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第113話 戦闘

前回のあらすじ


色々めんどくさいけど、いざ参戦!

「うわ〜 派手にやってるニャ〜」


 浮遊魔法を使い戦場までやってくると、先日より派手に砂埃が舞い、モンスター達の雄叫びと破壊音が鳴り響いていた。そしてアルジェオンの兵士達は我先と敗走し、巻き込まれた一般市民はなす術もなく彷徨っている。


 クムール軍の殆どが、動く石像(ゴーレム)とモンスター達だ。

 奴らは戦術があるわけではなく、動きも統率されていない。

 手当たり次第に旧道沿いを攻撃しているだけである。

 作戦を立てれば対応できそうだが、それもアルジェオン軍の実力か。


 勇敢なアルジェオン兵も、少数ながらいる。

 でも相手は人間ではないから、訓練通りにはいかず苦戦している。

 既に大砲や投石機は、殆どが打ち壊されていた。

 これでは勝てるはずもない。このままだと勝敗の帰趨は明らかだ。


 動く石像(ゴーレム)達に痛みや恐怖の感情はなく、どんな攻撃にも怯まず一直線に来る。そんな化け物が数十体もあるのではとても敵わない。兵士達は退却するしかなかった。


「うまいな。戦闘にクムール兵は関与しないのか」

「占領時のために兵力を減らしたくないのだろう」


 この前見て来たように、クムール兵の体つきは貧弱で、1人が相手ならば勝てる。だからこの戦法にしたのだろう。モンスターを自在に操る方法はわからないが、動く石像(ゴーレム)の中にある畜魔石(チャージ・ストーン)とあの子達を思うに、キャフは憤怒の念にかられた。


「あぶない!」

「キャ!」


 突然、動く石像(ゴーレム)がキャフ達が乗る雲を目がけ、投石を仕掛けてきた。予想より射程距離が長く、間一髪避けて慌てて上昇する。油断した。


 鷲獅子(グリフォン)炎隼(ファイア・ファルコン)等の鳥獣系モンスターはいないようだ。この前の魔導将軍イシュトも気配を見せない。まだ序盤で、お互い手探りなのだろう。戦線は長く伸びており、一箇所に十分な戦力を割けないのかも知れない。


「もう少し先まで行くか?」

「そうだな、俯瞰して見ないと、何が起きているか分からないな」


 悪戦苦闘している兵士達に悪いとは思いつつ、ペリン山脈の先まで飛んで行く。


 辺境の村は、完全にクムール兵の拠点と化していた。更に遠くまで見渡すと、魔獣亀(デス・タートル)の一団は沢山の荷物を背中に背負い、チグリット河へ向かっている。逆にクムール帝国からやってくる魔獣亀(デス・タートル)もいる。強奪品を本国に送り、新たな補給品を持って来たのだろう。


「ああ、そのための魔獣亀(デス・タートル)か。水陸両用だな」

「着々と、拠点を作っているな。早く追い出さないと既成事実が作られるぞ」


 フィカが恐れる通りだ。このまま占領され続けたら、いつの間にかクムール帝国の領土になる。そして数年後、着々と領土を広げていくに違いない。


 危機感を感じながら、キャフ達の雲は再び前線へと戻ってきた。戦況は相変わらずで、アルジェオン側に特段有利な状況は生まれていない。


「じゃあ、そろそろやるか」


 そう言うとキャフは魔法杖を構え、術式を唱える。


雷剣(サンダーソード)!!」


 空に大きな雷の剣が沢山現れ、動く石像(ゴーレム)達めがけて降り注いだ。続々と足に突き刺さる。弓兵だった頃の戦いとは違い魔法全開のキャフが放つ技は凄まじく、動く石像(ゴーレム)の足が瞬時に切り裂かれ、バランスを崩し次々と倒れていく。


「さすがキャフ師です♡」


 以前と百八十度違うミリナの褒め言葉にも、無関心なキャフである。


「うぉおお!!!!」

「味方が現れたぞ!!」

「クムールを、やっつけろ!!」


 キャフの一撃で、前線の趨勢は一気に変わった。

 兵士達の士気も上がり、ときの声があちこちから聞こえる。

 クムール軍達は後退し始め、アルジェオン軍は勢いを盛り返した。


 キャフ達は、前線から少し離れたところに降り立った。


「お前らも頑張ってくれ。通魔石(コミュ・ストーン)で連絡を取り合おう。ミリナとラドルは一緒になって戦え」

「はいニャ」

「分かりました」

「ああ。今日はお前の心配をしなくて良いからな、思いっきりやれるさ」


 そう言うと、4人は散開した。


 キャフは一番激しい戦闘が行われている旧道へと向かう。フィカに言われて今までお荷物であったと気付かされたキャフだが、もうそんな心配はない。


 倒れている動く石像(ゴーレム)達の処理は兵士に任せ、モンスター達に集中する。低級モンスターばかりなので倒すのは難しくない。ただ、民間人やアルジェオン兵に被害が及ばぬようにするのが大変だった。


 やがて戦局はアルジェオンの敗色濃厚だった先程から次第に押し気味になり、刑務所の街を超えてとうとう旧道の一部を奪還した。敗走した兵士たちも再びやってきたから、戦力的にもしばらくは大丈夫だろう。


「君はイデュワを救った魔法使いかい? 助かったよ。ありがとう」


 兵士の一人がキャフに駆け寄り、礼を述べる。


「ああ、お疲れさん。あんたんとこも、大変だな」

「そうだな。隊長はいの一番に逃げていったよ。出世欲の深い奴らは誰も来たがらない。だが我々は、アルジェオンを守らねばならぬ」

「そうだな、オレも協力するよ」


『師匠、どこにいるニャ?』


 ラドルからの連絡が入る。


『旧道の破られた箇所だ。兵士達と一緒にバリケードを作っている』

『手伝いに行きますニャ』


 やがて3人も来て、クムール兵が入って来られないように封鎖する。

 魔獣亀(デス・タートル)も防げるかどうかは分からないが、無いよりはマシだ。


「帰るぞ」


 一通り作業も終わったので、キャフ達は帰ることにした。

 余裕ができたからモンスターの死体を幾つか見てまわる。


(ん?)


 すると、頭に何かが埋め込まれているのが分かった。

 試しに一匹のゴブリンから抜き取ってみる。


(何だ、こりゃ?)


 それは細い触手が多数ある、寄生虫みたいな代物だった。動かないので生物ではなさそうだ。根っこには畜魔石が入っている。どうも、これでモンスター達を操っているらしい。



 キャフは、同じような物がないか他の死体も調べてみる。

 するとどのモンスターの頭にも似た物が入っていた。


(これで操っているのか……)


 仕組みは分からない。解析する必要がありそうだ。

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