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第145話 オーク達

前回のあらすじ


あれ? オークの村が消えちゃった?

「あ、フィカさん!」


 シューミは、フィカの顔を見て懐かしそうに喜んでいた。

 剣を装備しているが、襲いかかるそぶりは微塵もない。


「久しぶりだな。オークの村は一体どうしたんだ? マドレー隊長、彼はシューミと言って以前世話になったオークだ。アルジェ語も喋れる」

「そうですか、はじめまして」


 マドレーはフィカの紹介を受け、シューミと言うオークに対し握手を求めた。マドレーより一回り以上大きいシューミだが、人間社会を知っているだけあり握手に応じる。


「はじめまして。大丈夫ですよ、敵対する意思はありません」


 シューミは丁寧に挨拶をした。村を捨てても昔を忘れた訳では無さそうだ。フィカも少し安心する。だがこうなった理由を問いただす必要があった。


「皆は元気なのか?」

「え、ええ…… ただマダラ村長はお亡くなりになりました」

「あの村長が? 動く石像(ゴーレム)とやり合える程の猛者なのに……」


 フィカは、信じられないと言った顔をしている。

 あの豪傑が簡単に死ぬとは思えない。


「はい。ある日、村に来たクムール人がマダラ村長に食べ物を持って来たのです。通訳として側にいましたが、珍味で貴重な料理だと言われて村長も美味しそうに食べました」

「どんな食べ物だったのですか?」


「普通に良くある、スープみたいなものでした。でも翌日から突然苦しみだし、頭にコブのような物ができて性格が変わり、奥さんや家来に当たり散らすようになったのです。そして数日後に再びクムール人がやってくると、彼らはマダラ村長に何か命令をしました。すると村長は自分の意志と無関係に暴れ始めたのです」

「彼らに従って?」


 マドレーが聞き返した。

 やはり、あの寄生虫みたいなものと関係ありそうだ。


「はい。彼らが何か言うと、普段は温厚なマダラ村長が突然暴力をふるいはじめたのです。その様子は普段と全く別人で驚くばかりでした。一通り暴れ終わると正気に戻ったのか、今度はクムール人達に襲いかかりました……」

「どうなったんだ?」


「……相打ちです。もちろん、クムール人ごときマダラ村長の相手ではありません。数人は簡単に殺しましたが、瀕死のクムール人が何かを仕掛けると、マダラ村長も突然倒れて亡くなりました」

「それは悲しいな……」


 フィカは、マダラ村長を思い出し悲しくなる。

 やはりアトン地域で見つけたモンスターを操る装置だろう。


「はい…… クムール人を殺したし、とにかく彼らと関わるのはまずいとなったので、村人全員が村を捨てたのです。幸いここは未だ発見されていませんが、足跡を消したりして見つからないように注意しています」


「大変ですね……」


 事情が分かり始め、マドレーは同情した。


「ええ、彼らとの交流は失敗でした」


 シューミは残念そうな顔をしている。トリュフで稼げる生活に目がくらんだ末路だろう。シューミが着ている服も贅沢だった昔と違い、自分達で織った物を使っている。今のオーク達は質実剛健な生活を営んでいるようだ。


「それでは、今の村長さんは誰なんですか?」


 マドレーが、質問した。


「実は父が代理を勤めています。この穴の奥にいますが、会いますか?」

「ええ、そうしてもらえると助かります」


 シューミに案内され、岩の奥にある洞窟の中へ5人は入っていく。一番奥の広場にシューミの父オークがいた。何人かと話し合いをしていたが、シューミの言葉と5人の登場で彼らは席を外す。


「ああ、フィカさん。いつぞやはどうも。猫耳少女さんとキャフさんは?」


 シューミの父もフィカを覚えていた。マドレーは初対面だが、音高そうなシューミの父は丁重な態度をとる。洞窟の中は狭く一軒家は作れないから、オーク達は一家で数個の穴を持って共同生活をしているようだ。


「ラドルは一緒にいるが、キャフは別行動で此処にはいない。今はこのマドレー隊長が私達のリーダーだ」


 フィカが説明した。


「ああ、そうですか」

「大変な目にあいましたね。アルジェオンも今はクムール軍と交戦状態なのです。彼らはモンスターを操り、凄まじい勢いで領土を占領しました。おそらく、そちらのマダラ村長さんが被害にあったのと同じ装置です」


 マドレーは話をしながら、交渉相手としてシューミの父は適切に感じた。こちらの話をしっかり聞き、状況の把握もしている。周りのオーク達の様子からも、盛り立てようとする空気が感じられた。


「そうなんですか。そう言えばさっきの若い者達の報告では、ここからチグリット河の方へ行ったところに彼らの秘密基地があるようです」

「それは大事な話ですね。内部は見られたんですか?」


 秘密基地か。あのモンスター操縦装置の手がかりが掴めるかも知れない。


「残念ながら、かなり遠くから見ただけですね。クムール軍の支配下にいるモンスター達が周辺を囲んで防御しているのです」

「じゃあ、細かい点は良く分からないんですね」

「はい」

「僕たちも行きたいので、彼らに案内してもらえませんか? 実はアルジェオン女王の委任状がありまして、契約が必要であればそれも可能です」


 マドレーは、交渉に入った。ある程度のお金もマドレーの裁量が許可されている。


「そうですか。いや、契約などしなくても良いでしょう。私達にも重要な案件だ」

「ありがとうございます。私たちは全員で行きたいのですが明日などはどうですか?」

「分かりました、伝えておきましょう」


 翌日、再び集合する。マドレー達は、フィカとラドル、ケニダとキアナの戦闘要員とミリナを連れてきた。全員フル装備だ。若いオーク達5人も棍棒や剣などを装備している。


 出発前、村長たちに加えてシューミやモナメも見送りに駆けつけた。


「シューミさん、モナメちゃん、久しぶりだニャ」

「ラドルさんもお変わりなく。その節はありがとうございました。おかげさまで少しずつ魔素も増え、村人の皆様に役立っています」

「良かったですニャ」


「皆さん、用意は良いですね。じゃあ、これ持ってください。翻訳魔法(トランスレート)の術式をかけているので、意思疎通も可能です」


 ミリナが、通魔石入りのブレスレットをオーク達に渡す。


『こんにちは、聞こえますか?』

『おおー、君の言葉が分かるぞ!!』


 オーク達は、驚いた。あちこち、会話する様子が見られる。

 これでモンスターとアルジェオンの混成軍ができ上がった。

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