表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔法を使えない魔導師に代わって、弟子が大活躍するかも知れない  作者: 森月麗文 (Az)
第十四章 魔導師キャフ、最恐兵器を手に入れる
205/231

第205話 復興中のモドナ

前回のあらすじ


サローヌに立ち寄って、リラックス。

「本当にクムール帝国に行くのか?」


 モドナに向かうサローヌ軍馬車の中で、フィカはキャフに聞いた。

 特別待遇をしてもらい、馬車の客車には5人しかいない。


「ああ、そのつもりだが。何故だ?」

「またルーラ女王に迷惑がかかるんじゃないのか?」

「あ、そうかもな……」

「師匠、もしかして気付いてなかったニャ?」

「いや、考えてはいたさ」


 キャフもその点は分かっていた。

 以前の講和条件に、自分の無断越境が含まれていたのだ。

 今回の作戦が失敗したらこじれる可能性は十分にある。


「ただな、今更取り繕っていても仕方ねえだろ?」


 キャフは、現状を認識していた。

 アルジェオン国内をまとめて反撃するのは、非常に厳しい。

 第一、今のキャフに国民全体に訴えかける術は無い。


 仮にルーラ女王を説得したとして、そもそもクムールに抗う気のないリル皇子一派を懐柔するのは、努力するだけ無駄だろう。彼らが権力の中枢を握った今、できることは少ない。そうすると隠密に乗り込んで使命を果たす方が、チャンスはある。


「師匠、開き直ってるニャ」

「中年の開き直りって、ちょっと怖いんですけど。犯罪に走らないでくださいね」

「変な物、持っていくなよ」

「誰がやるか!」


 キレ気味に言うキャフを4人は笑っていた。

 

「……お前達を巻き込んで悪いと思ってる。オレ達が二十年前にドラゴン征伐をしなければ、こうはならなかったかも知れないからな」

「何言ってんですか? あの腹黒BBAは、別な人を捕まえて同じこと絶対やりますよ」

「……そうかな」

「当たり前ですニャ」

「ここまで来たら、一蓮托生だ。気にすんな」


 シェスカさんを悪し様に言われると、それはそれで複雑な気分になる。

 だが4人ともやる気だと分かり、キャフは安心した。


「そう言えばお前ら、《雷の方舟》は今どこにあると思う?」


 話のついでに、キャフは気になることを4人に伝えた。


「あ、……」


 4人は顔を見合わせ、キャフの意図を理解する。


「ジジェスの映像では、何処にも映っていなかった。あんなデカいのに、だ。まずはあれを見つけるのが先決だ。向こうが教えてくれる訳もないし、オレ達だけで探し出すしかないだろう」

「確かにそうだな」

「おびき出すとか、できれば良いんですけどニャ……」 



「キャフ殿、もう直ぐ到着です」


 御者が声をかけてきた。

 窓はないので、後部から外の景色を見た。


「やっぱり、綺麗だニャ〜」

「あんな事が無ければ、もっと楽しんで来れたのにな」

「思ったよりは、復興しているな」


 馬車は、サローヌ部隊の駐屯地に到着する。

 街外れの広場を改装して、簡易型の建物が建てられていた。


 数ヶ月経ち、モドナも混乱が少しは収まったようだ。

 それでも、未だ真っ黒に焦げた焼け跡が残っている。

 沢山の瓦礫は撤去中だし、家もあちこちが普請中だ。


 だが道路は整備され、何より人々に活気が戻っている。


「私達は、どうするんだ?」

「まずはサローヌ軍の一員として警備活動を手伝おう。その間に冒険者ギルド辺りを探索し、行く機会を伺う」

「でもあの辺、かなり崩れたんじゃないのか?」

「そうだな、まずは行ってみないと分からんな」

「了解だ」


 復興が進んだとはいっても、未だ観光業は難しい。

 人々もまずは土木工事に精を出し、全てはそこからといった感じだ。

 日差しも強く今の時期なら海で遊びたいだろうが、皆一所懸命に働いている。


 今回、キャフ達5人はサローヌ自治軍属になる。ここには第七師団を始め、他の軍もモドナに駐留していた。犯罪の取締りは勿論、孤児たちや怪我人たちの世話、炊き出しなど、手伝うことは山ほどある。病院や避難所にも顔を出し、精力的に活動した。



 数日が経った。


「そろそろ、冒険者ギルドの方まで行ってくるか」

「了解だ」


 サローヌの部隊長に相談したら、直ぐ快諾してもらえた。

 簡単な冒険者スタイルで、武器は最小限にして出かける。

 東側まで馬車もまだ通っておらず、徒歩での移動となった。

 

「やっぱりこの辺は、以前と全く違いますね」

「あれが地上に出てきた場所だからな。地形が変わってて当然だ」


 浜辺に向けて、大きくえぐられた窪みができていた。

 傷跡のようにまだ痕跡が残っている。


 冒険者ギルドも崩れ落ちていたが一部改築され、人の出入りもあった。

 モンスター生息域を分け隔てる壁も、つぎはぎ状態で存在している。


「冒険者ギルド、やってるのかニャ?」

「どうも、そのようだな」


 試しに中に入ってみると、受付嬢がいた。

 相変わらずタバコ臭く、前より少ないが冒険者らしき面々がいる。

 キャフ達の顔をチラッと見るものの、誰も興味がなさそうだった。


「いらっしゃいませ」

「冒険者ギルドはやっているのか?」

「はい。以前とは規模が違いますが魔石の換金はできるので、モンスター生息域に向かう冒険者はいますよ」

「そうなのか。何か資格はあるのか?」

「いえ、ここに名前を書いていただければ誰でもできます。この前の爆発で戸籍証明も出来なくなったから、偽名も多いんですけどね」

「まあ元々そんな奴らばっかりだけどな」


 そうなると、やる事は単純になる。

 帰り道、5人で今後の相談をした。


「荷物はあまり持っていけないな。怪しまれる」

「船はどうする?」

「いや、今回は必要ないだろう。オレとミリナの浮遊魔法で何とかなる」

「一度行っているから、地理も分かりますしね」

「じゃあ、明日行くか」


 帰宅後サローヌの部隊長に経緯を説明し、承諾を得る。


 翌日、今度はフル装備で再び冒険者ギルドに向かった。


「いらっしゃいませ」

「冒険者として、モンスター生息域に行きたいんだが」

「分かりました。こちらに記入をして下さい。今は地図も当てにならないし、ランク測定機もありません。お客様のランクがどれぐらいか存じませんが、全て自己責任でお願いします」

「ああ、分かった」


 下手に高ランクだとバレて、他の冒険者から注目されるよりマシだ。


「ご記入ありがとうございました。では行ってらっしゃいませ」


 こうしてキャフ達は、久しぶりにモンスター生息域(ハビタブル・ゾーン)へと向かった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ