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第159話 ピラミッドから

前回のあらすじ


いよいよ戦いが始まる。頑張るぞ〜!!

 まだ夜明け前の予兆もなかった突然の襲撃に、クムール帝国陣営は大混乱した。数は多いが寝ぼけ眼で準備不足のクムール兵に、フィカを先頭とした騎馬隊が颯爽と斬り込んでいく。前日酒を飲んで二日酔いの隊長が討たれると指揮系統が乱れ、兵士達は右往左往するだけであった。


 マドレーとミリナは上空から戦局を眺め、指揮をとった。

 未だ暗いがラドル達が放った炎系の魔法で、戦いの様子が伺える。


「フィカさん、凄い勢いですね」

「突っ込みすぎて少々心配ですが、まあ良いでしょう」


 やがて地平線から上ってきた太陽が、戦場の姿を残酷に映し出す。

 至る所に、クムール兵の死体が転がっている。勝敗は明らかだ。


「空から見ると、かなり分かりやすいですね」

「そうですね。鳥系のモンスターも来ないのでこのままいきましょう」


 マドレーの意見に従い、ミリナが通魔石で指示を出す。 

 クムール軍の敗走が、手に取るように分かる。


 上空から俯瞰しているので、クムール兵に逃げ場は無かった。いないと思った場所にもアルジェオン兵が神出鬼没に現れる。気づくと窪地の沼に追い込まれ、クムール兵達の選択肢はもはや投降するか沼に飲まれるしか無かった。


 だが、そう順調には行かない。

 クムールの後方部隊から魔法攻撃らしき光が現れフィカ達を襲う。


「フィカさん!」


 上空で見守るしかできず焦るミリナであったが、煙幕が晴れると、奮闘中のフィカが確認できてホッとする。攻撃は避けられたようだ。しかし先程までの勢いは削がれ、後退し始める。


『ラドルさん今です! 二時の方向に撃ち込んでください!!』

『はいニャ! ファイアボール!!』


 マドレーの指示通りにラドルが放った魔法は、見事敵の中心を襲う。

 魔法の威力で、周りの木々も燃え始める。


『ちょっとラドルさん、やり過ぎ!』

『ごめんですニャ! 後で水系の魔法で消しますニャ』


 だがこの攻撃で、アルジェオンは再び反撃に出る。

 朦々(もうもう)とする煙を物ともせず、勇敢なフィカ隊は息を吹き返し、魔法部隊に斬りかかった。腕力のない魔法使いだから直接攻撃では分が悪い。再び劣勢に立たされるクムール軍であった。


「強そうなモンスター、いませんね」


 下界を覗き込みながらミリナが呟いた。確かにあれほど攻勢を誇ったモンスター達も、この戦場ではゴブリンレベルしかいない。


「そうですね。何かあるのですかね? それとも手駒が無くなったか」


 マドレーの心配をよそに、戦局はアルジェオン優勢が続く。

 北に待機していたギム率いるサローヌ自治軍も、戦闘に加勢する。

 結果、昼過ぎには旧道部分の奪回に成功した。


 この成功を受け、ラドル隊はモジャール城から来た大砲部隊と合流し、南端にある砦の攻撃に入る。サローヌ軍も南下して北部の砦を攻撃し始めた。


「ファイアボール!!」


 魔法や大砲で砦を攻撃するが、向こうも弓で応戦する。

 砦の壁は堅固で、簡単には崩せない。五分の戦いであった。


 弓矢で応戦するクムール軍がいる中を、時間をかけて攻撃する。

 やがて獣人兵が器用に攻撃を避け、壁を必死によじ登り始めた。

 進入して門を開ける事ができれば、陥落は時間の問題だ。


 大勢が決しつつあると誰もが思った、その時だった。


 ピカ! ヒューーー、


 ドドーーンン!!!


 凄まじい光の大砲が砦を直撃し、壁の一部が吹っ飛ぶ。 

 よじ登っていたアルジェオン兵達が、次々と落ちていった。


「熱いニャ、尻尾が燃えてるニャ!」


 ラドルも被害を受け、尻尾を必死にふって火を消そうとする。だが、なかなか消えない。リホに手伝ってもらいやっと消えた時は尻尾が焦げていた。


「おのれー、私のチャーミングポイントを! 許さないニャ!!」


『なんだ? あれ? おい、マドレー、今の見たか?』


 キャフが、通魔石でマドレーにコンタクトをとった。


『は、はい! モンスター生息域から、光の大砲を撃ってきたようです』

『何だ、それ?』

『僕も初めて見ますが、あ、また来ます! ピラミッドからだ!」


 ピカ! ドド〜ーーン!!


 再び光の大砲が、砦を貫く。クムール兵も巻き添えを食らう。

 たちまちアルジェオン兵達は撤退を始めた。


『師匠、これ、ヤバいニャ!!』

『ラドル、全員撤退しろ!!』

『ラドルさん。キャフ中佐の命令に従ってください!』


「ミリナさん、あのピラミッドまで行けますか?」

「防御魔法を使いながらですね、やってみます」


 マドレーの指示で、ミリナは雲をピラミッドにむけて飛ばす。


 ヒューーーン ズッドーーーン!!!


 ピラミッド上部には大砲らしき装置があり、そこから発射されていた。ミリナの防御魔法でも、直撃を何度も受けたらヤバそうだ。視認の限りピラミッドが五つあるのを確認すると、ミリナはUターンする。


「これがあったとは…… 僕も迂闊でした」


 こうして一度砦から撤退し、旧道にある元道の駅の広場を利用して設営することに決めた。クムール兵は砦を出て襲ってくる気配はない。やがて空中からミリナとマドレーが戻ってきた。


「あの光の大砲、かなり厄介ですね。数基あります」

「ちょっと砦を攻め落とすのは簡単じゃないな。まあ砦自体を壊す気でやれば別だが」

「今後を考えると、そうもいかないでしょう」

「じゃあ、どうする?」

「あの厄介なピラミッド達をまず落とすしかありません」

「しかし大変だぞ?」


 やがて日が暮れた。疲労を考えると今日はここまでだ。

 簡易レーダーを張り巡らせて警戒しつつ、一晩を過ごす。


 夜キャフのテントに中隊長達が集まるものの、ピラミッド攻撃に関して良いアイディアは浮かばず、一同無言になる。ピラミッドまで距離もあるし、その後の攻略にも多大な兵力が必要だろう。


「仕方ないな。僕が元の姿に戻ってピラミッド砲を壊すよ。続いて後片付けを頼むけど、それで良いかな?」


 皇子が、決心したように言った。


「い、良いんですか?」

「そりゃ、大切な仲間だからね。出来ないこともないし」


 翌朝、ムナ皇子は近くにあった岩の上にのぼると、何かを唱えはじめた。皇子の体が空中に浮遊する。そして体が光に包まれ始めるとみるみるうちに巨大化し、ドラゴンの姿となる。


「お前、レスタノイア城で会ったより大きくなってないか」

「成長したんだよ。じゃあ行くけど、準備して」

「分かった」


 アースドラゴンはピラミッド向けて飛んで行った。


 キャフ達の部隊はオークとコボルト隊に導かれ、モンスター生息域へと突入した。

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