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魔法を使えない魔導師に代わって、弟子が大活躍するかも知れない  作者: 森月麗文 (Az)
第十四章 魔導師キャフ、最恐兵器を手に入れる
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第198話 優しい世界

前回のあらすじ


こ、ここはスペースコロニー?

「お花がいっぱいニャ〜!!」

「いい匂いで綺麗だな!」

「ここで休みますか?」

「来てみろ、寝転ぶと気持ちいいぜ〜」

「ほんとだニャ〜」


 扉から目と鼻の先にあった花畑を見ると、3人は駆け出した。ラドル達は童心に帰ったように花を摘み、はしゃぎ始める。色とりどりの花は良い薫りがして、見たことの無い珍しい花もあった。花畑の先には森が見える。


 一方キャフとフィカは、事の成り行きを黙ってみていた。


(エルフの王は出てこないのか……)


 それに加え、周りの風景が気になる。


(空が、ない)


 見上げると青空はなく、反対側もキャフたちのいる場所と似た森や草原、山や湖が広がっていた。巨大な力で船全体が回転しているから、キャフ達が浮くことはない。間に海があるので、あっち側には浮遊魔法か別の手段で行くしか無さそうだ。


 昼間と同じくらい明るいが、夜になるのかも分からない。

 フィカも気付いたようだ。


「私達の知る世界とは大分違うな」

「ああ」


 さっきの音声から、恐らくエルフの王か誰かがいるのは確実だ。

 だがそれ以外の情報が全くない。


 浮遊魔法で一帯を探索するのも良いが、リスクが高い。


「あの森の中に行ってみたいが、お前も来てくれないか?」

「分かった」


 3人にはそこで待つように伝え、キャフとフィカは森の中へと歩いて行った。

 獣道のように細い道だけで、人がいる形跡はない。


 魔法杖で簡単な魔法の発動を試みるが、正常に使えるらしい。

 フィカも剣を握りしめ、不測の事態に備える。


 ザザッ!!


 側の茂みで、何かが動く音がする。警戒して立ち止まると、ピョンと出てきた姿は、人食いウサギ(ヴォーパルバニー)だった。数匹いる。先手を打って術式を唱え始めたキャフだが、彼らの態度にキャフは戸惑った。


「キャフ、攻撃は止めろ。こいつらに敵意はない」

「ああ、そのようだな」


 2人が悟ったように、その人食いウサギ(ヴォーパルバニー)は、キャフ達を攻撃する気が全然ない。むしろ、仲間の一人のように擦り寄ってくる。こうなると単なるウサギであるから、愛嬌もあって可愛く見えた。


 不思議に思いつつ森の奥へ進んでいくと、様々なモンスター達が木の影から出てきた。灰色狼(グレイ・ウルフ)や、殺人熊(スレイ・ベアー)凶暴猿(キラーエイプ)魔獣亀(デス・タートル)、などなど…… いずれも、激しい戦いをしてきたモンスター達だが、キャフ達を見ても襲ってこない。生活に満足しているのか、それぞれの顔も温和で気が抜けている。


「何か、拍子抜けするな」

「ああ」


 それ以上の収穫もないので花畑に戻ると、3人は寝そべっていた。

 空がないことに気付いたらしい。


「師匠、ここ凄いですニャ!」

「不思議なところですね〜」

「ああ。だがオレ達は早くジジェスを探さないとな」

「あ、そうだったですニャ」


 目的を忘れていたようで、3人は慌てて飛び起きる。


「まあ、慌てなくていい。森に行ったが何も収穫なしだ」


 キャフの言葉に3人は安心する。

 それから5人で探索を始めるが、やはり目ぼしい発見は無かった。


「モンスターが可愛いだけですニャ」

「闘わなくて良いのは楽ですね」

「けど、張り合いねえよなあ〜」


 3人も、キャフやフィカと同じ印象のようだ。



 やがて薄暗くなってきた。夜はあるらしい。


 森にはキノコや山菜があったので、ミリナの指示に従い毒を避けて調理した。どれも美味しい。見知らぬ土地でもあり、自分たちが勝てない相手も出てくる可能性を考え、酒は控える。フクロウの鳴き声や夜行動物が歩く音が聞こえたがキャフ達のテントを襲ってくる気配はなく、5人は安眠した。


 翌日、快適な朝を迎える。


 森の更に奥を目指すが、エルフが住みそうな建物は見当たらなかった。


「どうします? 浮遊魔法を使ってみますか?」

「村の気配もないしな…… やってみるか」


 ミリナとキャフで、浮遊魔法の術式を作動させる。


 だが……


「できませんね?」

「使えねえのかも知れないな」


 これでは移動手段が徒歩に限られる。幸い食べられる植物があちこちにあるし水も問題なくあるから、旅をするのに不都合はない。ただ目的地が分からず、当てずっぽうで進むだけだった。


「けど、なんでモンスターが襲ってこないのかニャ?」

「もしかして水ですかね? ほら、腐海の植物もきれいな水で育てたら毒を出さないですから」

「いや、そんなナ○シカみたいな設定は無いと思うぞ」


 疑問はつきないものの、5人は数日旅を続けた。


 そろそろ限界か、という時だった。


「あ、何か建物があるぜ!」


 キアナの言う通り、森の中に忽然と真っ白い宮殿が現れた。

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