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魔法を使えない魔導師に代わって、弟子が大活躍するかも知れない  作者: 森月麗文 (Az)
第十四章 魔導師キャフ、最恐兵器を手に入れる
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第206話 荒れる冒険者達

前回のあらすじ


ボロボロになってるけど、冒険者ギルド、やってました。

 久しぶりのモンスター生息域(ハビタブル・ゾーン)だ。


「貧弱な橋になったな」


 フィカが言う通り、空堀の上にかけられていた頑強な橋はあの爆発で消え去ったようだ。応急処置みたいに作られた橋は木製で、歩くたび今にも崩れそうなほど揺れている。これではモンスターの死体どころか、魔法石を積んだ馬車すら通れそうにない。


「何だ? あいつら?」


 橋を渡り終えた先には、怪しげな冒険者達が数人たむろしている。

 その姿は一見平凡だが、冒険に行かず駄弁っているだけだ。


「冒険者じゃないのかニャ?」

「あんな所で無駄話してる冒険者って、いました?」

「いいや。何だか昔よりもっと胡散臭いな」

「今は、ああいうのが流行りなのか?」


 そのうちモンスター生息域から、冒険者が一人戻ってきた。

 魔法石を積んだ袋を背負っている。大漁でかなり重そうだ。

 ソロであれだけの量を集めたのだから、ランク上位だろう。


 先ほどの冒険者達とすれ違ったとき、たむろしていた彼らが何か合図をした。すると、次々に似た姿の冒険者達があちこちから現れる。そして彼等は橋を渡る直前の冒険者に十人以上の集団で襲いかかった。


「ヤメロォ!! コラァあ!!」

「うっせぇんだよ! ほら、よこしやがれ!!」


 冒険者も反撃するものの多勢に無勢で袋を破られ、魔法石がボトボトと落ちる。それを素早く拾い上げた怪しい冒険者達は、急いで橋を渡りギルドへ戻って行く。


「ちくしょぉお!!」


 奪われた冒険者は、地団駄踏んで悔しがっている。


電撃(サンダー)!」

「ギャァあああ!!」


 思わずキャフは、その集団に電撃をくらわせた。


 モンスター相手なら手加減無用だが、相手は人間なので一番弱いレベルの魔法にする。だがそれでもキャフの電撃をまともにくらって倒れ込み、カツアゲした魔法石の殆どは空堀の底へ落ちていった。


「てめぇ!! 何すんだ!」


 先ほどの集団の一部が戻ってきて凄む。だがキャフ達5人には、虚勢を張る子供にしか見えない。武器を使って襲いかかってきたのでバリアをかけて浮遊魔法を使い、さきの冒険者も加えて宙に浮いた。彼らは呆気にとられる。


「な、何だあいつら?」

「あんな魔法、見たことねえぞ!」


 どうやら浮遊魔法を初めて見たらしい。ランクは低いようだ。下から驚嘆の声が聞こえるが放っておいて、宙に浮いた状態で冒険者に話を聞く。


「おい、大丈夫か?」

「あ? ああ。ありがとよ」


 冒険者は、キャフ達に感謝する。

 年は、ラドル達とフィカの間ぐらいのようだ。


「あいつらいつもこんな事してるのか? 冒険者ギルドは何か言わないのか?」

「何を言うって? 冒険者ギルドは見て見ぬ振りさ。盗られた俺達が悪いって言われるだけ。証明もできないから、泣き寝入りよ。身なりも平凡で、誰がヤバイやつか俺達も見分けがつかねえんだ。誰かが犠牲になってたら、その隙に行けたんだけどな。それでも今日はこんだけ残ったから、生活の足しになるし、良しとするさ」


 どうも、諦めているらしい。組織運営がいい加減なのは昔からだが、ここまで酷いと冒険者自体が減りそうだ。どうせだからと、そのまま飛んで彼をギルドまで送っていく。冒険者はいたく感謝して、喜びながら換金所へと向かって行った。再びオンボロ橋を渡るのも億劫なので、5人は再びキャフの魔法で浮遊して飛ぶ。


 橋のたもとでは、相変わらず先ほどの集団がいる。

 キャフ達を見て、何かを喚いていた。


「昔より殺伐としてますニャ」

「あれだけ人数をかけられるなら、苦労してモンスター倒して魔法石を採取するより冒険者から奪った方が楽かもしれませんね」

「怖いのは、モンスターより人間か……」

「まあ、荒れてる時はこんなもんよ。別に最近に始まった訳じゃない」


 5人は複雑な心境になった。


「どうするんだ、キャフ?」


 フィカに聞かれても、キャフは困っていた。


「何とかしてやりたいが面倒だな。早くクムールに行きたいし。このまま飛んで行きたいんだが」

「待ってください。良いアイディアがあるんですけど、やっても良いですか?」


 ミリナがキャフに提案した。何か策があるらしい。

 少し、ワクワクしている顔をしている。

 こういう時のミリナは、少しヤバい。


「成功する確率は高いのか?」

「まあ、多少は……」

「殺しは駄目ですニャよ」

「大丈夫ですよ、真っ当な人生が送れなくなるぐらいですから」

「……ミリナちゃん、怖いニャ」


 と言う訳で、キャフ達は降下した。

 先ほどの集団がキャフ達を取り囲む。数はもっと増えた。

 どうやら仲間を召集したらしい。いかにも弱っちい集団だ。


「おっぱいのデカいお姉ちゃん、ちょっとどいてくれねえか。あんた達とは後で楽しみてえが、まずはあの貧相なオヤジに用があるんだ」


 その中で一番偉そうな冒険者が、前に出てミリナに言う。

 身長も高く、装備も上級クラスに見える。

 おそらく他の奴らは、こいつの威光を借りて威張ってるのだろう。

 ミリナに直ぐ手をかけないだけマシだが、いずれにせよクズのリーダーだ。


 嫌らしい目線をかける冒険者共を一瞥しながら、ミリナはおもむろに術式を唱えた。


獣化(ミューテーション)!!」


 すると一面に煙が朦々と、立ち込める。

 その煙が消え去ると怪しい集団の姿はいなくなり、衣装や装備が捨てられている、だけだった。


「何をしたんだ? 消したのか?」


 キャフ達が驚いていると、脱ぎ捨てられた衣装の中で、何かがモゾモゾと動いている。ブヒブヒ言いながら出てきたのは、子豚達だ。戸惑った表情でお互い喧嘩をし始めるのは、さっきまで冒険者だった奴ららしい。ミリナの顔を見て怯えている。


「魔導書を読んでたんですけど、魔法協会の術式の組み合わせで上手くできました♡」


 さっきまで冒険者だった奴らはブーブー何かを言ってるが、子豚になったので何もできない。


「さ、先を急ぎましょ」


 ミリナは平然として歩き始めた。3人も後に続く。

 キャフも(逆らわんとこ)と思いながら、4人について行った。

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