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File5―0 その男、転生者につき 〜デジャブな出会い〜

今回から新章……ですかね?

よければぜひ評価やブクマや感想などよろしくお願いします。

 〜レフト・ジョーカー〜


 朝。ほのかに香る味噌汁の匂いに、ベーコンや目玉焼きの焼ける音。お茶碗にこんもり盛られたご飯は湯気を立てながらつやつやと輝いていた。


「……異世界に来ても和風の朝ご飯が食べられるなんて、考えてもみなかったよ」


 そう呆れたように笑うエルの後ろで、ライトもまた呆れたように笑っていた。


「ここ最近ウィンダリアは『日影国ヒカゲノクニ』の文化がブームになってる節があるからねぇ……もれなく我が家も、そのブームに乗っかってるんだろう」


 エルはライトのその言葉に、顎に指を当ててうんうんと考え込んでいた。


「確か、ヒカゲノクニ……って、私の元の世界で言う日本みたいな所だよね?」


「そうだよ。キミにとっては、このブームは結構ありがたいんじゃないかな」


「うんうん……味噌汁飲めるのはありがたいねぇ」


 腕を組んで笑うエルを席に着かせて、俺達は温かいうちに朝食を頂くことにした。

 ちなみに食卓を囲むのは俺とエルとリナリアとおやっさんの四人。イラは住み込みではなく家から通いなので朝食はもちろん家で食べてくるし、ライトはそもそも食事の必要は無いのである。

 ライトは今、外の掃除や花壇の水やりとかをしている事だろう。

 鋼の炎杖は……杖だし、何も食わない。今アイツは俺とライトの部屋でまだ寝ている。飲食は必要ないが睡眠は必要ってのは、どういうわけなんだろうか。


「いっただきまーす!」


 エルは開口一番、目玉焼きに醤油をかけて白身を食べた。

 俺も味噌汁を啜る。出汁と味噌がいい感じに組み合わさって美味い。

 俺はベーコンをつまみながら、リナリアに話しかけた。


「リナリア、ここでの暮らし、慣れたか?」


 リナリアは目玉焼きに塩を振る手を止め、笑って答えた。


「お陰様でね」


「そりゃ良かった。あ、リナリア、俺にも塩くれ」


「ん、はいどうぞ」


「ありがと」


 無言で新聞を読みながら白米を口に運ぶおやっさんの横で、俺もリナリアのように目玉焼きに塩を振りかけた。

 目玉焼きには塩。シンプル・イズ・ベストだ。

 そんな感じで何でもないような朝食を進めた。

 やがて食い終わり、食器を洗面台で水に浸ける。

 さてこの後どうしようか……。


「あ、ライト」


 俺は窓の外で、花壇に水をやっているライトを見つけた。俺はそんなライトを労おうと外へ出ようと、扉の前に立った――その時。



「おっ、おいっ、今、何年の何月何日何曜日だ!?」



 そんな男の声と共にバァン! と開かれる扉。

 前にも話した通り、うちの扉は内側に開く観音開き式である。

 まぁだから、このように勢い余って喫茶店に突っ込んでくるバカがいた場合、ドアの内側にいた人間はそのドアと激しいキスを交わすことになる……ってこの流れすっげぇデジャブ……。今回もその被害者は俺だ。


「ウばぁッ!?」


 俺は後ろへよろめき、激しく打った顔面を抑えながら倒れた。

 クッソこんな感じの光景ちょっと前に見た事あるぞ……!?

 俺は鼻血と鼻の骨折のどちらもしていない事を確認し、鼻頭を抑えながら立ち上がった。


「おいテメェ! いきなり入って、どういう了見だこの野郎!」


 俺はうがーっと吠えながらいきなり喫茶店に入ってきたバカに突っかかる。

 そのバカはそんな俺にメンチを切りながら答えた。


「今、二千何年の何月何日何曜日だって聞いてんだよ……?」


「ああ? その前に謝るのが筋だろーがオイ」


「あ? あー……悪かったよ」


「何だその態度はー!」


 俺はついに我慢の限界に突入し、目の前の男に飛びかかった。

 男は染め上げたような金髪をワックスで固めており、他にも所々、何ていうか……背伸びしたようなカッコつけみたいな要素が垣間見える。

 俺は男の頬をつねりながら怒鳴りつけた。


「この金髪野郎! その髪型とか、カッコつけてるけど背伸びしてるみたいで似合ってねーんだよ!」


 その言葉に男もカチンと来たのか、俺の両頬を思いっきり外側に引っ張りながら怒鳴り返してきた。


「んだと、この茶髪野郎! お前のその服装だって、カッコつけて背伸びしてるよーにしか見えねーんだよ!」


「なんだとこの野郎!?」


「ゴラァやるか!?」


 ゴロゴロともつれ合いながら俺達はドタバタと醜い争いを続ける。

 そんな騒ぎを喫茶店の出入口で立てていれば、当然目立つ。

 リナリアやおやっさん、外にいたライトまでもが、なんだなんだとこちらを見に来ていた。

 そう、この喫茶店に住み込みしている誰もが、集まってきていた。

 それはもちろん――


「……あれ?」


 ――園寺映瑠。エルだって、この騒ぎを確かめに見に来ていた。

 そして、エルの声を聞いた途端、この金髪男の動きがピタリと止まった。

 男は惚けたような顔で、エルの方を向いて目を見開いた。


「……映瑠?」


「……やっぱり、サンちゃん?」


 ……よくわからんが俺は、とにかくまた面倒臭くなりそうだなぁ、と嫌な予感を募らせていた……。



 ****



【キャラクター設定】〜出門イデカド 三太サンタ


 ・身長……一七七センチ


 ・体重……七五キロ


 ・種族……人間(転生者)


 ・年齢……一七歳


 ・職業……高校二年生(もうすぐ高校三年生)


 ・誕生日……六月六日


 ・元の世界では……映瑠の幼馴染でありながら、有名な不良。名前を読みかえたり並び替えたりして『デーモンサタン』とか呼ばれて恐れられている。本人はその呼び名を気に入っている。厨二病だが根はいい奴。喧嘩の腕は超一流。


 ・ペットの名前……フェンリル(柴犬。捨てられていた所を保護)、ヘル(ペルシャ猫。近所に住んでいた、三太が幼い頃から顔馴染みのお金持ちの老人が飼っていたが、数年前に老人は死去。親族の遺産争いでゴタゴタしていた中、猫だけは血縁関係にない三太が無理を言って引き取った。彼曰く『この猫に人間の醜い遺産争いなんて見せたくなかった』らしい。ちなみにこの名前も、その老人がペルシャ猫を飼った時にまだ幼かった三太に名前をつけさせてくれた)、ヨル、ムン、ガンド(三体ともジャンガリアンハムスター。近所に住む少女の家で飼っていたハムスターが沢山子供を産んでしまい、困っていた所を三太が引き取る)


 ・三太の名前の由来……本当は二人、兄がいたはずだった。しかし、長男の『一郎イチロウ』は産まれることはなく、死産に終わった。その後授かった、一郎を忘れないようにという意味で『次郎ジロウ』と名付けられた赤ん坊も生まれながらの障害により半年で死去。その後に授かった赤ん坊は、一郎と次郎を忘れないように、そして死のジンクスから逃れるために、名前を『三太サンタ』にした。その結果元気に育ちすぎた。


 ・本人はこの名前を……気に入ってはいない。気に入るはずがない。しかし、毎回涙ながらに両親から由来を語られると、何も言えなくなる。

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