表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
136/231

第136話 変更

前回のあらすじ


爆発、まじで痛え。

「いや〜、参りましたね」

「疲れましたニャ」

「で、あの2人はどうなんだ、マドレー?」


「ルーラ女王は、キャフが防御魔法(シールド)をかけてくれたおかげで無事です。ショックが大きくて寝込んでいますが、傷は軽症ですからじき起きるでしょう。ただキャフ中佐はちょっと……」

「し、死んだのか?」

「今ミリナさんが隣の部屋で、必死に再生魔法(ヒーリング)をかけまくってます。一命は取り止めたようですが、それでも完全回復まで時間がかかりそうです」

「そうなのか……」

「まあ、死ななかっただけ良かったニャ」


 それはそうだが、現実を思い3人とも声を出せなくなる。


 ここは女王陛下の寝室、いつものお茶会部屋だ。奥のベッドではルーラ女王が安らかな寝息を立てて、眠っている。腕に包帯が巻かれていた。女王を起こさないように、マドレーとラドルとフィカは少し離れたテーブルでヒソヒソ話をしていた。


「これからどうなるニャ?」

「わかりません。爆弾テロの黒幕が分かれば対処のしようもありますが。軍も警察も当てになりませんね。戦局もどうなるか……アルジェオンの心理的ダメージは大きいです。一度ならず二度までも、イデュワが攻撃されたのですから」

「まあ、そうだろうな」


 フィカはマドレーに同意した。先日の隕石雨(メテオ・シャワー)もそうだが、イデュワでのテロも前代未聞だ。市民たちの動揺は相当なものだろう。


 それに問題は、このテロに軍や警察が関係する可能性だ。キャフを慕って行動を共にする輩はどちらかと言うと真面目で愛国心溢れるタイプが多い。だがそれはアルジェオン全体では少数派で、軍や警察といった公務員は保身に長けて国より自分ファーストの人間が多いのも実情だ。


 どこかの国のように隙を見てクムールと繋がっている人間が上層部に入り込めば、権力を使って出来ることも多い。


「そもそも今回の件で、軍も警察も怪しすぎます。犯人は自爆していますが、誰があそこまで通したのか全く情報が入りません。それに女王陛下が公務遂行できなくなったら、大問題ですよ」


「何でニャ?」

「そうなると、規定で王位継承権第二位のリル皇子が代理を務めるのですよ。その場合、戦争に勝てるかどうか分かりません。それどころか降伏するんじゃないかと心配です」


 マドレーの言葉は、2人にとってにわかには信じ難かった。


「そんなことあり得るのか?」

「彼らは元々好戦派じゃないって、女王も言ってたじゃないですか? それにこのタイミングでのテロ、出来過ぎです。犯行声明もないし裏で何かあると思った方が自然ですよ」


 マドレーの方が情報量が多い。恐らくそうなのだろう。

 フィカとラドルは、これからを思い深刻な顔になる。


「でも女王様、怪我してるし休ませた方が良いんじゃないかニャ?」

「僕もそうさせたいですけどね、女王がいない間に悪法を通されたら、たまったものじゃ無いですよ? 本当に国が転覆しますよ? 彼らだったら反国家活動家を公安の長にするとか平気でやりますよ?」


 そんな事をされて機密情報を握られたら本当に国が転覆する。

 2人とも納得するものの、良いアイディアはなかった。


「ふう〜 疲れました〜」


 奥の小部屋の扉が開き、ミリナが出てきた。かなり魔素を消耗したらしく、げっそりしている。心なしか自慢の胸もしぼんでる。


「キャフは、どうだ?」

「どうもこうも…… こんな高位の回復呪文を実践するのは私も初めてです。無事生き返るかまだ分かりません。一応術式くっつけた畜魔石で、しばらく効かせてます。他の要素が入ると変な回復になるかも知れないので、悪いですが暫く立ち入り禁止でお願いします」

「分かりました。女王の部下達にもそう伝えます」

「ご苦労様。お茶でも飲むかニャ?」

「ありがとう!」


 メイドにお願いして、ミリナの分もお茶を出してもらう。よほど疲れていたのか、席に着くと直ぐにクッキーを一心不乱にムシャムシャ食べ始める。しばらくは災難を忘れて、4人はお茶を楽しんだ。



「けどあれですね、キャフ師がいなくなったらタイトル変えた方が良いんじゃないですか? そもそも弟子達、あんまり活躍できてないんですけど?」


 ストレスがかなり溜まっているのか、お酒も飲んでない筈なのにミリナが変なことを言い始めた。


「思う? 見せ場が少ないニャとは薄々感じていたんだけどニャ」


 ミリナの意見にラドルも同調する。

 作者も気にしていたことを、彼女達は分かっていたようだ。


「じゃあ私が主役はどうですか? 『天才マドレー、出世を望まず田舎でスローライフ、でも魔王を倒しちゃう』なんてどうでしょう?」


 唐突にマドレーが言い始めた。彼も疲れているようだ。


「う〜ん、今いちですね。それにマドレーさんはまだ出始めたばっかりじゃないですか? それだったら私が主役ですよ。『眼鏡っ子巨乳魔女、100億年ボタンを押して宇宙最強のチートになって成り上がる』はどうですか?」

「ちょっと盛りすぎですね」


 ダメ出しされたせいか、マドレーはミリナの意見を即否定する。

 その辺は意外と感情的になるようだ。


「え〜、私の方が最初から出てるんだから、主人公にふさわしいですニャ! 『猫耳娘の悪役令嬢、婚約破棄されても合コンで超金持ち御曹司をゲット! どんな男もイチコロよ!』なんてどうですかニャ?」

「そもそも、悪役令嬢って柄じゃないですよ、ラドルさん」

「ふニャ〜 そうかニャ……」


 これもマドレーは気に入らないようだ。

 多分、何を言っても却下だろう。

 ラドルは真に受けて、しゅんとする。


「いや、唯一の剣士である私の方が主役らしくないか? 今までキャフのピンチをかなり助けているぞ? 『美貌の剣士フィカ、昼下がりの陵辱』なんかはどうだ? もちろん私がする方だが」

「それ、何か違いません? 昭和の匂いがするんですけど」

「フィカ姉さん、ちょっとそれは文庫コーナーが違いますニャ」

「僕もそう思います」


 当然ミリナは、そんな時代を知らない。

 こればかりは皆そろって否定的だった。


 好き勝手なことを言っていると、奥のベッドから「うーん……」と、呻き声が聞こえる。どうやら、ルーラ女王が目覚めたらしい。待機していたメイドが医者を呼びに外に出た。


「ルーラ女王、大丈夫ですかニャ?」

「わ、私は…… 何かすごい光と爆風に、巻き込まれたような記憶はあるのですが……」

「爆弾テロにあったのです。お体の調子はどうですか?」

「ちょっと腕が痛いですが、怪我してるのですね…… あ、そういえばキャフさんは? 私を庇って護ってくれたのは覚えているのですが」

「それがまだ回復中で、しばらく面会謝絶です」

「そ、そうですか……」


 やがてメイドに呼ばれた医者が来たので、4人は外に出た。他の誰かに会うのもまずいから、近くの廊下で立ち話にする。しばらくするとメイドが4人の下にやってきて、「女王陛下がお呼びです」と言う。4人とも何事かと思いながら再び中へと入った。


 ルーラ女王は、4人を見ると安心した顔になる。

 包帯を巻かれているが重傷ではないらしい。


「いつも、ありがとうございます。幸い怪我は軽いのですが、やはり公務に出席するのが怖くて…… けれどリル皇子に任せるのもいささか不安なのです。どなたか代役できませんか?」


 マドレーの話で何となく分かっていたが、自分達に正式な要請が来ると思っていなかった4人は驚く。そんな代役を任されるとは、想定していなかった。


「え、女王様の代わりに出るのヤバくないですか? 武田信玄みたいに影武者いないんですか?」

「そんな人いません。怪我しているからと顔に包帯を巻いてベッドで移動すればバレませんよ。髪の毛は帽子でも被ればいいし。彼らにとって私が押す御璽が必要なのです。保管場所の鍵は私だけが持っていますので、お貸しします。とにかく書類に御璽を押すだけですから。簡単なお仕事です」


 確かに押印するのは簡単だが、責任は重大だ。

 それにバレたら、国家反逆罪で処刑されるかも知れない。


「わ、私は猫耳だから難しいニャ」

「私も、フミ村なまりが抜けないし、礼儀作法も分からないから……」

「じゃあ、フィカさん、お願いできますか?」


 マドレーが聞くがフィカの背は高すぎ、女王のベッドから足が出る。

 彼女達では、一長一短ありそうだ。だがここにいる人間達以外に頼む場合、情報漏洩の危険がある。


「意外に合わないもんですね」


 マドレーは他人事のように言った。


「いや、いるぞ。1人だけ」


 フィカは確信を持って言う。


「イデュワ育ちで知能も高く、それなりに礼儀作法を身につけていて、ルーラ女王と体格も似たタイプがこの中に1人だけいる」

「誰ですか? それ?」


「お前だ、マドレー」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ