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魔法を使えない魔導師に代わって、弟子が大活躍するかも知れない  作者: 森月麗文 (Az)
第九章 魔導師キャフ、第七師団の中隊長になる
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第132話 援軍

前回のあらすじ


ラドル、行きまぁあす!!

「ふニャァああ!! ファイヤーボール16連射!!」


 クムール軍に勢いよく炎を放つラドルは、口だけじゃない。

 頼れる魔法使いに成長したなと、その様子を見てキャフは思った。

 ラドルが仲良くなったのか、先陣を切る兵士達は獣人兵が多い。


 対するクムール軍は、棍棒を持ったゴブリンやオーガ達を中心に攻めてくる。

 前線が混じり合い、激しい接近戦があちこちで始まった。


 モンスター一匹に獣人兵3人が付いて、足元を狙う。

 だがモンスターも負けてはいない。一進一退の攻防が続く。


「やはり簡単じゃないんだな」


 後方から戦局を見つめる、キャフが言う。


「こんなものですよ」


 と、マドレーは冷静に返答する。


 キン○ダムみたいに名だたる将が一対一で闘う展開にもならず、一瞬で雌雄を決するほど戦力差も無い。やがて夕方となり日も暮れてきた。それぞれ陣営に戻り、一日目が終わる。


「ラドル、ご苦労」

「明日も頑張るニャ!」


 皆が疲労する中、武器の整備をして明日に備える。服も新品にしたいが補充は少ない。夜襲に備え弓兵達が周辺を交代で見張っている。


 二日目。クムール軍の構成に変化は見られない。

 お互い死力を尽くして戦うものの、やはり勝負は決まらなかった。


 そして三日目。


「あ、あれが来てるニャ!!」


 驚くラドルが見たものは、動く石像(ゴーレム)であった。十体ほど投入されている。

 どうやら支援部隊か到着したようだ。これでは形勢が不利になる。


「今日はオレも行くか。そろそろ魔素も回復したし」


 キャフは戦闘に行く準備をし始めた。司令部はマドレーに任せる。


「気をつけてくださいよ」

「ああ。よし、行くぞ!!」

「おぉおお!!」


 威勢よくキャフが先頭になって、突進する。動く石像(ゴーレム)は何度も戦っているから攻略は簡単だ。足元を狙って動きを止めればアルジェオン兵でも倒せる。


雷撃剣(サンダーブレード)!!」


 雷の剣を繰り出し、前方に投げつけた。


 だが動く石像(ゴーレム)の腹部から出る青い光に、キャフは驚愕した。

 雷撃剣(サンダーブレード)が発散されて、無効化されてしまう。


 その青い光は、キャフ目がけて飛んできた。不意を突かれて直撃し、青い光に包まれたキャフは魔法杖の術式始動ができなくなった。


「なんじゃ、こりゃぁああ!!」


「はっは。反魔法(アンチ・マジック)だよ、キャフくん! 新大陸からの贈り物だ!」


 双眼鏡でキャフの様子を見ながら、遠くクムール軍陣営において、司令官らしき魔導師が誇らしげに語っていた。


「隊長、ここからじゃ、相手に聞こえません」

「良いんだ! 下手に前線に出て死にたくないからな! さあ、動く石像(ゴーレム)ども、存分にやるが良い!!」


 キャフを包む光は消えず、止むを得ず退避する。


 ラドル達が代わりに突進するものの、反魔法(アンチ・マジック)の光を繰り出す動く石像(ゴーレム)に手を焼いた。避けきれなかった魔法使いは魔法を使えなくなるので後退するほかはない。他の兵士達では、動く石像(ゴーレム)の対処は厳しかった。だんだんとクムール軍が押してくる。どこか一箇所が崩れると、アルジェオン軍は敗走の憂き目に会いそうだ。


(ヤバい……)


 光を消そうにも、魔法を発動できないジレンマに陥る。

 ミリナにお願いしても、解除の術式は持ってないらしい。


「困りました……」


 その時だ。


「あ、なんだ?」


 クムール軍の北側に位置する陣営が、狼狽し始めた。陣形が乱れている。

 その理由が分かった時、アルジェオン兵は歓喜した。


「味方の援軍だ!!」


 それはサローヌ自治軍の旗を掲げた援軍であった。

 たちまち情勢は、アルジェオン有利になる。


 ウォオオ!!!


 壮絶な戦いが始まった。


 サローヌ自治軍の見事な攻撃でクムール軍は打ち倒され、昼過ぎには退却して行った。キャフにかけられた反魔法(アンチ・マジック)動く石像(ゴーレム)の退却と共に効果が薄れ、効果が消える。また同じ魔法を使われると厄介だが、最悪の事態は免れた。


「やった!!」


 勝利の決め手となったサローヌ自治軍が、キャフたちの部隊に合流した。


 先頭に立っていたのはギムであった。


 年の筈だが前線で戦っていたらしく、返り血を浴びている。

 相変わらず元気だ。


「よう、キャフ、どうだい?」 

「良かった。助かったよ」

「ルーラ女王が通魔石電話を毎日かけて来て早く行け行けと、何度も催促されてな。やっと来たんだわ。お前、女王陛下にえらく気に入られたんだな」


 ギムは意味ありげに、笑っていた。キャフは適当にごまかす。


「とにかく戦闘は終わった。死傷者の報告を頼む。遺品の回収もだ」


 キャフの指令で、工兵達が出ていく。

 その後の報告により、死者63名、負傷者は143名とのことであった。

 戦地に残されたクムール兵の死体は、モンスターも含め286体であった。



 夜キャフが泊まるテントでマドレーと相談していると、ギムがやってきた。


「それで、これからどうするんだ?」

「旧道までアルジェオンの統治下に置きたい」


「当然だな。でもどうやって? 兵力は少ないから常駐は難しいだろ? 壁でも作る気か?」

「それで今、相談していたのです」


 マドレーが、キャフの代わりに答えた。


「ギム首長、初めまして。キャフ中隊の副隊長を勤めておりますマドレー中尉です。実はミリナさんから頂いた、サローヌ地方で取れる通魔石(コミュ・ストーン)を使って《探知機(レーダー)》を作ってみました」

「レーダー?」

「ええ、敵を感知できるんです。僕の設計で試しに作ったんですが、うまくいきそうです。明日、外で試してみますので見てください」

「ふうん。ま、敵が来るのが分かれば対処しやすいわな」


 ギムはマドレーの言葉を今いち理解していないようだったが、信頼はしていた。彼らに任せようと言うことで、寝場所へと戻って行った。

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