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魔法を使えない魔導師に代わって、弟子が大活躍するかも知れない  作者: 森月麗文 (Az)
第九章 魔導師キャフ、第七師団の中隊長になる
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第130話 妖狐

前回のあらすじ


おいマドレー、何してんだ!

「な、何を?」


 突然の出来事に、キャフは動揺した。

 キャフにとっては、シェスカが殺されたも同然だ。

 手当てに駆け寄ろうとしたが、マドレーに肩を掴まれる。


「バカなんですか? キャフさん達、違和感ありありだったんじゃ無いですか? こんな場所で偶々似ている2人がいる訳ないでしょう? 知らないふりして隙を伺っていただけですよ」


 マドレーは、至って冷静であった。


「それでも、人間を殺すのは…… !?」

「あれが、人間とでも?」


 マドレーが言う通りだった。先ほどまでジョセフィンであったそれは、血塗れの体から光が発せられ、次第に人の形を崩し、本来の姿へ戻り始めた。


 それは、狐だった。


 しかも、尾が九つ生えている。伝説の九尾狐だ。


 更に後ろをふり返って見ると、先ほどのゴブリンはアルジェオン兵士になっていた。キャフ達は驚き、状況が掴めない。そんな中でもマドレーだけは冷静だった。


「つまり幻覚ですよ。恐らく斥候で出した妖狐の一部が捕まったんでしょう。それを取り返して、本来の化け狐に戻るつもりだったかと。残念ながら目的は達したようですね」


 マドレーの言葉を裏付けるように、光の塊になった九尾狐はどんどん巨大化し、遂には壁を超えるほど大きな妖狐へと姿を変えた。これが本体らしい。彼女の術であったのか霧も消え始める。



「ち、油断したわ。間抜け面のくせに。知られた以上は生かしておけぬ!!」

「賢そうな顔って、何も考えてないことが多いんですよ」

「うるさいわ!」


 巨大化した九尾狐は、九つの尾から炎を吐き出した。

 キャフ達は慌てて散開する。


 ドッガーーン!!


 炎のぶつかった建物は衝撃で吹っ飛び、燃え始めた。九つの尾を振って沢山の炎を吐き散らすので、一帯が火の海になる。


 慌ててラドルとキャフが水系の魔法で消火するものの、火の勢いが強い。


「電撃は未だ危ないから、別系統の魔法で! ミリナは魔素の回復を優先しろ!」

「はいニャ!」

「分かりました!」

「私は援護する!」

「僕はこれ以上できないから、任せます」


 という事で奥の方に避難したマドレーを除き、4人となったメンバーで九尾狐に立ち向かう。


「イシュト様のいう通りだ。やっぱりお前は邪魔な存在だ」

「あんたは、寄生虫かなんかに取り憑かれていないのか?」


 巧みに炎を避けながら、キャフは聞く。


「? ああ、あれか。ワシはあんな小細工に騙されぬほど愚かではない。これは自分の意思じゃ!」

「何でなんだ?」


 実際にクムールとの共闘を望むモンスターがいる事実を、キャフは重く受け止めた。あの変な寄生虫を使った装置を壊せば解決できるかと思っていた。だが自分の意思で参加するモンスターがいるならば、この混合軍を簡単には崩せない。


「お前、クムールのモンスター生息域(ハビタブル・ゾーン)を見たことあるか?」

「河口付近なら」

「ワシらが住めるのは、あの辺ぐらいよ。他は干魃で殆どが住めなくなった。だからここに来たのじゃ」

「そうか…… だがお前さんには悪いが、オレ達もアルジェオンの民を守らにゃならん。事情は気にせず、存分にやらせてもらうぜ!」


 そう言うとキャフは魔法杖に魔素を集中させ、術式を詠唱し始めた。


氷暴風(ブリザード)!!」


 キャフの魔法杖から冷たい氷の嵐が吹き荒れた。だが九尾狐の魔力は強く、炎に対しての威力はは五分五分で、凍らせるまでは至らない。


「お前なんかの十倍以上生きてるのじゃ。魔素も魔法も相手じゃないわ!」


 九尾狐は更にパワーアップさせた炎を、キャフ目がけて飛ばす。

 それはモジャール城で一番大きな建物に直撃し、周辺が更に大炎上となる。



「まずいニャ、このままじゃ、こいつ倒す前にモジャール城が燃え尽くされるニャ……」


 ラドルはふと、ここに来る前に話をした狐の獣人少女を思い出した。


「そうだ、化け狐向けのお守りを貰ってたニャ! ミリナちゃん、巨大化魔法使える?」

「え? はい、できますけど」

「じゃあ、これをあいつに投げつけるから、お願いニャ!」

「は、はい」


 理由が分からぬミリナだったが、ラドルが魔導服の中からガラス瓶を取り出し、九尾狐に投げつけたので、それを目掛けて魔法術式を詠唱した。


「あのガラス瓶を増幅せよ、巨大化光(ビッグライト)!!」


 光を浴びたガラス瓶はどんどん大きくなり、九尾狐にぶつかる。

 すると瓶は粉々に割れて、液体が飛び散った。


「グエェエエ!!」


 その液体を浴びた九尾狐は、途端に悶え苦しみ始めた。


「な、何だ? この臭い?」

「狐少女のリホちゃんから貰った、妖狐撃退アイテムにゃ!!」

「何なの? それ?」

「たしか、狼のオシ○コ……」

「きゃーー!!」


 ミリナやフィカ達も、九尾狐から逃げ出す。

 九尾狐の魔素は、みるみる減って行く。


『今ですよ、キャフ大尉!』


 通魔石からマドレーに促され、キャフは詠唱し始めた。


「絶対零度!!」


 先ほどより遥かに威力のある、凍てつく風が九尾狐を襲いかかる。


 ギャァアアア!!


 キャフの威力が勝り、九尾狐は完全に凍りついて氷と化した後に砕け散った。


「ふう、終わったか……」


「師匠、火事はまだ終わってないニャ」

「あ、そうだったな」


 3人で手分けして水系を魔法を使い消火する。だがモジャール城の大半が焼け落ちてしまった。催眠術から覚めた兵士達も、起き始める。霧はすっかり晴れて、青空が広がった。

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