表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
194/231

第194話 デュダリオーン

前回のあらすじ


世界樹の中、こうなってるんだ……

「ねえねえ、そのデュダリオーンさんて、どんな人ニャンか?」

「そうですよ、教えてくださいよ。熱い刀工房にこもってひたすら鉄を打つ、ガチムチのいかつい鍛冶師なんですか? もしかしてゲ○?」


 ディッドが示した横道を通っている時、ラドルとミリナは思って当然の質問をした。


「いや、全然ガチムチじゃないが。うーん、確かに高炉や刀工房はあるけど、それだけじゃねえな」

「何なんだよ?」


 キアナも気になるらしい。


「いろんな機械の設計もしてるんだ。村の周辺には良く分からん武器や装置があった」


「マドレーさんみたいなもんですか?」

「そうだな。あいつも来たら喜んだろうな」


 こんな話をしているうちに、さっきと同様突き当たりに煙突みたいな縦穴が現れた。見上げたが、光が漏れてこない。やはり蓋がされているのだろう。幸い梯子も付いていた。


「お、これを上がれば良いんですね。じゃあ行きましょうか?」


 そう言ってミリナが梯子に手をかけようとした時、キャフが押し留めた。


「ちょっと待て。最初はオレだけで行く」


 キャフは不安であった。こんな簡単に行けるとは思えない。

 蓋を開けた先には、何かトラップがあるような予感がする。


「気を付けろよ」

「ああ」


 キャフは、1人で梯子を登った。真っ暗だが梯子は丈夫そうで問題ない。時折止まって周辺の音にも注意するも、巨大モンスターが俳諧しているような足音は聞こえなかった。


 やがててっぺんに辿り着く。予想通り蓋がされていた。

 試しに押してみるとわずかに動く。


(力を入れれば、開きそうだな……)


 更に力を込めて蓋を外した。ゴトっと音がする。

 両手で静かに持ち上げて、外の様子を伺う。


(大丈夫、かな……)


 キャフが油断しかけたその時、遠くで何かが光り、すごい速さで飛んできた。

 思わず蓋を手から離しもぐり込む。


 ガッガーーーン!!!


 キャフの直ぐ上で爆発がおこり、激しく揺れた衝撃で梯子からずり落ちる。幸運にも落下まではしなかった。


「大丈夫ですか〜?」


 ただならぬ様子が、下にも伝わったらしい。ミリナの声がする。


「ああ、大丈夫だ」


(けど、外に出るのはヤベえな……)


 対策を練るために、再びキャフは梯子を降りて行った。

 4人とも心配そうにしている。


「どうなんだ? 出られるのか?」


 フィカが、聞く。


「何かがいる。凄い速さで砲弾を撃ってきた」

「どうするニャ?」


防御魔法(バリア)を使って行くしかないだろう。まずオレが出ていく。後から付いてこい」

「飛び道具なら、自分が二番手になるかい?」

「そうだな、キアナ。頼む」


 5人で梯子を上る。

 さっき蓋を開けたせいか、今度は外で何かが動く音がする。


「出たら、一気に行くからな」

「あいよ」

「了解だ」

「分かったニャ」

「私も防御魔法かけますので、安心してください」


 静かになったのを見計らい、さっきよりも力を込めて蓋をどかし、キャフは地上へ出た。

 やはりこの高さまで来ると、肌寒い。


 ヒューーン、


 さっきと同様、何か飛んでくる。素早く防御魔法(バリア)をかけて立ちあがった。


 ドッガーーーンン!!!


 防御魔法(バリア)に砲弾が直撃し、爆炎がキャフを包んだ。

 凄まじい威力だ。並の冒険者なら、一発であの世行きだろう。

 だが、キャフの防御魔法(バリア)は持ち堪えた。


 続いてキアナ、フィカと出てくる。


 そして再び砲弾が何発も飛んできて、派手に爆発する。


「ありゃ、何だ? 大砲に足が付いてるぞ?」


 キアナが驚くのも無理はなかった。そこで徘徊しているのは、大砲に四本足がついた真っ黒で無機質な機械であった。キャフ達をとらえるや、すぐに標準を合わせて砲弾が飛んでくる。十体以上いて次から次へとキャフ達目掛けて砲弾が飛び交い、攻撃を準備する間もなかった。防御魔法(バリア)が囲む範囲で、3人一緒に逃げる。


 やがてラドルとミリナも、外に出てきた。

 ミリナが防御魔法(バリア)をかけ、別行動になる。


 5人が格闘している場所は広い草原で、見晴らしが良い。

 機械大砲たちの向こうには、柵で囲まれた村らしきものがあった。


 見覚えがある高炉もあるから、デュダリオーンの村だろう。

 側には世界樹の幹が、更に上に向かって伸びている。


「キアナ、銃は撃てるか?」

「ああ、大丈夫だ。弾も十分ある」

「よし、俺が防御魔法を外すタイミングで撃ってくれ。ラドルも炎攻撃を頼むぞ」

「おっけー」

「分かったニャ」


 ……


 小一時間ほど経ったのち、ようやく機械大砲達の殲滅に成功する。


「ふー、何とかなった」

「で、どうすんだ?」

「あそこに村があるだろ? あれがデュダリオーンの村だ」

「じゃあ行くですニャ!」


 村の入り口に近づくと、キャフたちの荷物が無造作に置かれてあった。

 あの鷹がちゃんと届けてくれたらしい。


 入り口の扉には誰もいない。鍵もかかってないようだ。

 まず荷物をチェックし、寒いので防寒をしっかり準備した。


「じゃあ、開けてみるか?」

「ああ」


 キャフが先頭で開けてみると、そこには長身のエルフがいた。

 エルフらしく綺麗な顔だが、中性的な雰囲気をしている。

 羽織っている黒いマントが余計に性別を不明にさせた。


「思ってたのと違うニャンな?」

「予想以上に、美形ですね」


 ラドルとミリナが陰でコソコソ言う。


「デュダリオーンか?」


 見覚えのあるキャフが尋ねた。


「いかにも。お前は誰だ? 久々の侵入者が人間とはな」

「オレだ、魔法使いのキャフだ」


 キャフの言葉を聞いてデュダリオーンは驚き、目を見開いた。


「本当に、あのキャフか? お前、老けたな」

「人間だからな。それよりお願いがあるんだ。《雷の方舟》って知ってるか?」


 キャフは、単刀直入に尋ねる。


「《雷の方舟》? 懐かしい言葉だ。太古に我々の一族が創った作品だからな。もちろん知っている」

「オレ達の国があれに攻撃されて困ってるんだ。《小さな太陽》と呼んでる爆弾で、街が丸ごと一つ吹き飛んだ」

「《小さな太陽》? あれに搭載されている核爆弾か。まだ動くとはな。さすが我が先祖の作品だ」

「それで、こっちはいい迷惑してんだよ。何とかしてくれ。エルフの王ジジェスに会えと言われたんだが、行き方を知ってるか?」


 苛立つキャフを見ても、デュダリオーンは顔色一つ変えず冷静だった。


「まあ、ここではなんだ。お嬢様達もいることだし、温かいお茶でも飲もうか」


 そう言ってデュダリオーンは、5人を村の奥へと案内した。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ