運命
心臓が脈打つ音が聞こえた。
呼吸音が聞こえた。
僕は少しだけ安堵した。
その色彩は僕のものではなかったんだ。
少し、何かが頭をよぎった。
昔々のそのまた昔の古い記憶。
嫌な夢。
どうしようもなかった現実。
「、、、ふぅ」
一度整理してみた。
そのとき僕と少女は紛れもない初対面だったんだ。
つまりその空間の色は神以外の神のもの。
神の血はこの世の全てを知っているようにカラフルに煌めく。
ふと、少女を魅た。
少女は絵画の中に閉じ込められているかのように静かだった。
しばらくして、少女が動いた。
上に向けた顔と視線を、ゆっくりゆっくりと下ろした。
その所作はどこまでも美しく可憐で、恐ろしかった。
そのときの僕にはなぜだか、厳粛で神聖に罪を裁く槌を振るっていたかのように見えていたんだ。
判決を下されるときの罪人気分だったよ。
最悪体験だろ?
少女はその場にいた誰よりも、高位の存在で在るかのようだった。
だが僕だって神様だ。
ここは僕がその場にいた彼等に代わって威厳を示そうと思った。
だのに、僕は第一声、少女になんてことを言ってしまったんだ!!
あんなの威厳の欠片もなしのつぶてだ!!
でも後悔はしてないよ。
だって僕は本気だったんだからね。
少女は僕の台詞を聴いて、初めて色を宿した。
「僕を殺して」