第017話 ギムの息子
前回のあらすじ
冒険者がいるな〜 若いな〜
げ、知り合いの息子!?
「そうか」
なつかしい名前が出て驚いたキャフだが、ギムと自分の関わりは言わなかった。そもそも、ここで言っても信じてもらえないだろう。彼の顔をよく見ると、確かに面影がギムと似ている。だが彼と較べて体格は一回り小さい。
「あのー このウサギさん達を今から料理しますから、一緒にどうですか?」
眼鏡っ娘の魔法使いが、すこしオドオドしながら3人を誘った。魔導服にあるラベルは黄色だ。若いが,薄灰色のラドルより二つ上位のランクである。他の冒険者のラベルを見ると、彼女より一つ下の白だ。この子が一番優秀らしい。
「え〜」
もう1人の魔法使いの女の子は嫌そうな顔をしていた。キャフ達にとってはどちらでも良い。場の空気を読んで断ろうとしたら、「良いんじゃね? そこの2人も一緒にどう?」とギムの息子が言った。
彼は目ざとく後ろの2人に向かって言っている。つまりキャフのことはガン無視だ。まあ、子供だと思えば気にもならない。もう1人の魔法使いの女子が不機嫌になったように見えるが、キャフは気にしないことにする。
「じゃあ、わたしもお料理手伝うニャ」
「それでは、わたしも行こう」
ラドルは気が合いそうなのか、眼鏡っ娘に付いて行く。フィカもどうせだからと一緒に行った。他の子達とあまり関わりたくないのかも知れない。
「で、おっさんはあの子らの何なの? デキてんの?」
4人になったとき再びギムの息子は挑発的になり、キャフに問いただした。
年頃だから仕方ないが、いちいち面倒だ。
「いや、あの獣人はオレの弟子で、もう1人はいきがかり上の関係だ」
「弟子? おっさん魔法使いなの?」
ギムの息子は、意外そうな顔をする。
「まあな」
「その格好で? 魔導服着ないの? 魔法杖は?」
「持って来てない」
「何それ? ウケんだけど」
3人に屈辱的に笑われるキャフであった。
「いやホント、おっさんは帰って良いよ。興味あんのはあの2人だけだし。魔法使えんでしょ?」
挑発的な言葉に腹正しいが、キャフは言い返せない。
内心同意しているのだろう、他の2人もニヤニヤしている。
険悪な空気が立ちこめ始めた、その時だった。
ゴソゴソ!
草叢の中からワームが一匹、ギムの息子目がけ飛び出して来た。
吸血タイプであれば、腕に貼り付き離れなくなる。そうなると厄介だ。
「うわっ ヤベ!」
慌てて剣を振りかざすと、ワームは真っ二つになる。
「おい、切ったらマズいぞ!!」
ホっとしているギムの息子だが、キャフは過去の経験から次に生じる可能性を知っていた。だがギムの息子はビビったのを他の2人に悟られたくないのか、「こんなのちょろいちょろい」と笑っている。
だがキャフの懸念は、現実となった。
ギー! ギーー!!
「ギャー!! 増えた!!」
不思議な鳴き声を出しながら、ワームは二匹になってギムの息子へ飛びかかった。思った通り、プラナリアタイプだ。再生能力が物凄く強く、剣で切ると倍になる。
「剣を使うな! 分裂して増えるだけだ!」
キャフがアドバイする。
「じゃあどうすれば良いんだよ、おっさん!」
ギムの息子はなす術なく、悲鳴にも似た声を上げている。
「きゃー こっちにも!!」
「うわ!」
獲物の臭いを嗅ぎ付けて来たのか、ワームが何匹もやってきた。