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魔法を使えない魔導師に代わって、弟子が大活躍するかも知れない  作者: 森月麗文 (Az)
第一章 魔導師キャフ、追放されて旅立つ
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第011話 オークの村

前回のあらすじ


オーク達はトリュフが大好き

空腹に耐えきれず、ラドルが暴走した!


 2人も慌ててラドルを追いかけるが、警備兵に見つかった。

 警備兵は槍を携え、明らかに不審者の3人を警戒している。


「ブヒ! ブヒブーヒ?」

(何しにきた?)


「……何て言ってるニャ?」

「わたしも分からん」

「仕方ねえな、オレに任せろ」


 キャフは一歩前に出て、昔教わった記憶を頼りに警備兵に話しかけた。


『ブッヒブヒ!』

(失せろビッチ!)


 キャフの呼びかけに、警備兵は怒りで顔が真っ赤になる。

 キャフのオーク語が通じていないのだが、本人は気付いてない。


「ブフ? ブヒブヒブヒッ!」

(お前何を言ってる? オレを誰だと思ってるのか?)


『ブッヒブヒ! ブフフブヒヒーー!!』 

(クズ、はよ飯よこせ!)


「ブーヒ! ブヒブッヒ!!」

(お前、なんて態度だ?)


『ブッヒッヒ、ブッヒヒ〜』

(お前のかーちゃん、でーべーそー)


「ブヒブヒッブヒ!」

(村長に頼んでぶっ殺してやる!)


 どうやら、警備兵は本気で怒ったようだ。

 怒りに震える警備兵は、ピーッと笛を吹いて仲間を呼んだ。

 瞬時に武装した別のオーク達がやって来て、3人を取り囲み縄で拘束する。


「おい、話が違うのでは無いか?」

「猫はマズいニャ! 食べられないニャ!」

「すまん、しくじったかもしれん」


 屈強なオーク共に囲まれ、さすがに抵抗できない。

 3人は縛られたまま村内部に連れて行かれた。


 木造だが、どの家の造りもしっかりしている。かなりの生活レベルだ。入口から続く道は一番広く、両脇の建物からオーク達がじろじろ見てキャフ達をうかがっている。


 戸数は二、三百はありそうだ。遊んでる子供も多い。千人ほどの規模だろう。悪臭も無く清潔なので、上下水道などのインフラも完備されているようだ。高度な設備である。


「思ったよりもしっかりした村だな。冒険者時代に来た記憶はあるか?」

「いや、こんな村、聞いた事も無いぞ。それより捜索隊の記録にはねえのか?」

「ないな。どうやら思ったより森の深い所まで来てしまったようだ」

「帰りたいニャ〜」


 オーク達は何も言わず、3人を引っ立てて行く。


「どうなるかな」

「処刑される可能性もあるな」

「ラドル、死んじゃうニャんか? いやだニャー!!」


「ブヒブヒ!」 

『静かにしろ!』と、言っているようだ。


 真っすぐに進むと、やがて正面突き当たりに一番大きな屋敷が見えた。

 ここだけ二階建てだから、村長の家なのだろう。


「ブヒ!」 

『入れ』と言ってるようなので、そのまま進む。


 家は風通しが良く,真っ昼間で暑いこの時間帯でも快適だ。

 オークに建築技術があるとの情報はなかったが、予想以上である。


 壁に飾られた絵や家具類の調度品も、王国の中流レベルの家庭と遜色ない質だった。そして中央にある豪華なソファに、一匹の大男がふんぞり返っている。デカい。暴れると屋敷が破壊されそうだ。

 

「ブヒブヒ? ブーヒー」

(親方様、不審者を捉えました)


「ブ? ブーブー ブブッヒ!」

(分かった。ご苦労 通訳を呼べ!)


 大男の眼光は鋭く、この村を背負っているオーラをまとっている。

 その大男が何かを命じたようで、一匹のイケメン豚が奥からやって来た。


「こんにちは。クムール帝国の方では無さそうですね」


 片言ながら、言葉が通じる。通訳らしい。


「ああ。あんた、アルジェ語を話せるのか?」


 ここに来て初めて言葉が通じ、キャフは安堵する。


「少々なら。クムール語は話せますが、アルジェ語は難しくて」

「ともかく助かった。森で遭難したんだ。少し食糧をもらえたら、直ぐに出て行く」


「ブヒブヒヒ。ブヒフッフー。ブヒヒヒブブヒ」


 通訳が大男に話しかける。


「ブヒ? ブーフ…… ブヒヒ?」


「『何かディールは無いか?』と仰られています」

「ディール?」

「取引ですね。食糧と交換するに値する何か、です」


「どうする?」

「ら、ラドルは食べられないニャ」

「いや、お前を差し出したりはせん」


 しばらく考えた後、キャフが口を開いた。


「お前ら、魔法は使えるのか?」


 通訳が、通訳する。


「ブーヒ、ブブブッブヒ?」


 すると大男は、多少不機嫌な顔をした。


「ブッヒブブ。ブブッヒブッヒヒ。ブブブー」

「『魔法使いは居る。だが我々は魔素が少ないから使えないのと一緒だ』、と仰られています」


「魔法杖のチューンナップをしてやろうか? おれなら数倍にしてやるぞ」

「ブブヒ? ブブッヒッヒ」


 大男は、半信半疑な顔をしている。


「『本当か? それならば魔法工房に案内させよう』と仰られています」

「分かった。案内してくれ」


 通訳が何やら大男に耳打ちすると、大男は通訳に対し、『行け』との手振りをした。通訳は3人に向かって来る。 


「わたしが案内せよとの事です。一緒に付いて来て下さい」

「助かった」


 3人は通訳のイケメン豚に付いて行った。

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