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魔法を使えない魔導師に代わって、弟子が大活躍するかも知れない  作者: 森月麗文 (Az)
第九章 魔導師キャフ、第七師団の中隊長になる
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第127話 霧のモジャナ

前回のあらすじ


ミリナの魔法で、ワイバーンも瞬殺。

「大丈夫だったか? すごい爆発があったけど」


 キャフとミリナが戻ってくると、フィカが心配そうに尋ねた。

 マドレーやケニダも一緒だ。

 他の兵士達も、避難民の世話をしながら特に問題なく待機している。

 ただラドルの姿が見えない

 フィカによれば、後方で魔法部隊の獣人兵士と話しているようだ。


「ああ。あれはミリナの魔法だ」

「あれ、私なんかやっちゃいました?」


 言葉とは裏腹に、してやったりと言う顔のミリナである。一緒に冒険を始めてから、ミリナの成長は著しい。このまま順調に励んで魔素も十分になれば、キャフ以上の魔法使いになれる。先が楽しみだ。


 ただこの攻撃魔法でかなりの魔素を消費した。元気に見えるけれど回復には時間がかかるから、時々は畜魔石チャージ・ストーンを使った方が良いだろう。


 それより、これから任務をどうするかキャフは悩んでいた。

 伝令も来ないから、どう動いて良いのか分からない。


「空のモンスターは倒せたが状況は悪い。霧の結界で城廓や砦の様子が分からん」

「そうなのか。お前の魔法で何とか出来ないのか?」

「今から行って風系の魔法で吹き飛ばしてみるが、多分厳しいだろう」


「じゃあ、どうする?」


 フィカの質問に、キャフは答えられなかった。命令通り目的地を目指しても、恐らく兵士達に犠牲が出るだろう。みすみす死なせるような事はしたくない。


 幸い、今の休憩地は避難民達が時折訪れるだけで混乱はしていない。難民救助の観点からも、少しの間ここに駐屯したぐらい軍規違反にはならないだろう。


「隊を残してオレ達だけで行きたい。マドレー、残ってもらえるか?」

「バカなんですか? 軍関係者と一緒に行かないと相手にされませんよ」

「あ、そうだな」


「ケニダ曹長を残すのは、どうですか?」

「……適任だな。ケニダ曹長、良いか?」


 キャフの言葉に、ケニダは即座に「はい!」と返事し敬礼する。フィカの兄だが、キャフはそれほど直接の交流がなく、どんな人物か良く知らない。だがこの行軍で見る限り全て卒なくこなし、有能だ。大丈夫だろう。


「じゃあ、ケニダ曹長に、通魔石を渡しても良いですか?」

「いや、新しいのを渡すよ」

「はい、どうぞ」

「何かあったら、これで連絡をくれ」


 ミリナの代わりに、フィカが、ケニダに通魔石を教える。

 試してみるとやっぱり興味深そうで、何度も腕につけた通魔石を見ていた。


 本来なら全員に渡したいところだが、そこまでは数がない。

 奥の方にいるラドルも呼んで、戦闘の支度を始める。

 どうやら狐少女の獣人兵と、仲良くなったらしい。


 マドレーの剣には、魔法石が埋め込まれていた。


「魔法使えるのか?」

「いや、術式を入れて威力を上げただけですよ。僕の戦闘力は期待しないで下さい」

「分かった。じゃあ、行くぞ」


 浮遊魔法を発動させ、キャフは四人を乗せて再びモジャナへと飛んだ。


      *    *    *


「確かに、真っ白で何にも見えないですね〜」


 マドレーが、感嘆する。


 空のモンスターはあらかた殲滅したようで、出てこない。冬の空は青く透き通っていたが、白い霧はモジャナの土地一面を隠している。


 キャフ達は地上に降り立ち、霧の至近距離まで近づいた。

 霧は不自然に立ちのぼり、中はよく見えない。

 明らかに人為的な霧だ。


暴風嵐(ハリケーン)!!」


 キャフが試しに魔法を仕掛けるが、ほんの少し霧が晴れるだけで直ぐにまた元通りになる。やはり、魔法か何かで作られている。


「どうします?」

「入ってみるか?」

「バカなんですか? むざむざやられに行くようなもんですよ?」

「でも、行かねばどうしようもあるまい」


 こう言う時、キャフは猪突猛進に真正面から突っ込むタイプだ。若かりし頃の冒険でも無茶をしてサムエルやギムから怒られたことも、一度や二度ではない。シェスカさんだけは笑って許してくれたが。


 5人で遠回しに観察しても、気づく点は何も無かった。日も高いのに相変わらず霧は晴れない。キャフの言うように、こちらから仕掛けないと何も起きなさそうだ。


「仕方ないですね、じゃあ行きましょう。念のためケニダ曹長とコンタクトしますか?」

「そうだな」


 キャフは通魔石に向かって念じた。


『ケニダ曹長、聞こえるか?』

『はい』

『今から件の霧の内部に侵入する。また連絡するのでよろしく頼む』

『了解です』


「じゃあ、入るか」


 こうしてキャフ達5人は、霧の中へと入って行った。

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