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第193話 世界樹の中

前回のあらすじ


変な小さいエロじじいが出てきた!

「今度は、マンホールニャンか? さっきの土管みたいに、トラップじゃないニャンか?」


 草や枝をかき分けてディッドがマンホールの蓋を外そうとする最中、ラドルは疑いの眼差しで見ていた。さっき自分が引っ掛かったから無理もない。以前のキャフもそうだった。この世界樹はトラップばかりで、どれが正解か分からない。


「あんたら、あんな子供騙しのトラップに引っ掛かったのか。先行き不安じゃの」


 ディッドにからかわれ、ラドルは怒りを堪えて肩をわなわなと震わせていた。

 4人は、それをなだめる。


「本当に行けるのか? キャフ、中に入ったことはあるのか?」

「いや、あの時は外側から木や枝をつたって行ったから入ったことはない」

「大丈夫じゃ。わしゃこういう時は嘘は言わん」

「けど、オレ達の荷物はどうすんだ?」


 キャフが指摘するとおり、マンホールの蓋は狭く人1人が通るだけの広さだ。これでは荷物が入らない。5人とも一ヶ月は旅をできるように大きなリュックに荷物をたくさん詰めていた。この荷物を置き去りにするのはリスクが大きい。


「……仕方ないのお。ファルコを呼ぶか」


 ディッドが口笛を吹くと、しばらくして大きな鷹がやってきた。

 キャフ達より背丈は三倍以上あり、これなら5人の荷物も持ち運べそうだ。


「ほれ、爪に荷物を引っ掛けろ。宛先はデュダリオーンの住む村にしてやる」


 荷物タグ付きの首輪をファルコにかけ、再び口笛を吹く。

 するとファルコは大きな翼を広げ、バサバサと飛び立っていった。


「ほえ〜 凄いですニャ〜」


 5人とも、感心して眺めていた。


「ほら、開いたぞ。入ってくれ」


 その間に、ディッドはマンホールの中に入り込んでいた。

 5人もそれぞれ続く。

 最初は細く下に伸びる煙突みたいな筒だったが、下り切ると広い横道があった。


「はえ〜 中はこうなってるんだニャ。凄いですニャ〜」

「何だか光が星みたいで綺麗ですね」

「深海のようでもあるな」


 横道の終着点は、切り立った崖のような場所だ。

 5人が見惚れている先には、世界樹の内部の壁面がある。


 真っ暗な中に色とりどりの小さな光がきらめき、星やマリンスノーみたいだ。空洞は大きく、反対側の方まで見える場所もあった。


 キョロキョロと5人が辺りを見渡していると、急に白い何かが5人の眼前にフワッと現れ上へと上がって行った。びっくりしている間に、また別の白い何かが上がって行く。


「何ですかニャ?」

「オレも、見たことねえな」


「”魂”じゃよ」

「たましい?」


 思ってもない言葉に5人は驚く。


「ああ。死にゆく物たちの魂が、この世界樹の中で浄化されるのじゃ」

「天国に行くニャんか?」

「さあ。あいつらの行く先はわしたちも良く分からん」

「そんな話、聞いたことねえぞ」

「そりゃそうだ。教えてないからな。死んだらどこに行くかなんて、子供の頃しか考えないだろう?」

「……まあ、そうかも知れねえけどよ」


 キアナも、他の4人も釈然としなかった。だがディッドが説明する間も、白いふんわりした物は次々に上へとあがっていく。下から風が吹いているのか、そのスピードは早い。ふんわりとした物の大きさもまちまちだ。


「それは良いとして、じゃあオレ達はどうやって上に行くんだ?」

「同じじゃ。魂を運ぶあの風にわしらも乗るんじゃよ」


 ディッドの言葉に、さらに5人は驚く。


「え? あれ体重制限ないニャんか?」

「少なくとも、わしらは行き来に使っとるよ」

「あんたら小人だろ? 私達は違うぞ?」

「信用するかどうかはあんたら次第じゃ。そろそろいい風が来るぞ」


 そういうとディッドは大きくジャンプして宙に舞い、落下した。

 ビックリして下を覗き込む5人だが、やがて風に乗ってディッドは上がってきて、キャフたちをニコニコと見ながら上がっていった。


「ほら、早くせんと。わしは先に行くぞ」


 5人はそのまま見上げるが、どこまで行ったか分からないほど上ったようだ。


「どうする?」

「何かあったら蓄魔石(コミュ・ストーン)があるし、死ななきゃ大丈夫だろう」

「じゃあ、行ってみるニャンか?」

「念のため、みんなで手を繋ぎませんか?」

「そうだな」


 すぐ魔法を発動できるように、キャフが中央で両隣がミリナとラドル、両端がキアナとフィカにする。薄暗い闇の中めがけて走るのは怖いが、やるしかない。


「声かけるから、一、二、三で一斉に飛ぶぞ」

「はい」

「分かったニャ」

「了解」

「頼むぞ」


 下を覗き込むが、さっきの白いフワフワがチカチカ光ってるだけで、一番下の方は見えない。ここで終わるわけには行かない。キャフは深呼吸をして、決心した。


「よし! 一、二の三!」


 キャフの声と共に、5人がジャンプする。

 思惑とは逆に、そのまま垂直に落下していった。


「キャーーー!! 落ちます〜!!」

「ヤベえぞ、これ!!」

「風はある。黙って耐えろ!」


 5人の悲鳴が、空洞にこだまする。キャフの言葉通り、自然落下もしばらくすると止まり、今度は下から吹き上げる風の勢いに乗って、上昇し始めた。


「うひょーー!! こりゃすげえ!」

「良かったです〜」

「何とか、なりそうだな」


 スカイダイビングのように5人は手を繋ぎ、上昇していった。


「魂さん、こうして同じ速度で見ると、分かるですニャ」

「そうだな……」


 ラドルが指摘するように、さっき白いふんわりした物は、生前の形を少し残した半透明な魂だった。人間だったり、モンスターだったり、ありとあらゆる生物がいる。


「……私達も、いつかこの中に加わるんでしょうか」

「そうだな。オレ達が倒した奴らもいるんだろう」


 キャフはふと、弟子のグタフを思い浮かべた。


 世界樹内の旅はしばらく続く。


「お〜い」


 声がするので見上げると、壁にディッドの赤い三角帽子が見えた。

 風の勢いも弱まり、うまい具合にディッドのいる場所に手を掛ける。

 5人とも、無事に到着だ。

 魂たちは、もっと上って行くようだった。


「どうじゃったかい?」

「おっさん、楽しかったぜ!」


 キアナは満喫したらしい。


「それは良かった。この通路の先がデュダリオーン様の住む村じゃ。今は特に作製中の物もないし、事情を話せばジジェス様と会わせてもらえるかも知れん。ま、頑張るが良い」


 そう言い残してディッドは再び風に乗り、何処かへと去って行った。

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