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第158話 合流

前回のあらすじ


おちこんだりもしたけれど、私はげんきです。

「おお、シューミ、久しぶりだな。モナメと結婚したんだって? おめでとう」


 キャフは久しぶりの再会に目を細める。シューミと会ったのはもう一年ほど前だ。あの頃は、自分が軍隊に所属しているなんて想像もつかなかった。


「ありがとうございます。キャフさんも無事に回復されて何よりです。こちらはコボルトのギャード隊長です」


『はじめまして。話はマドレーから伺っている。遠路遥々ようこそ。この度のご協力、誠に感謝する』

『はじめまして。こちらこそあんたらのお陰で助かった。とにかく、あいつらクムール人をこの地から追い出すためなら最大限の協力をしよう』

『ありがとう。もちろんだ』


 他の中隊長達も集合し、会議を始める。ムナ皇子も同席していた。場に似つかわしくない少年を不思議に思う二匹に、「ああ、こいつはアースドラゴンだ。これは仮の姿なんだ」とキャフが紹介すると、途端に顔色が変わり、席を立って恭しく跪き頭を垂れた。


「し、失礼いたしました! アースドラゴン様とは露知らず、同じ席に並ぶご無礼、大変申し訳ありません!!」

「挨拶もせぬ不躾な態度を、お許しください!!」


 二匹はかなり恐縮している。

 やはりモンスター界でのドラゴンは、かなり特別な存在らしい。


「いや、気にしなくて良いよ。ここではお互いアルジェオンを助ける身さ」

「あ、ありがたきお言葉!」

「慈悲深きお心、感謝致します!」


 皇子も、二匹が臣下で当然と言った態度をとる。

 モンスター界でも上下関係は絶対のようだ。


「ところでモンスター生息域の状況はいかがですか? 旧道近辺のクムール軍の様子も、知る限りの情報を頂きたいのですが」


 マドレーが話を進めようと、二匹に尋ねた。


『ああ、まず旧道沿いの敵勢力だが、旧道からモジャール城にかけて三つの砦がクムールの支配下に落ちている。あいつらの物資は、チグリット河沿いからモンスター生息域内にあるピラミッドダンジョンから持ち運ばれている事も確認している』


 ギャード隊長が現場状況を説明した。


『ピラミッドダンジョン?』

『そうだ。地上部分がピラミッドみたいな形になっている。その中は地下まで伸びるダンジョンらしい。俺達も実際の様子は全く分からない。奴隷から逃げてきたモンスターの話によれば、更に地下道は他のダンジョンと繋がっていて、チグリット河に来た船の積荷や兵士がそこから供給されているようだ』

「厄介だな」


 情報が入ったのは助かるが、これを攻略するのは大変そうだ。


『クムール兵は?」

『モジャン地域周辺にいるクムール兵は、およそ二千。各砦にクムール兵が四百ずつで、モンスターが五十、旧道沿いに展開するクムール兵が八百、モンスターの数は二百ぐらい。一匹が四人分の兵力に換算すると、およそ三千三百と言ったところだ』

『多いですね。僕達の倍近くある。化け物みたいなモンスターはいましたか?』

『いや、見ていない。ゴブリンとか低級モンスターばかりだ』

『それは良かった。では皆さんの兵力は?』

『期待させて済まないが、それほど多くはない。俺達とオーク達の兵力は合わせて百だ』

『それで十分ですよ。ギャード隊長ありがとうございます』


 マドレーは真ん中にある地図を使い、それぞれの駒を軍に見立てて動かしはじめた。


『我々アルジェオン軍ですが、キャフ大隊で戦闘にまわせるのは、約五百。そしてモジャール城に駐留する兵士は二千五百ですが、外に打って出せる兵力は千だと連絡が来ています。そして北から南下してくるサローヌ自治軍が千。つまり合わせるとアルジェオン兵が二千五百、モンスターあわせて、およそ三千ですね。そこまで劣勢じゃない。ただどう転ぶか分かりませんね』


 そう言いながらも、マドレーは余裕ある笑みを浮かべていた。彼にとっては、まるでチェスや将棋のように見えているのかも知れない。


「作戦は、どうする?」


 キャフが尋ねる。


『そうですね。先ず約束ですが、戦闘時、皆様がお持ちの通魔石は肌身離さず身に付けてください。これで全体の指示を出します』


 一同、同意する。


『今回は会戦の領域が広いので、僕とミリナさんが空を跳んで指揮をとります。ミリナ隊は、キャフ中佐指揮下にします。これはモンスター出現時に対応させる意味もあります』

「分かりました」


『斥候の報告とオークとコボルトさんからの情報を合わせると、おそらく敵はここ旧道に二個大隊を置いてます。ご存知の通り旧道の両脇は森林が広がっている。だから一度に戦う人数は小隊レベルでしょう。そして三つの砦には、それぞれ一個中隊の弓兵と二個小隊の突撃兵、一個小隊の工兵がいるようです』

『何とかできそうな数だな』


『ですが厄介なのはモンスターです。彼らは森林など関係なく直進して我々を襲える。旧道にも一個小隊分のモンスター、そして動く石造(ゴーレム)達がいます。戦局が五分五分なのは変わらないでしょう』


 それぞれの駒を地図上に動かす。


『突撃は旧道の正面がフィカ隊で、森林の中を通って右翼がケニダ隊、左翼がラドル隊にお願いします。モンスターの皆さんは生息域での待機をお願いします。敵の状況次第でを指示します』

「分かった」

「了解です」

「分かったですニャ」

『宜しく頼む』

「仲間達にも伝えます」


『この地形を見れば分かりますが。この一帯は平原じゃありません。細かい窪地や森が多い。砦を落とすのは、かなり難儀な作業でしょう。モジャール城から派遣される大砲部隊が到着するまで、できるだけ砦の兵力を削いでください。砦に関しては、キャフ隊が遠距離攻撃をお願いします。ラドル隊も状況次第で、順次突撃してください。獣人パワーなら、壁を上るのは未だ容易いかと』

『まあ、そうだな。だが最初の突入タイミングはどうする?』

『早朝、夜明け前の五時頃。今までなら煙を炊いて合図ですが、通魔石があるから一気に奇襲を仕掛けます』

『分かった』


 会議は終わり、夜中、それぞれの隊は持ち場まで移動する。

 そして翌日早朝。マドレーの命令でフィカ隊の突入が始まった。

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― 新着の感想 ―
[一言] ですからっ……、あらすじで吹かせないでくださいと、あれほど……!!! (テーブルを拭きながら) ※うそです。無事でした 遅ればせながら、微笑みをありがとうございます。 頭の中でフル回転なマ…
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