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魔法を使えない魔導師に代わって、弟子が大活躍するかも知れない  作者: 森月麗文 (Az)
第九章 魔導師キャフ、第七師団の中隊長になる
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第134話 久しぶりのお茶会

前回のあらすじ


ルーラ女王、通魔石電話の使い方が間違ってるかもしれない件について。

 キャフ邸に帰ると、シーマから当然のようにルーラ女王からの言伝を伝えられる。夜のお茶会の案内だ。帰って来たばかりで体の疲れを取りたいが、あの通魔石電話の声を聞く限りそうも言ってられない。帰宅したその日の夜に、キャフ達は女王の部屋へとやってきた。


「帰ってきた!! お帰りなさい!!」


 扉を開けると、待ち構えていた彼女は走り寄ってきて、強くキャフを抱きしめた。目も少し潤んでいる。その勢いでよろけそうになるキャフであったが、慌てて3人が背中をおさえてくれた。ルーラ女王の柔らかい肌の感触と甘い香りが、戦場から帰ってきたことを実感させてくれた。


「お久しぶりです!! お元気そうで何よりです!!」

「あ、ああ。連絡せず、すいませんでした」

「良いのです、さあどうぞ。皆さまも一緒に。あら、お1人多いのね」


 キャフは先日の通魔石電話の件があるから、とにかく謝った。

 だがルーラ女王の口ぶりでは、それほど気にしていないようだ。


 呆気に取られる3人とマドレーを他所に、ルーラ女王はメイドに指示してお茶の用意をさせる。マドレーの分は用意されていなかったが直ぐに食器が出され、椅子も一脚追加された。


「突然のお邪魔を申し訳ございません、ルーラ女王陛下。第七師団でキャフ隊の副隊長を務めさせて頂いております、マドレー中尉です」


 マドレーは礼儀正しく、ひざまづいて女王に挨拶をした。


「いえいえ。キャフ様をご支援頂きありがとうございます」

「ありがたきお言葉」

「じゃあ、お茶にしましょ」


 急かすようにお茶会が始まる。気のせいかルーラ女王は以前より感情の起伏が大きいように見え、良く笑う。他の3人も何かを感じたのかお互い見遣り、アイコンタクトをしている。


「それで、戦争はいつ頃終わるのですか?」


 ルーラ女王は、呑気なことを言った。


「いや、まだ旧道を一時的にせよ奪還しただけだ。あんたの方こそ情報が入ってるんじゃ無いのか? 終わらせるのは、あんたらの役目だと思うが?」

「それが…… 朝から晩まで会議、会議、会議。あのオジさん達はずーっと意味不明なことで喧嘩腰になって怒鳴り合い、最後はいつも『では女王陛下、ご判断を』と言うばかり。私はいつも、良く分からない書類に御璽を押すだけです」


 喋りながら、女王は不機嫌な顔になって来た。

 どうも、ストレスが溜まっているようだ。


「それ、ヤバいパターンにゃ。保証人とか、させられてないかニャ?」

「多分、そんな書類は無かったと思いますが……」


「やっぱりバカなんですね〜 ルーラ女王、どうにかならないんですか?」

「そうは言われても、私に出来る事は少なくて……」


 先ほどとは打って変わり、悲しげな顔をして落ち込む。

 やはりストレスがかなりかかっているようだ。


「そもそも他の地域はどうなってる? モドナは?」

「そうです、モドナが一番大変で、まだ包囲網が解かれておらず状況がわかりません。海路も封鎖されているそうです。何度も闘ったのですが防御が堅く、未だ吉報は届いていません」


「あと予算はどうなってるんですか? これも大事ですが」

「そうですね、実は私のところには細かい数字が上がってこないんです。いつも承認するだけで、詳しいことは教えてもらえません。会議の中身もその予算の事ばかりで、国民のことなど全然考えてないのです…… ほんと、聞いているだけで嫌になります」


「それは、別な意味で大変ですね……」

「まあ、女王の仕事ではあるけどな」


 ミリナやフィカも、ルーラ女王に同情した。


「はい、もちろん私の責務であると理解しております。ですがこのような緊急事態でも、あの人達の心は民に向いていないと思うと、悲しくてならないのです」

「エリートっていうのは、そういうもんだ」


 重苦しい空気が、皆を包む。しばらく無言になる。


「そう言えば、そろそろ『花祭り』だな」


 フィカが話題を変えるように呟いた。花祭りとは、例年イデュワで行われる春の訪れを喜ぶお祭りである。エミュゼ通りをはじめとして、至る所でパレードや余興がなされ、ちょっとした無礼講になる。


「そうですね。今年は凱旋式も同時に行うそうです。皆様も出席してください。キャフさんにも招待状がいくはずです。功労者ですから勲章がもらえますよ」

「分かった」


 興味はないが軍に所属する以上、出席が義務だろう。


「私もみんなの前で挨拶をします。考えてみれば、父の国葬以降初めてですね。まだ戴冠式も終わらぬうちから、戦争が始まってしまいましたから」

「そうなんですか?」

「はい…… 正直、みなさんが私をどう思っているのか不安です……」


「じゃあ、余興でちょっと面白いことをしましょうか?」


 突然、マドレーが何か閃いた顔をした。


「何ですか?」


 ルーラ女王は、不思議そうな顔をする。


「まだ準備が必要ですから、内密にしてください……」


 夜も更ける中、6人は何事かを相談し始めた。

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