開なんて、あり得ないっしょ? ちゃちゃっと雷の方舟ぶっつぶして、皇帝とかあの美魔女BBAや将軍たちを倒して、凱旋して終わりよ〜」


 キアナは、もう勝った気でいるらしい。


「それがうまくいってないから、ここまでお話が伸びてるんですけど?」


 ミリナの疑問も、もっともだ。


「大丈夫だいじょうぶ。きっとあの腕輪で変身して巨人か巨大ロボットにでもなって、一気にぶっつぶす訳よ。じゃなきゃ、時間を遡って最初の時に行ってくるとか、名前書いたら即死するノートが出てくるとか」

「安易すぎないか?」

「所詮なろうの素人作家なんだから、それくらいが関の山っしょ」


 酒の力も借りて、キアナは気が大きくなっているようだ。

 書いているこっちも不安になる。


「キアナさんの言う通りかもですニャ。ストレスフリーの健全サイトですから、皇帝と会って瞬殺にゃ」

「じゃあ私達はどうなるんですか?」

「ミリナちゃん、決まってるニャ。お城の財宝たくさんぶんどって、一生食いっぱぐれず贅沢に暮らすニャ〜 イケメンもよりどりみどり。逆ハーレム作り放題ニャよ?」


 ニヤリと笑うラドルは、悪役のような顔をしている。

 ミリナも、(やま)しい笑顔を浮かべている。


「そっか、じゃあ安泰ですね。飲みましょう〜♡」

「かんぱぁーい!」

「いぇーい!」


 3人は乾杯してグラスを飲み干す中、1人が冷静にボソッと呟いた。


「いやこれ、誰かが死ぬんじゃないか?」


!!

……


 フィカの言葉に、一転して4人は劇画調の深刻な顔に変わる。


「い、いや、そんな事ないでしょ? や、やだなあフィカさん。はっは……」

「フィカ姉さん、疲れてるんですニャ」

「姐さん、考えすぎっしょ」


 3人はあくまで冷静を装うが、フィカは考えを改めなかった。


「ミリナ、よく考えろ。これで終わりだ。いくら五十万字超えて初めてブクマ100超えていわゆる底辺を脱出したからと言っても、もっと読まれるために、読者がうひゃーってなる展開を作者は考えてるかも知れないぞ」

「そうですかね? お色気やっても伸びなかったのに」


 まあ、そうだ。


「だから、だ。大体ここまでのんびりした展開が多かったからな。あと残ってるのは主要人物が死ぬくらいだろ?」

「え、それって傲慢じゃねえか?」

「そうだニャ! 私たち、ここまで頑張ってきたのに。訴えてやるニャ!」

「そうですよ、おかしいですよ!」


 フィカの説明に、3人は納得いかないようだ。


「お前ら作者のことなめすぎだぞ。いま私達がゴルゴみたいな劇画調の顔になってるのも作者の指示だ。死んだと書かれたらおしまいだ。次話は八十年後とか数万年後に飛ばされても、文句言えないんだぞ?」


 ……


 酒の酔いも冷めたのか、4人は無言になる。

 多分そんな事すると読者から文句が来そうだが、彼女達はそこまで考えが回らなかった。


「死ぬのは……イヤ。死ぬのは、イヤ……」


 突然ミリナがガタガタと震え、旧劇のア◯カみたいな独り言を言い始める。


「お前散々暴れてきたくせに、今更だろう」


 フィカが諭してもミリナは全然聞かず、震えてブツブツ言うだけだ。


「確かに、明るい作品書いてる作家でも急に暗くなる時あんだよなぁ。マーク・トウェインって知ってるか?」


 キアナが、悟ったかのように喋り始める。


「『トム・ソーヤーの冒険』ですニャ。小さい頃絵本で読んだニャ」

「あの作家、『不思議な少年』ってのも書いてんだけど、むっちゃ暗いぜ。最後にどんでん返しあるのかと思ったら救い全然ないし。マジ読んで後悔したよ」

「『砂の城』みたいなもんですかニャ?」

「ああ、あれも漫画だけどビックリしたな。『有◯倶楽部』のノリで読んだら、全然違うし。でもあれは後書き読んで安心した。あとは久米田の漫画も結構ヤバいよな」


「死ぬのはイヤ、死ぬのはイヤ、死ぬのはイヤ……」


「しかし、本当にヤバイかニャ?」


 フィカの言葉に、3人は不安になってきたようだ。


「多分、私らの辛い秘められた過去とか出始めたらヤバイな」

「確かにですニャ。鬼◯の刃なんかそのパターンですニャ」


 最終回に向けての、お約束かもしれない。


「キアナさん、何か無いんですかニャ? 高貴な家柄で育ったせいで、引き裂かれた恋とか」

「いや〜、ないなあ。うちは世渡り上手なだけで、家柄は大したことねえよ。あ、でも軍に入隊した頃、演習の行軍ではぐれたんだ。で、一人になった時ベテラン兵と遭遇してな。助けてもらえると思いきや、急に抱きついてきたんだよな」


 キアナの話に、ラドルとフィカは食いついてきた。


「え、それヤバいニャ! 大丈夫だったニャ?」

「お前、もしかしてその時に純潔が……」

「いや、それが自分が女でアレが付いてないと知った途端、バッと離れていったんだ」


 2人は、目が点になる。


「? それって……」

「うん、後で他の人に聞いたら、ホ◯で有名だった。同じ手で若い新入り少年兵も被害に遭ってたって。確かに自分、時々間違われるっすけどね…… あの兵隊さんの悲しそうな顔を見たのは、色んな意味で辛かったっすよ」

「……それは、辛いですニャ」

「まあ無事で何よりだった」


 少しデリケートな話なので、2人は突っ込めなかった。


「ラドルこそ、故郷とか親の話をやってないんじゃないのか?」

「あ、確かにやってないニャ! でも親2人と兄さん2人も健在でのんびり獣人村で暮らしてたから、大して言うことないですニャ〜 そう言えば近所の猫神さんちで四十二人殺しがあって、容疑者一人残してみんな死んだ後に、子供の探偵が犯人を見つけましたニャ!」


 ラドルは、一生懸命アピールする。

 

「それ何か色々と混ざってないか?」


 ラドルの話が本当か嘘かは、謎のままで終わりそうだ。


「それよりフィカ姐さんとかないんですかい? 死んだ両親が他国の王族で、人に教えちゃいけない呪文があるとか」

「バ○スかニャ?」

「いや、ないない。あー、でもスラム街で極貧生活してた頃、金持ちそうなお姉さんが紙袋をとても大事そうに抱えて歩いてたんだ。だから盗んでみたら、今思えばBLものの漫画でな…… 兄者に見せて気まずかったな」


 ……


 苦笑いするフィカの話を聞いて、突然ラドルとキアナが泣き始めた。


「フィカ姉さん、それは辛かったですニャ……」

「この中で一番泣ける話っすよ。姐さんにフラグ譲ります」

「おいやめろ! 勝手に殺すな!!」


 酒のせいか、グダグダだ。


「しかし、こうやって話してみると、展開が分かんなくなってきたな。いきなりトーナメントが始まったりして。あっちも4人いるし」

「お城の中で一階ずつ上がってとか、ですかニャ?」

「それじゃ、雷の方舟関係ないだろ」

「あ、それもそうだ」

「じゃあ違いますニャ」


 フィカの指摘に、キアナとラドルは気づく。


「じゃあ何だろう? いきなり異能力バトルとか?」

「そこまで展開変えたら誰も読まなくなるな」


「死ぬのはイヤ! 死ぬのはイヤ! 死ぬのはイヤ! 死ぬのはイヤ! 死ぬのはイヤ!……」


 ミリナは、まだ独り言が止まらない。



「まあともかく、死亡フラグを避ける方法は一つだけある」


 フィカの言葉に、2人は目を見開いた。


「何ですか? 姐さん?」

「そうですニャ、知りたいですニャ!」


「メインヒロインになるんだ」

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