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魔法を使えない魔導師に代わって、弟子が大活躍するかも知れない  作者: 森月麗文 (Az)
第十四章 魔導師キャフ、最恐兵器を手に入れる
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第197話 宙の星船

前回のあらすじ


何か変な乗り物に、乗せられた!

「ぐおぉおおおーーー!!!!」

「きゃぁああああ〜〜〜!!!!」

「うわぁああああ〜〜〜!!!!」

「ふニャニャぁああ〜〜〜!!!」


 フィカ以外の4人は絶叫を上げながら、船は凄まじい勢いで飛んで行く。ワルフォロの警告通り、顔が潰れそうなくらい激しい圧力だ。この服じゃなければとても耐えられない。


 空中分解するかと思うほど、船は上下左右にガタガタ揺れる。

 振動はしばらく続いたが、やがて燃料が減り静かになり始めた。


 突然ゴンと音がして、機体が軽くなった。

 下に付いていた部分が外れたらしい。


 窓ガラス越しに見える風景は、あっという間に紺色の空から漆黒の宇宙へと変遷する。星は輝きを一層増す。


 船体も揺れが減って安定したからキャフたちも余裕が出て、通魔石で会話を始めた。


『エルフの王って、どんなかニャ?』

『きっとイケメンで背も高いんじゃないですか? なんてったってエルフの王ですから♡』

『あ、ミリナちゃん妄想全開だニャ』

『い、いや、それほどでも……じゅるり』

『でも、私もそう思うニャ♡』

『やっぱり! そうだよね〜』

『でもそんな奴に限って女に興味ないとかな』

『フィカさんも本の読みすぎですよ』


 皇子につれなくされたから、こっちに興味が移ったらしい。

 テンションが上がり始める2人であった。


『船ハ、無事軌道ニ乗リマシタ。ベルトヲ外シテモ結構デス。無重力ノ環境ヲオ楽シミ下サイ。空気ハアルカラ、ヘルメットヲ脱イデモ大丈夫デス』


 急にスピーカから自動音声がした。


「どういうことかニャ?」

「とりあえず、言われた通りにやってみるか」


 恐る恐るベルトを外すと、フワッと浮き上がった。


「うわ、宙に浮く!」

「そんな厨二病じゃあるまいし……ほんとニャ!!」

「へえ……イタ!!」

「すまん、キアナ」

「フィカ姐さん、これくらい大丈夫っす」

「師匠、変な格好だニャ!」

「しょうがねえだろ、こんなの初めてなんだ」

「キャフ師、みんな初めてですよ」


 思い思いに無重力状態を堪能するが、一度動くと止まらないのであちこちにぶつかった。ただみんな恐る恐るの行動だから、船が壊れるほどの激しい衝撃はない。時間をかけて、手すりの使い方や動き方をマスターし始める。


「泳げる、泳げる〜」

「慣れると楽だなこれ」


 やっとコツを掴んできた、その時だった。


「おい窓の外見てみろ! すげえぞ!」


 キアナが叫ぶのでみな窓の方に向かう。


 そこには今までの旅で見たどの景色よりも、感動的な光景があった。


「あれチグリット河か? そうするとあっちがアルジェオンで、そっちがクムール? 地図そっくりだな」

「他の大陸も見えますよ! 私達あんなところで生活してるんですね〜」

「こうやってみると、国境なんかどこにも描かれてないんだな……」

「海の方が広いんだニャ」

「あそこにあるの竜巻ですかね? 雲って、上から見ても面白い形してますね」


 感慨にふけり、じっと眺めていた。


『マモナク、《(そら)星船(ほしぶね)》ニ到着シマス。座席ニ座ッテベルトヲ締メテ下サイ』


 再び自動音声のガイダンスが流れる。キャフたちは苦労しながらも、座席についた。


「《(そら)星船(ほしぶね)》ってなんだ?」

「さあ」


 キャフは、先ほどの言葉が引っかかっていた。


「いよいよ、エルフの王ですニャ。何をくれるのか楽しみですニャ〜」

「私は時間を止める能力が欲しいです」

「自分は過去に戻れる能力が良いな。それであのババアが子供の時に殺しちまおうぜ」

「いや、そうなったら、オレが魔導師になれねえ」

「じゃあ何が良いんだよ〜」

「念じた相手を、即死させるとか」

「チート過ぎますよ、キャフ師」

 

 まるで観光気分のように4人がはしゃぐ。

 キャフも、止めようとは思わなかった。


(どうせ何が出てくるか分かんねえんだ、対処のしようがねえ……)


 念のため魔法杖は起動可能にしてある。

 それくらいの準備が関の山であった。


 やがて5人を載せた船は角度が水平に近く。

 だがしばらくは、目的地らしき物体は見えてこなかった。


「もしかして……あれ?」

「そ、そうニャんか?」


 2人に限らず眼前に迫る物体に5人は驚愕し、戦慄した。


 とにかく大きいドーナツ型の船で、5人の乗る船がゴマ粒みたいだ。ちょうど月とキャフ達が住む星の間に位置し、目に見えるぐらいの速さで回転している。


 止まっている中央部の下が開く。どうやら入り口らしい。

 自動操縦で誘導されて、船は吸い込まれるように中へ入った。


「ふニャ〜 予想外すぎてびっくりニャ。こんな大きいのが空にあったんだニャ」


『《(そら)星船(ほしぶね)》ニ、ヨウコソ。歓迎シマス』


 入り口が閉まり、船が着地する。5人は警戒しながら様子を窺った。


『もう、大丈夫。扉を開けて。五ブロック先からは空気があるから、そこでこの服を脱いでも良いよ』


 スピーカーから流れた声は、さっきまでの自動音声とは違う。人の声だ。


「もしかして、今のがエルフの王? イケボですニャ!」

「そうかも知れませんね!」


 2人は少し舞い上がっているようだ。ベルトを外すと、今度は宙を舞うようなことはなかった。ただ重力は弱く、反動で浮きやすい。ゆっくり地に足つけながら出口らしき場所に向かうと、自動扉が開く。


 その先は何もない小さな部屋だった。反対側に扉がある。同じように四つほど部屋を入っていくにつれ、地上と変わらぬ重力と空気の濃さになってきた。最後の部屋には更衣室があったので服を脱ぎ、いつもの衣装に着替える。


 初夏みたいに快適な暑さなので軽装にした。

 準備を終えてワルフォロがくれた食糧も持ち、いよいよ最後の扉を開ける。


「うわぁああ!!」

「私達、どこに来たんですか?」

「ひゃっほう! 楽しそうだニャ!!」

「おいキャフ、これは何なんだ?」

「オレに聞くな」


 そこには、まるでアルジェオンのように豊かな自然が広がっていた。

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