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魔法を使えない魔導師に代わって、弟子が大活躍するかも知れない  作者: 森月麗文 (Az)
第九章 魔導師キャフ、第七師団の中隊長になる
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第126話 モジャナの空

前回のあらすじ


いよいよ、戦場に到着。

「どれ、ちょっくら偵察に行くか。ミリナ、空中浮遊できるの何人いる?」


 目的地の丘へ続く道中、キャフがミリナに聞いた。地図で確認するとここから先は下り坂が続き、やがて森も切れてモジャナの城廓や砦が現れる。この位置からはそれらしき戦闘の音はまだ聞こえない。キャフ達は、戦闘準備のために休憩とした。


「防御魔法も加えると、私も含めて5人ほどです」


 ミリナが答える。 


「分かった。一緒に偵察に行きたいんだが可能か?」

「はい。呼んで来ます」


 しばらくすると、4人がやって来た。

 二十代から三十代までの男2人女2人で、どれも小柄だ。


「皆、だいたいCからBランクですね」


 ミリナが説明を加える。


「そうか、まあ何とかなるだろう。いきなりの任務ですまん。隊はここで休憩にして、オレ達で偵察したい。空からの攻撃もあり得るから十分注意してくれ。オレの指示に従うように」

「はい!」

「じゃあ、行くぞ」


 キャフの命令とともに、めいめいが浮遊魔法を発動させ上昇した。キャフを先頭に右側にミリナ、そして左右二人が並び、速度を合わせて飛翔する。しばらくすると、モジャナの土地がいっぺんに見渡せた。


 はずだった。


「何ですか? これ?」


 ミリナが驚きの声を上げる。無理もない。戦場と目された領域は白く濃い霧で覆われ、地上の様子がさっぱり見えず音も聞こえない。


「結界を張られてるか。モンスター達か魔法使いの仕業か?」

「もしかして、この前キャフ師がやっつけた魔法使いですか?」

「いや、やっつけたと言うより余裕持って逃げられたんだが…… 分からんな」


 いずれにせよ、こんな状況では何も見えない。

 地上に降り立つのはリスクが大き過ぎるので、諦めて戻ることにする。


 その時だ。


(? 何だ?)


 遠くで、キラッと何かが光った。キャフが疑問に思った時とほぼ同じくして、見る間に近づいてくる。わずか数秒で接近して来たそれは、凄まじい巨大な炎でキャフ達を目がけ襲いかかって来た。

 

 ギャァアアォオオオ!!!!


「防御! 固まれ!」


 キャフはとっさに、防御(シールド)魔法を五人がいる範囲にかけた。直撃した火炎の衝撃は予想以上で、振動も激しくヒビが入るかと思われるくらいであった。幸い何とか持ちこたえる。


 そして炎が来た辺りから、巨大なモンスターが迫って来た。

 かなり速い。音速を越えている。


「何ですか? あれ?」

「怪鳥系のモンスターだな。おそらく二足竜(ワイバーン)だ。制空権も握られてんだな」


 キャフが説明する間に、その二足竜(ワイバーン)は目の前に現れる。


「空なら、魔法を出せるな。よいしょっと」


 キャフは、魔法杖の術式発動を開始した。


電撃剣(サンダーソード)!」


 稲妻の剣が、二足竜(ワイバーン)めがけ突き刺さる。

 だが鱗の材質なのか思ったほどダメージは食らっておらず、一撃で仕留められない。


 ギャァォオオ!!!


 奇声を発しながら、二足竜(ワイバーン)が再び火炎を放つ。この至近距離では、防御(シールド)魔法も流石に厳しい。散開してバラバラになる。


「お前らは逃げろ。敵う相手じゃない」

「キャフ師、私は手伝います」


 ミリナは残り、他の3人は指示通り退避した。

 二足竜(ワイバーン)も、彼らを深追いする気はないらしい。

 ミリナだけなら速度を気にしなくて良いので、助かる。


「すまん、いざという時のために、回復系の魔法を用意してくれ」

「はい!」


 再び戦闘体勢に戻る。魔法杖を振りかざし術式を作動させた。一撃必殺の電撃もいいが、魔素を使い過ぎると後々の戦闘に響くかも知れず躊躇する。

 

 その間に二足竜(ワイバーン)は口を開け、再び火炎放射の準備に取り掛かり始めた。しばらくして充填完了したらしく、真っ赤な口を開ける。その時を見逃さず、キャフはその口めがけて魔法を撃ち放った。


多重電撃剣(マルチサンダーソード)!」


 向こうの火炎放射も同時で、キャフはすんでのところで避け、魔法を命中させた。


 ンギャァアア!!!!


 幾つもの電撃剣は二足竜(ワイバーン)の口に命中し、その頭は吹き飛ぶ。


「ふう……」


(ギリギリで、危なかったな……)


 やはり昔のようにはスピードを出せない。齢からくる衰えを、キャフは自覚せざるを得なかった。今までは自分のペースで魔素も回復できたが、軍隊を率いると融通もききづらい。これぐらいで、ミリナに魔素を使うわけにもいかない。


 頭で思った通りには動けないことも考慮しないと、これから危ない目にあいそうだ。

 気を引き締めるキャフであった。


 だがそんなキャフを嘲笑うかのように、怪鳥系モンスター達が容赦無く飛んでくる。今度は二足竜(ワイバーン)に加え、グリフォン、ガーゴイルまで来た。こんなに大勢では、流石にキャフだけでは厳しい。


「離脱するか?」

「それも良いですけど…… 久しぶりに、()()しません?」

「?」

「2人だけなんだし、良いじゃないですか♡」


 そう言うと、ミリナはキャフの雲に飛び乗って手を絡めて来た。


「魔法使えるキャフ師でも、一緒に放てば威力が増すんじゃないですか?」


 恐らくそうだろう。ラドルじゃぶつからない胸の感触が何ともであるが、この緊急事態、そんなことを気にしている余裕は少ししかない。キャフの魔素をミリナに流し、魔法の威力を強める。精神集中させたミリナが、術式を唱え始めた。


「魔物達よ、塵に還れ! 超新星(スーパーノヴァ)!!」


 ゴゴォオオオーーーーンン!!!!!


 ミリナの詠唱で魔法が作動すると、まるで太陽がもう一つ出来たような眩い光が2人を包み、破壊力抜群の大爆発が生じる。空中にいるモンスター達はひとたまりも無い。あっと言う間に全滅だ。


「いつ、この魔法覚えたんだ?」


 その威力に,キャフは呆気にとられた。

 自分の若い頃よりも魔法に破壊力がある。


「この前術式に組み込めたから、使いたかったんですよ。でも私の魔素だけじゃ不十分だったみたいで。あ〜気持ちよかった。じゃ、帰りましょっか」


 ミリナは魔法を出し尽くし、スッキリしてあっけらかんと言った顔をしていた。

 

(ま、とにかく何とかなった……)


 弟子の強さに驚愕するキャフであった。

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