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bookend5 鋼の炎杖は怒っていた

 〜レフト・ジョーカー〜


 現在時刻、深夜の一時。明るく光っていた夜の街並みも、段々その明かりを消していき、街全体が眠り始める頃。

 俺とライトと三太は、ちょっと遅めの時間になってしまったが、就寝する事にした。

 もちろん三太の寝る場所は俺達と同じ部屋……いわゆる男子部屋だ。まぁ、女子部屋は男子部屋の向かいの部屋なのだが。元々男子部屋は俺の部屋だったし、女子部屋はライトの部屋だったからなぁ。


「ここが俺達の部屋。元々一人用の部屋だったのをこれからは三人で分けて使わなきゃならないから……お前、独占すんなよ」


 俺は三太を部屋に案内し、最後にそう釘を刺した。

 三太はういうーい、と気のない返事を返す。本当にわかってんのかコイツ。

 俺はやれやれと肩をすくめながら、少し立て付けの悪い部屋の扉をギィッと開けた……その時。


『ぬぅおい!』


「うわっ!?」


 突然、鋼の炎杖が俺の体に突撃してきた。

 俺はすんでの所で鋼の炎杖を掴み取って抑える事に成功したが、コイツはその程度で鎮まるような奴じゃない。その勢いに押され、俺はそのまま背中から後ろに倒れた。


『ふんがっ、ふんがっ!』


 床と激突した背中に大きな衝撃が走り、俺の呼吸は一瞬止まった。

 しかし鋼の炎杖は、そんな俺の様子を無視して、ふんがふんが言いながら炎を噴き出し始めた。

 俺は突然の火炎放射に慌てふためいた。


「うわ、おいお前! 火ィ噴くな火事になるから!」


 俺は鋼の炎杖の透き通った赤い宝玉部分にゲンコツを落とした。

 うわっ、硬ぇ……逆に俺の拳に痛みが走る。水晶玉にゲンコツした時の事を考えて欲しい。それに似た痛みだ。

 だが、鋼の炎杖にも俺のゲンコツは効いたらしく、杖身の部分を針金のようにぐにゃりと曲げながら呻き声を上げた。


『痛い……酷いやろ急に……』


 俺はその羊の鳴き声に似た呻き声を無視して、ため息を吐いた。


「どうしたんだよ急に」


 その俺の言葉に鋼の炎杖は再び炎を噴き出しながら激高した。


『どうしたんだよ、ちゃうねん! 兄ちゃんら、今日丸一日ワイの事忘れてたやろ!?』


「「……あ、そういえば」」


 俺とライトの言葉がハモる。

 そういや忘れてたなコイツの事……三太の事で色々あったからな……。

 鋼の炎杖はプンスカ怒りながら、ドンドンと足踏み(足は無いが)をする。


『ワイ、言ったやん! 朝飯終わったら起こしてくれって、言ったやん! なぁ!?』


「いや……俺は知らねぇよそんな約束。ライト、お前は?」


「僕もしてないよ」


 突然、した覚えのない口約束を引き合いに出してきた鋼の炎杖。俺もライトも、首を振ってそれを否定する。そんな俺達の態度に再びキレる鋼の炎杖。あ、これ無限ループだ。

 だがしかし、正直、俺達に非は無いと思うが……。だって、約束なんてした覚えねぇもん。

 俺はバタバタと杖身をねじれさせる鋼の炎杖をどうどう、となだめながら、助けを求めてライトと三太の方を見上げた。

 そこでようやく俺は気づく。三太の仰天した顔に。


「な、……なんで杖が喋ってんだよ!」


『ああ!? 何やねん兄ちゃん、杖が喋ったらアカンのかいな!?』


「え……いや、別にいいけども……え、俺なんで杖に怒られてんだ……?」


 困惑を隠せない三太に鋼の炎杖はずいずいと詰め寄る。

 おかげで俺は奴から解放され、倒れていた姿勢から上半身だけ起こした。そのままの姿勢で額の汗を腕で拭う。


「っ、ふぅ……」


「お疲れ、レフト」


「ああ、ありがと」


 俺はライトが差し伸べてきた手を掴み、立ち上がる。

 打ち付けた背中をさすりながら三太の方を見ると、三太は鋼の炎杖に何度も頭をポカポカと殴られていた。殴る……という表現が正しいのかどうかはわからないが。


「痛っ、ちょっ、痛ぇ!」


『やかましわ! 男ならこの程度で痛がるんちゃうわ!』


「いってぇな、何なんだよお前は!?」


『男ならくっだらない小さな事でうだうだあーだこーだ言ってんちゃうで! そんなんだから女にモテへんねん!』


「余計なお世話だ! ってか、何で俺、杖にここまで言われなきゃなんねーんだよ!?」


 三太は俺達に、助けを求めるように目線を向けた。

 その様子は傍から見てると、かなり愉快だ。

 俺もライトも、三太達から視線を逸らして同時に噴き出した。


「笑うな! 助けろ!」


 三太は俺達に顔を茹でたタコのように真っ赤にして激怒するが、それがまたおかしい。

 俺達はついに耐えられず、盛大に笑い転げてしまった。


「おい、レフト! ライト! 笑ってんじゃねーぞゴラァ!?」


 三太の怒号に鋼の炎杖の説教、そして俺達の笑い声。

 いつまでも続くと思われた騒がしい時間は、おやっさんの『夜中に騒ぐな』と振り下ろされたゲンコツ四発によって、呆気なく終わりを迎えたのだった。

書き溜めていたストックが無くなったので、ここで一旦休載致します。

次Fileを書き終えたらまた連載開始致しますので、よろしくお願いします。

次回更新は早ければ一月後……遅くても二ヶ月は超えないと思います。

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