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第018話 和解

前回のあらすじ


え、またオレ追放される?

あ、ワームだ。これヤバいやつ!

「うわー!!」

「きゃー!」

「うぉおーー!」


 剣は不可と言われ、3人はすっかり慌てふためいている。キャフは昔取った杵柄で、次々と飛んで来るワームを器用にそらす。


「とにかく吸い付かれないように、気をつけろ!」


 しかし3人を見ていると、さっきまで見せていた統率力が全くない。てんでバラバラで、あれで剣を持ったら同士討ちもあり得る。とにかく危なっかしい。人食いウサギ(ヴォーパルバニー)の時となんで違うのか不思議だが、ここは助けてやるかとキャフは思った。


「あんた、魔法使えるんだろ? ワームの口目がけて打ち込め!」


 ワームが中に入らないよう必死にミニスカートの裾を抑える女の子の魔法使いに、キャフは指示を出した。


「え、あれの口ん中?」

「そうだ。そうすれば再生しないぐらいに飛散する」

「え〜 キモいんだけど〜!!」


 彼女は嫌がりながらも、背に腹はかえられないと、ワームの口近くに杖を寄せ攻撃魔法を発動した。風の魔法だ。口から猛風を吸い込んだワームは風船みたいにふくらみ、パンッ! と弾け飛んだ。


「あ、これイケる!」


 少女は要領を得たのか、次々にワームを倒して行った。パンッ、パンッと風船が弾けるような乾いた音が続き、やがて無事全滅した。飛散したワームの死体は魔法石を残すだけであった。3人とも、回収に励む。


「いや〜 おっさん、サンキュー。おかげで助かったよ!」


 ギムの息子は急に態度を変えて馴れ馴れしくなる。


 他の2人もキャフのアドバイスで危機を乗り切れたせいか、キャフを尊敬の入った目で見るようになった。



「すいませ〜ん、遅くなりました〜 近くに池とか川が無くって……」


 ようやく3人が一通り片付けた頃、眼鏡っ娘魔法使いとラドルにフィカが戻って来た。兇暴だったウサギ達は、すっかり肉片だけとなっている。焼いて食べたら美味しそうだ。


「何やってたのよ、ミリナ! うちら死にそうだったのよ!」


 もう1人の魔法使いが、ミリナと言うらしい眼鏡っ娘にキレていた。


「え? そうだったの? ごめんなさい……」


 眼鏡っ娘は、神妙な面持ちで3人に謝っている。

 どうも、スクールカーストと実力は逆のようだ。


「ホント全く。お前の魔法石の指示がねえと、フォーメーション全然組めないんだからな」

()()()()()()?」


 キャフはその言葉に引っかかって、思わず聞き返した。


「おうよ。こいつの発明なんだけど、石をこうやって肌にくっ付けておけば、彼女の言葉が皆に伝わんだよ。すげえだろ?」


 そう言って、ギムの息子は左腕の甲冑を少し上げた。そこには腕時計みたいに巻かれた布と蒼い魔法石があった。他の2人も同じように腕まくりすると、同じ色と形の魔法石を持っていた。


「何だ、それ?」


 キャフは初めて見る魔法石の使い方に、驚いた。遠隔通信できる魔法石なんて、聞いたことがない。


「どうやってるんだ? え?」


 キャフは好奇心が勝り、眼鏡っ娘に思わず少しきつい口調で問いただした。


「え、あの……私達の村の山の中に、共鳴する石があって……小さい頃から遊んでいたんです。それで、これ使って電話が出来ないかなと思って試しに作ったら、出来ちゃったんです……」


 この世界での電話は、糸電話みたいな有線しか存在しない。相変わらず自信なさげに俯きながら話す彼女であったが、対照的にキャフは非常に興奮し、思わず彼女の肩を掴んでゆすった。


「すげえぞ、これ! あんた天才だ!!」

「えぇえ? そ、そうなんですか?」


 ぐらぐら揺さぶられながら話す彼女は、この素晴らしさが分かっていないようだ。おそらくさっきの人食いウサギ(ヴォーパルバニー)との戦闘も、彼女が指示をしていたのだろう。司令官としての役割も上手いが、それよりこの発明は色々と役に立つ。


「まあ師匠、ウサギの焼き肉が出来たから、食べようニャ!」

「お、そうだな」


 すっかり上機嫌になった6人は、そのままウサギ肉のバーベキューを始めた。


「これ、オヤジの部屋からとってきたんだ!」


 もう1人の男がそう言ってバッグから取り出して来た物は、明らかに酒だ。


「オレもオレも!」

「わたしも!」


 みるみるお酒が出て来る。

 キャフ達もオーク村から食器をもらっていたので、コップは全員分あった。


 あまり気にしてなかったが、改めてパーティーを組む4人を見ると、どう見ても高校生だ。下手すると中学生かもしれない。この世界でも未成年の飲酒は捕まるが、モンスター生息域は半ば治外法権だから黙認しかないだろう。自分の昔も思い出し、苦笑いするキャフであった。


「フィカ、お前も飲むのか?」

「飲んじゃ悪いのか?」

「いや、そうだけど……」 


 ちょっと意外だった。もし酒乱だったら勝てそうにない。その時は直ぐに逃げようと、キャフは思った。やがて焼いたばかりのウサギ肉と近くの食用植物を盛り添えた皿が皆に渡され、お酒の注がれたコップも全員に行き届く。ちょっとしたご馳走だ。


「じゃあカンパーイ!!」

「カンパーイ!!」


 戦闘の後に飲む酒はうまい。それはいつの時代も変わらない。

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