第020話 ダンジョンの入口
前回のあらすじ
眼鏡っ娘の魔法使い、かなりデキる。
「そうそう、マジでやべー宝物ありそうなんだけど!」
「行ったのか?」
「マダっすよ。流石にヤバそうだし。入口見たぐらいっす」
酔っ払っているから、話が正確じゃないのは仕方ない。ただどうやらこの近くにある丘の下に、ダンジョンの入口となった裂け目があるらしい。
この辺りにやって来る冒険者は殆どおらず、しかも4人(おそらく3人)で入口を隠したから、誰も入ってないはずだと言う。
「聖剣あったら、もらっちゃう?」
「わたしは宝玉がいいな〜」
「どっちにしてもレベルアップ間違い無し! これ、いい波きてるよ! 絶対Aランクの大学入れるよ!」
3人は既にクリアした気でいる。酒をちびちびやってほろ酔い加減のキャフは、ちょっとまずいなと感じていた。確かに、若さと勢いで切り抜けられるときもある。だがそれで失敗したパーティーをキャフは過去に何度も見ていた。
彼の父であるギムはその点堅実なタイプだ。キャフ自身、彼の機転に何度も救われたことがある。だがここにいる息子は冒険も旅行気分らしい。高校生だからまだ怖いもの知らずなんだろう。
「で、おっさん達も、どう? 一緒に行く?」
シドムが、キャフに誘いをかけた。さっきの戦いで使えると思ったようだ。
それに、フィカとラドルを連れて行きたそうに見える。特に剣士だからか、男2人はフィカにからんでいる。その側でアーネが少し睨みつけているのは、ご愛嬌か。
「いや……」
キャフは、内心断る気であった。ここで離脱しても彼らは気にしないだろう。
それに私服姿と今の装備で冒険したら、自分の身が大丈夫かも分からない。ダンジョンは暗闇であるし、こんな貧弱な靴では滑りやすくて心もとない。年の功で何とかなるかもしれないが、不安だ。
だが子供達の危なっかしい様子を見ると、見捨てておけなかった。
「どうする?」
試しに、フィカに聞いた。
「わたしはどちらでも。旧道が通行止めになった今、捜索隊に急いで戻る必要もない」
「お前は?」
「師匠がいいなら、良いニャ」
「もう夜になっちゃうしさ、じゃあ試しに見に行かない?」
シドムは乗り気だ。彼の言う通り、日も傾き始めている。このまま旧道を目指しても野宿は必須になりそうだ。あらかた肉も食い終えたし、とりあえず行ってみよう。その場でどうするか考えても遅くはない。少なくともアドバイスでもしておけば、彼らだけでやれるかもしれない。
「じゃあ、行くか」
そう言う訳で後片付けを済ませると、出発することにした。
暇なんだからと軽い気持ちで付いて行ったが、意外に遠かった。
「ここだよ!」
彼らが指差したのは、確かに小高い丘だ。ただこの隆起自体が最近にも思える。ミリナをのぞいた3人は入口らしき場所を探し出し、偽装していた木や草をどかした。
そこに現れたのは、確かにダンジョンへの入口であった。
洞窟のようだ。暫く内部を進まないと様子は何も見えない。
「じゃ、行こうぜ!」
シドムは気楽に中へと入って行った。後の3人も続く。
「オレ達も行くか」
「ああ」
「ニャ」
こうして7人は、ダンジョンへと侵入した。