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第187話 世界樹の入り口

前回のあらすじ


また化け物だ〜 オレがやれば、楽勝?

 キャフは魔法杖に魔素を込め、魔法を発動させた。

 強力な光がキャフを包む。


雷撃矢(サンダー・アロー)!!」


 魔法杖から出された無数の光の矢が化け物に突き刺さったかに、見えた。


「な、何だ?!」


 だが、矢は化け物表面の魔石に接触すると分散され雲散霧消する。

 これでは幾ら命中しても全然ダメージを与えられない。


 ギャオオオォオオ!!!


 化け物が雄叫びをあげると幾本もの触手が伸び、ミリナに加えてキャフ達にも襲い掛かる。そのスピードは目にも止まらぬ速さで触手は周辺のゴミの山にも衝突し、ガラクタがキャフ達目掛けて吹っ飛んでくる。


 キャフ達はバリアをかけつつ後退した。


「何とかならないんですか? イキり師匠?」

「すまん、あれじゃ無理だ」


 久しぶりにミリナから挑発されても、キャフにはなす術が無かった。


 魔法は発動できるが、あんな形で吸収されると効果がない。フィカの剣さばきでも、あの素早い触手の懐にもぐりこむのは不可能だろう。


 しかも化け物は触手攻撃だけでなく、身の回りにあるガラクタを融合させて更に巨大化していった。あっという間に10mほどの高さになる。ギシギシと歪んだ金属音が辺りに響く。


「おい、どうすんだ、これ?」


 退却し続けて、いつの間にか馬車のある場所まで戻ってしまった。待機中のキアナも化け物の姿に驚き、キャフに尋ねる。だがキャフにも有効な手段が思いつかなかった。


 防御をしつつ押し返す程度の攻撃しか繰り出せず、時間だけがもどかしく過ぎてゆく。魔素も消費し続け、このままでは負けそうな予感がする。


「そうだ、キアナさん、銃弾を貸してください」

「? はいよ」


 ミリナが何かを思いついたのか、キアナから銃弾を受け取るとしっかりと握って念じ始め、魔素を込めた。そして紫色に光る銃弾をキアナに渡す。


「これで、あそこにある一番大きな魔法石を撃って下さい」

「OK やってみるぜ」


 ミリナが指さしたのは、化け物の中心部にある一番大きな赤い魔法石だった。ミリナに従いキアナは銃を構え、銃身を化け物に向ける。化け物の動きは激しいが、魔法使い3人で攻撃を凌ぎ時間を稼ぐと、上手いタイミングでキアナが銃をぶっ放した。


 ダダッーーーン!!!


 キアナが放った銃弾は見事赤い魔法石に命中し、魔法石は粉々に砕け散った。すると今まで強固に巨大な化け物だったモノはバラバラとあっけなく崩れ始め、大きな塊がドスンドスンと落下しくる。怪我をしないようにミリナとキャフがバリアを発動させ、馬車と3人を守りつつどうなるか見守った。


 崩壊し尽くした後には、ガラクタの山が大量に出来上がっていた。


「ふう、何とかやっつけたな。お前、何したんだ?」

解除魔法(アンロック)を銃弾に込めたんです。初めて試したけどうまくいって良かったです。じゃあ、また石探しをしてきます〜」


 ミリナは現金なもので、再びガラクタの山の中に入って行った。


 今度はキャフやラドルに加え、キアナも援護で入る。ガラクタの中には何かの腕だったり、車輪だったり、翼らしきものもある。どの金属加工も今はすっかり錆びてボロボロに曲がっているが、元は精密な機械であったと思わせる物ばかりであった。


「一杯ありました!」


 夕方、石やガラクタを沢山持ってきて満足顔で戻ってきたミリナも交え夕食にする。廃棄物の臭いがキツくて慣れないから、一度森に戻って寝ることにした。


「これがあるから行くの面倒なんだよな……」


 キャフが愚痴るが仕方ない。

 3人の魔法杖の強化を確認し、その日は眠りにつく。


 翌朝、今度はガラクタ置き場を止まらずに通り抜けることにする。途中で昨日と似た姿の守護兵が再び襲ってきたが、今度は予め銃弾にミリナの解除魔法(アンロック)を込めていたのでキアナの銃を使い効率的に倒せた。


 そうしてガラクタ置き場を越えると、何もない草原に出る。

 世界樹は更に大きくなった。


「凄いですね〜」

「だが、あと二、三日はかかるな」


 万全を期してここで一泊する。

 夜ガラクタ置き場を見渡したら、青白く光る箇所がぽつぽつと見えた。


「あれが《死の石》って呼ばれてるやつだ。触ると衰弱して気が触れるらしい」

「怖いですニャ……」


 鳥の声も遠く、しんとしている。

 あまり騒ぐ気にもなれず、静かに眠った。


 キャフの言葉の通り更に三日ほど旅を続けると、高い壁にぶち当たった。そして壁の中には世界樹が間近にそびえ立っていた。樹木で覆われている。


「こ、これが…… 世界樹?」


 フィカが思わず呻いたように、世界樹は、一本の巨大な木()()()()()()。沢山の木が立ち並ぶ内部には、超巨大な金属の塔が埋れている。本来はこの塔が存在し、長年の月日を経て、周辺に樹木が育ったらしい。ただその塔が死にかけているのは明らかであった。木の生命力は凄まじく、中には塔の内部から外へと突き破り、大きな枝を伸ばしている。


「世界樹って、木じゃ無いのか?」

「ああ。エルフは、《キドウエレベーター》とか言ってた。さっぱり分からん」

「とりあえず入り口を探して、早く中に入ろうぜ」


 キアナはそう言って馬に鞭を打ち、壁沿いに走って探索をし始めた。

 端がかすんで見えないほど大きい。


(ここは、あの時とは違う場所だな……)


 壁の雰囲気が違うので、キャフ達が昔の冒険で入った場所からはかなり離れているようだ。モンスターがいる様子もないから馬車の速度を遅くし、入口の場所を確かめる。


 モドナにあった壁と同様この壁もかなり高く、飛び越すのは難しい。

 試しに魔法で壁の上部を撃ってみると、バリアで跳ね返された。


(この辺は、昔と同じか……)


 記憶がおぼろげだから、勇者サムエル達と入った場所の方向は分からない。だがしばらく進んでいくと入口らしき箇所を見つけた。


「お、これが入り口か?」


 開けられた様子が無く、かなり砂埃に塗れている。馬車を止めて5人で砂を掘り出すと、そこには確かに扉があった。


 5人で力を込めて押したら、ギギィ〜と古い軋み音を立てつつも、ゆっくりと開く。トンネルのようで、先は暗くて見えない。


「入ってみるか?」

「ああ、行こう」


 キャフの判断で、馬車で壁の中に入る。思ったよりトンネルは長く真っ暗だ。しばらくして光が見えてきたので、馬車を急がせる。


「お、そろそろ光が見えてきた」

「やっと出られるニャ」


「あ、何かいるぞ!」


 こうして抜けた出口に待ち構えていたのは、キャフ達とそっくりな5人だった。

 ニヤニヤしながら、こちらを見ている。


「な、何だ? こりゃ?」

「鏡か?」


 フィカがそう言った時、彼ら5人は色が黒ずみ始め、こちらに向かってきた。


「鏡じゃねえな、ドッペルゲンガーか……」

「可愛く無いし、気持ち悪いニャ!」


 鏡像の5人と同じく現実の5人も戦闘態勢に入る。

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