第141話 作戦会議
前回のあらすじ
マドレー、偉いさんを説き伏せて、自分の作戦を遂行する。やるのはあの三人だけど。
とにかくマドレーの意見が議会を通ったから、今からは軍の支援を受けて作戦行動を取れる立場になった。ルーラ女王に言伝をお願いしていたので、ミリナもキャフ邸に帰ってくる。
「ただいまです〜 ルーラさんに言われて戻ってきたんですけど、何かありました?」
「どうもこうも、モジャン地方奪回作戦ニャ!!」
「え?」
どうやら細かいことをルーラ女王は伝えなかったらしい。ミリナは本気で驚いていた。マドレーが会議場で話をした内容をミリナにも伝える。
「そうですか……」
「どうするニャ?」
「私はどちらでも。ただキャフ師の回復をどうするかですね……」
「そうなんです。そっちの状況はどうなってますか?」
ミリナの言う通り、キャフの回復が優先事項ではある。
「順調とは思うのですが…… 未だ時間かかります」
「どうしますかね。彼の回復を待つどうかで作戦も変えるのですが」
「正直、当てにしないほうが良いと思います」
「分かりました。ではプランBで」
夜、4人はルーラ女王の部屋へ向かった。キャフの代わりにミリナが浮遊魔法を使ったが、小さくギュウギュウ詰だ。キャフの偉大さをここでも感じながら部屋につく。既にルーラ女王は、お茶の準備をして待っていた。
「皆様、ありがとうございます」
「いえいえ、国民として当然の義務ですニャ」
「早く平和になって欲しいからな。できる事は何でもする」
「ありがとうございます。それでマドレーさん、どのような作戦をお考えなんですか?」
いつものお茶と菓子を堪能しながら、マドレーは話を始めた。
「まず防衛網として、レーダーの再構築は必須になります。これはアトン地方とサローヌ自治領のみの手配ですが、兵を消耗させずに済みます。戦争が始まってから四ヶ月以上経過しました。平時と違い、民の疲弊も相当なものです。モジャン地方では一度種まきした畑も使えなくなりました。そうなると秋の収穫に多大な影響が出るとみて良いでしょう。来年まで続くとなると様々な備蓄の準備も必要です」
「そうですね……」
マドレーの説明にルーラ女王は顔を伏せた。
やはり民を思うといたたまれない気持ちになる。
「すいません、少し話がそれました。今はとにかく、モジャンをどうするかですね。少なくともモジャール城の奪回、そして旧道沿いへの防衛ラインの再構築が至上命題です」
「モジャンに、また突っ込んで行くのかニャ! 私なら大丈夫ニャ!」
喧嘩っ早いラドルは準備万端だ。
「いや、それをやっても同じ事の繰り返しでしょう。モンスターの検死報告がありましたが、以前のモンスターにもあった装置が脳に組み込まれていました。九尾狐の高位モンスターならともかく、低位モンスター達はあれで操られていると思って良いでしょう」
「じゃあ、どうするんですか?」
「修理するには元栓を直さないと。つまりモンスター生息域に行くしかありません」
「私たちはともかく、お前も行けるのか?」
フィカがもっともな意見を言う。マドレーは軍人だが、ずっと研究所勤めだ。過酷なモンスター生息域の環境に耐えられるとは思わない。事実キャフでさえ、中年からの冒険は疲れると嫌がった。
「まあ確かに野宿は大変だし、未だ夜は寒いですけどね。流石にそんな事を言ってる場合じゃないですよ。ただもう一つ大事なことですが、ルーラ女王、僕があなたの代わりになっても良いですか?」
「え?」
「お前、また女装したいのか?」
マドレーを除く女性陣は、不穏な目でマドレーを見た。
ラドルだけは目を輝かせている。
他人に化粧するのが楽しくなったらしい。
「違いますよ、何言ってるんですか?」
マドレーは彼女達の顔を見て慌てて否定した。
「女王陛下の全権委任状をいただけないか? という事ですよ。2人もご存知の通り、オークとか交渉できそうなモンスターがいる訳ですよね? 彼らと取引したいのです」
「ああ、そういう意味か」
フィカ達は納得したようだった。
マドレーも、誤解が解けてほっとする。
「それなら良いですよ。私のサインをした書類を持たせましょう。ただ、どのようなお取引をお考えなのですか? 私にも責任が出てくるので一応お聞かせください」
「ありがとうございます、女王陛下。そうですね。これも出たとこ勝負ではあるのですが、トリュフをクムールより高額で取引するとか、あの寄生虫みたいな装置から護る方法を教えるとか」
「できるんですか?」
「いや、未だ僕の頭の中だけです。ただ可能性はあります。とにかく彼らがアルジェオンへ侵攻せずに済む方法を、提案したいのです」
話を聞いて、ルーラ女王は納得したようだった。
「分かりました。サインしましょう。くれぐれもよろしくお願いします」
「はい、女王陛下」
翌日から、準備が始まる。
「キャフ師はどうします? また畜魔石と術式でルーチンの回復魔法をかけておきますか? 回復時間長くなりますけど」
「通訳魔法や通魔石が必要だから、やはりミリナさんに来てもらわないと困ります。すいませんが、よろしくお願いします」
「分かりました」
人数の規模だが、やはり4人では心許ない。キャフの隊から、ケニダやキアナをはじめモンスター生息域に精通した兵の募集をかけ、10人ほどの規模にする。
装備も万全にして、数日後出発となった。




