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魔法を使えない魔導師に代わって、弟子が大活躍するかも知れない  作者: 森月麗文 (Az)
第十四章 魔導師キャフ、最恐兵器を手に入れる
200/231

第200話 エルフの王

前回のあらすじ


え? カ○ル君?

「はじめまして、ホワイトドラゴンです。仲間のアースドラゴンが世話になったようですね」

アースドラゴン(皇子)を知っているのか?」


 アースドラゴン(皇子)より二回りは大きなホワイトドラゴンの挨拶に、キャフ達5人は驚いた。さっきのデルダもだが、地上からずっと離れたこの地にキャフ達の存在が知れ渡っているとは予想していなかった。


「もしかして、私達って有名人?」

「まあ、そうかな。僕たちドラゴンは世界の管理や裁定を行う情報共有思念体だから、お互いの体験を共有できるんですよ。だから転生できるのも僕たちだけなんです」

「そうニャんだ〜」

「へえ」


 ドラゴンの言葉は意味不明だが、何となく納得したふりをする。


「あいつが迷惑をかけたようで、すいません。大丈夫でしたか?」

「? ああ確かに皇子(アースドラゴン)のせいで牢屋にぶち込まれたんだった。でもかなり助けてもらったし、トントンだな」


 牢獄体験は最悪だったけれど、彼が数多の場面で役だったのも事実だ。彼がいなかったら、ここまで辿り着けなかっただろう。


「そうですか。私たちドラゴン族の中で彼は赤ん坊のような存在ですからね、時々ヤンチャをするんで困ってるんですよ。これからも仲良くしてあげてください。じゃあジジェス様の館に送りますので、背中に乗って下さい」


 ホワイトドラゴンに促され、5人はドラゴンの背中に上った。皮膚のゴツゴツはアースドラゴン(皇子)の背中と似ているから、同じ要領でしっかり掴んで乗り込む。キアナだけ初体験なので、乗り方や姿勢をフィカから教わった。


「じゃあ、行きますよ〜」

「お気をつけて」

「デルダさん、ありがとうございました〜」


 デルダやモンスター達への挨拶を終えると、ホワイトドラゴンは大きく羽ばたき空へ飛び立った。



「ひゃあ、絶景だ〜」

「上にも下にも、山があるニャ〜」

「風も、気持ちいいな」


 大きな背中のホワイトドラゴンでの飛行は、皇子(アースドラゴン)の時よりも快適であった。


「どうせだから、ジジェス様の所に行く前に、観光しますか」

「そうだな、何度も来れる場所じゃないしな」


 ホワイトドラゴンは気ままに船内を飛び、5人は不思議な光景の旅を楽しむ。

 デルダが住んでいるような人工物は少なく、大半が緑豊かな自然だ。


 森や草原に加え、川や池や海にも沢山のモンスター達が住み遊んでいる。

 諍いや争い事は彼らと無縁のようだった。


 ドラゴンに乗る5人を見ると、彼らは歓待の意味を込め手を振ってくれた。

 5人も手を振り返す。


「此処にいるモンスターはみんな仲が良いのか?」


 キャフは気になって、ドラゴンに聞いた。

 地上ではモンスター同士でも争いは絶えない。

 どのモンスターも仲睦まじい姿を見て疑問に感じた。


「はい、そうですね」

「何でなんだ?」

「何でって…… なぜ争う必要があるのですか?」


 そう言われると、キャフは答えに窮する。


「嫌な奴とか、相性が合わない奴とか、世の中には普通にいるだろう?」

「僕たちは元々あの星にいたのです。でも大昔に、全世界を巻き込んだ大戦争を人間達が引き起こしました。それで種の絶滅の危機に陥ったのです。人間のせいで僕達まで居なくなったら、たまったものじゃないですよね?」

「あ、ああ……」

「だから、この星船を作って移住したんです。言っちゃ悪いですが、人間だけ置いてきたおかげで全てが順風満帆ですよ」


 そう言われると5人は立つ瀬がない。ホワイトドラゴンも言い過ぎたと思ったのか「あ、皆さんは別ですよ」とフォローを入れるものの、5人の複雑な心境に変わりはなかった。


「じゃあそろそろ、目的のジジェス様の館に行きますか」


 船内をほぼ一周した後ホワイトドラゴンは言った。


「どこなんだ?」

「あそこの、一番重力の小さい領域に浮かんでいる星の中です」


 ドラゴンがそう言って向かう先には、確かに黒い星が浮かんでいた。

 この船内では場違いみたいに、禍々しい黒色である。


「デス・○ターみたいですニャ」

 

 ラドルの感想には何も答えず、ホワイトドラゴンは中へと入って行った。

 ホワイトドラゴンがトカゲに見えるぐらい、巨大な建造物だ。


「じゃあ、僕はここで。帰る時はこの笛で呼んでください」


 ホワイトドラゴンが何かを念じると、キャフの前に小さな笛が現れたので、キャフはそれを受け取った。


「分かった」

「では」


 再びホワイトドラゴンは羽を広げ、大きく羽ばたいて去って行った。

 

「どうしたもんかな」


 5人のいる場所には何の扉もない。

 調べてもボタンらしき物も無く、途方に暮れる。


 するとスピーカーから声が聞こえてきた。


『ようこそ、皆さん。この扉から入って』


 すると側にあった壁の一部が動いて扉が現れ、自動で開いた。

 5人は奥に進む。デルダの宮殿と異なり、無機質な廊下が続く。


「いよいよですね♡」

「いよいよですニャ♡」


 かなり長い廊下の突き当たりには、広い部屋があった。

 天井は高く、窓からはこの星の風景が眺められる。


 そして窓際の方に男が一人いた。


「改めて、ようこそ《(そら)星船(ほしぶね)》へ。僕がジジェスだよ」


 背はラドル達より低い。その顔は予想外に貧相であった。

 現代世界で言うならば、ビル・○イツに似た雰囲気だ。


「え……」

「ふニャ……」


 2人は今までの期待がエベレスト並みに高かった分、奈落の底まで落とされたようにがっかりした顔をしている。その顔に感づかないジジェスではなかった。


「あ、君ら僕のことブサイクだと思ったでしょ?」

「え? いえ、そんな事はありませーん」

「い、イケメンですニャ。ほんとですニャ」


 図星をつかれた2人は、慌てて否定するが、自白しているも同然だ。

 だがジジェスは、怒ったそぶりを微塵も見せなかった。


「良いよ、僕だって自分の器量ぐらい分かってるから」

「あ、そうですか」


 露骨にホッとした顔をするとは、つくづく失礼な2人である。


「けどね、僕の果たした役割も結構大きかったんだよ? 僕が世に出るまでの世界は、トラ○プみたいなイケメンマッチョ白人が理想で、ひ弱は悪だった。スクールカーストでも最下層さ。僕が世界一のお金持ちになったから、世界のヲタク達は夢を持てるようになったんだよ」

「へえ、そうなんですか……」


 まだ若いラドルとミリナには、ジジェスの言葉が今一つ響かないようだ。


「まあ僕も、危ない橋を渡ってきたけどね。CP/MをパクったQ○OSを買い取ったおかげで今の僕があるのさ。それからはライバル企業を潰しまくって、僕たちの会社は常にナンバーワン。妻の助言で早めに引退して慈善活動に精を出したから、誰も文句は言わなくなったよ。大金持ちの殆どはそんなもんさ」


「そうか。エルフの王と見込んで頼みがある。オレ達に《(いかずち)方舟(はこぶね)》を倒せる武器を、授けてくれないか」


 キャフは余計な話に脇目も振らず、本題に入った。

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