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第021話 第一層から第二層へ

前回のあらすじ


海に行くつもりが、地面にもぐってるでござる。

「イェエーーイ!! やってきました! ダンジョンっす!!」

「お宝、どーこー?」

「あ、これ声がすごい響く! わぁぁああーーー!!!」


 わぁぁああぁぁ……

 わぁぁ……


「ホントだ! ウケる〜」

「モンスター、出てこ〜い!!」


 3人は酒の酔いもあってトランス状態だ。いきなり大声で騒ぐとは自殺行為にもほどがある。ただ幸いに、モンスターが近くにいる気配は無かった。


 入口近くから段々と下るにつれ、日の光も届かなくなってくる。


「ミリナ、火付けて」

「あ、は、はい」


 ミリナの魔法で明かりが灯され、中へと進む。しばらくすると広い空間が出て来て、内部構造が分かる。単なる洞窟かと思ったが意外なことに人工物のようで、壁には人の手が入っている。


 通路の幅は3人が横に並べるくらい、天井は高く余裕がある。カビ臭くもなく、夜に近づいているせいか少し寒いくらいだ。最近出来たと言うのも本当らしい。



「まず、お前ら」

「なに? おっさん?」

「むやみに音を出すな。ここからは、モンスターが何時どこから来るか分からん。もう少し気をつけて歩け」

「はーい」

「はい!」


 先生にたしなめられた生徒のように、3人は素直に従った。ミリナは優等生らしく、一歩下がって大人しくついてくる。恐らく何時もしんがりを務めているのだろう。


「じゃ、さくさく行こっか」


 若者達は気楽に、先頭に立って歩き始めた。

 それに対しラドルは少々怯え気味だ。フィカはいつもと変わりない。


「初めてだから、怖いニャ〜」

「まあ、大丈夫だ。フィカは?」

「わたしも、ダンジョンは初めてだ」


 その割に落ち着いた様子で隙を見せないのは、本能なのだろう。


「あ、分かれ道!」

「キタ! 迷路!」


 先頭の3人は楽しそうにはしゃいでいるが、下手なトラップに引っかからないかとキャフは気が気では無い。自然洞窟ならともかく人の手が入っている場合、まずトラップの存在を意識するのが鉄則だ。


「お前ら、まずはマッピングが基本だ。始めは慎重に壁に沿って歩け」


 キャフは諭すように言う。どこが行き止まりで何が出てくるか全く分からないのがダンジョンだ。クセを知る為にも、注意深く進まねばならない。


 だがキャフの憂いをよそに、若者達は、は? という顔をしている。


「おっさん、大丈夫。見てなって。ミリナとアーネ、いつものやつ」

「はい」

「分かった」


 ミリナは腰に付けている袋から、砂みたいな物を取り出した。

 そしてアーネはそれに魔法杖を向け,風の呪文を唱える。

 すると軽い風が巻き起こり、砂はキラキラと輝きながら奥まで飛んで行った。

 あわせてミリナも魔法杖をオンにする。


「索敵呪文っすよ。ミリナの通魔石(コミュ・ストーン)を砂状に砕いて飛ばすと、共鳴して周りの状況が分かるんだ」

「そうなのか……」


 感心するキャフであった。若者と言えども侮れない。

 若さと見かけで不安ばかり先行していたが、意外としっかりしている。


「あ、一層の様子が分かりました」


 ミリナは紙とペンを取り出し、ダンジョンの概略図を描き始めた。


「この階には、目立ったモンスターはいないようです。階段がここですが、その手前にトラップぽい何かがあるだけですね。階段は狭くて第二層に通魔石の砂が入らなかったから、後は分かりません」


「どうする?」


 シドムは冷静に皆から意見を聞く。酔いも覚め、正気になってきたらしい。


「簡単に行けるとして、二層から下の状況が分からない。焦って行くよりも、一度戻って十分休んでからの方が良いだろう」


 キンタも、思ったより堅実なようだ。


「おっさんは?」

「俺も同意見だ。まず外で野営して、明日の朝一番に行こう」

「じゃ、そうしよっか」


 入口に戻り、野営の準備をする。テントも各自持ってるようだ。


「じゃあ、俺とアーネは一緒にするから、アーネのテントを2人で使いなよ。おっさんはキンタと一緒でいいっしょ?」

「ああ」「すまん」「ありがとニャ」


 冒険関係の装備を持ってないので、ありがたい。

 モンスターよけの杭を四方に打ち、テントで寝る。

 久しぶりに見た夜の星空は満開で、昔の冒険時代を思い出させてくれた。



 翌日の朝。ウサギ肉の残りを食べ、出発の準備をする。

 オークの村でもらった保存食もあるから、二週間は大丈夫だ。


「荷物どうする? 置いてく?」

「持って行こう。状況によっては、同じ場所に戻れるか分からない」

「りょーかい」


 こうして本格的な探索が始まる。昨日見つけた、階段手前のトラップまで来た。

 子供だましの簡単な落とし穴だ。脇を通れば問題ない。


「これがトラップ?」

「まあ、引っかからないな」


 先頭の3人は落とし穴を避けて、階段向かった。少し下りて行くと急に3人とも静かになって、そーっと戻って来た。


「なんかいる! 寝てるっぽい!」


 いよいよモンスターの出現か。キャフは覚悟を決めた。

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