File4―33 怪力強盗と血色の悪魔 〜僕の炎が燃え滾る〜
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〜レフト・ジョーカー〜
俺の目の前で、ライトは白い巨人の口から飛び出した爆炎に飲み込まれた。
ライトは身体中から煙を上げながら地面へと墜落していく。
「ライト!」
俺はライトの名前を呼びながら、受け止めるために墜落点に先回りしようとするが……間に合わない。砂塵を巻き上げながら、ライトは地面に墜ちた。
俺は焦りながらライトの無事を確認する。
煙を上げながら力なく横たわるライトの姿は、とても痛ましく……大丈夫そうには見えなかった。
「ライトォ!」
俺はライトの元に走り寄る。
墜落点の近くにあった小さな花は、墜落の衝撃でどこかに散ってしまっていた。それがなんだか、俺に悪い予感を感じさせるのだった……。
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〜ライト・マーロウ〜
乱れた思考で、蜒輔?菴輔→縺九@縺ヲ……僕は何とかして、襍キ縺堺ク翫′繧阪≧縺ィ縺励※縺?◆……起き上がろうとしていた。
くっ……思考ガ……まとまら、無い。指一本すら蜍輔°縺帙★、僕はその場に寝ていルコとしかデキナ勝ッた。
「ライ……――イト……!」
この声……レフ、レレレフフ……落ち着こう。
僕は巻き起こるバグをヒッシに押さえつけながら、彼の名前を思い出す。
そう。彼は僕の逶ク譽……違う。彼は僕の相棒だ。名前は――レフト。
僕はレフトの名前を呼ボウとしたガ、声が蜈ィ縺丞?縺帙↑縺九▲縺……声が出せなかった。
何かに起き上げられる感覚。レフトが襍キ縺薙@縺ヲ縺上l縺……起こしてくれたのだろう。
「……ト!? ラ……ト!?」
ノイズ混じりに聞こエるレふトの声。
僕は何とかソノコエに応えたかったが、指先一つ動かせない。
動け……動けよ……! 僕の体……!
その時だった。突然、頭の中に謎のデータが作り上げられたのを感じる。
……修正プログラムに、これは……機能のデータ?
いつの間にか、突然僕の脳内に作り上げられた修正プログラムのおかげで、僕の思考回路や五感は鮮明になっていた。元に戻った……治ったと言ってもいい。
僕は突然の出来事に戸惑った。
何だこのデータは? 僕の体に、こんな能力は無いはずだ。
そして、この機能のデータ……。
そのデータファイルの名前は、『焜炉』。僕の『扇風機』が風だとするなら、この焜炉は……炎か?
僕はそのデータファイルを開く。
(……ッ、これは……!?)
開いた瞬間、脳内を埋め尽くすのは……今回の事件の記憶。
セルベールに抱いた嫉妬の感情や、怪盗ダッシュに負けた時の屈辱などの感情……その他にも、僕はこの事件で沢山の、焼き尽くされるような感情を抱いた。
その感情一つ一つが、炎になって僕の心や体を焼いていくような……そんな感覚に陥る。
(……僕は、どうなろうとしている?)
僕が今抱いているのは……恐怖の感情だ。
このデータの波に身を任せてしまえば、恐らく僕は新しい力を手に入れられる。このデータは新たな機能のものだ。このデータを使えば、僕が新たな力に目覚めるのは当然の結果だろう。
しかし、もしそうなった場合……僕は恐らく、世界初の機人族となる。
そもそも機人族の機能は一人につき一つ。それ以上追加されることも減ることも、変更されることもない。それが世界の常識、当たり前だった。
他の種族で例えるのなら、僕達機人族にとって機能が増えるというのは、突然三本目の手足が生えてくるようなもの……いや、そんなレベルではない。突然背中から翼が生えてくるようなものだ。
十中八九、その結果苦しむ事になるのは目に見えている。自分は本当に人なのか、これからどうすればいいのか、など……悩みはどんどん湧き出てくるに違いない。
悩む僕の耳に……レフトの声が聞こえてきた。
「ライト……しっかりしろ! おい、ライト!」
……やれやれ。自らハードボイルドを名乗るのなら、こんな時に取り乱すのはやめたまえ。
僕は初めて会った時からずっと、いつまで経ってもハードボイルドには程遠い我が相棒に呆れた。
もし、僕が新たな機能に目覚めたら。レフトは、どんな反応をするだろう。
気味悪がられるだろうか……いや。
多分、人並み以上に驚いて……そして、すぐに受け入れてくれるだろう。新しい能力がカッコよければ、気味悪がるどころか羨むに違いない。
僕はそんなレフトを想像し、可笑しくなった。
僕の相棒は、きっと僕がどうなろうと受け入れてくれるだろう。なら、僕は……僕は。
僕は、迷いを少し残したまま、自らの変化を受け入れた。
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〜レフト・ジョーカー〜
俺は目を見開いていた。
俺の腕の中で気を失っているライトが、突然変化し始めたのだ。
具体的に言えば、いつもは緑色のライトの髪が、根元から赤く染まり始めたのだ。
やがて、その髪は先端まであっという間に真っ赤に染まってしまう。
俺は思った。まるで、人間族が覚醒した時のようだ、と。
人間族が覚醒したのなら、見た目にこれくらいの変化はあって当然だ……しかし。
ライトは機人族だ。機能だって風を操るものだ。見た目に劇的な変化が起こるはずはない。
もしかして、ライトの身に何かヤバい事が起こってるんじゃ……!?
そんな俺の心配は他所に、ライトはパチリと目を覚ました。
そのままむくりと体を起こす。
「やぁ、心配かけたね」
ライトはそう言って笑った。
しかし……その目は。
いつもの緑眼ではなく……赤く、染まっていた。
「ライト……? お前、髪と目、どうしたんだよ?」
「ん……髪と目……?」
俺は懐から手鏡を取り出し、ライトに見せつけた。
ライトは自分のその姿を見て、一瞬だけ驚いたが……すぐに笑った。
「はは、こうなるんだ」
「ライト……?」
「安心したまえ、レフト。多分大丈夫だ」
「いや多分って」
「逆にね、レフト。僕は今、超強くなってるよ?」
そう言ってライトはニコリと笑う。
俺はそんなライトに、おずおずと質問を続けた。
「……お前の体、何が起きたんだよ?」
ライトは、笑みを崩さぬまま答えた。
「ちょっとしたイメチェンさ」
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〜VS白い巨人〜
『ウオオオオオオオオオオオオオ!』
白い巨人が咆哮する。
その太い腕や足を振るい、様々な攻撃の嵐を耐え忍ぶ。
全身から電撃を放ち、放たれた魔法や飛び道具を撃ち落とす。
バーンはそれを見て、舌打ち一つ。
「……確かにコピー能力は消えたが。戦いに慣れてきやがったな」
段々、白い巨人はこの怒涛の攻撃の嵐を上手くいなすようにまでなっていた。
コピー能力は消えても、学習能力は消えていない……という事だろうか。
白い巨人は何度も吠えながら、段々とこの攻勢を押し返すようになっていた。
「『激闘心火』使うには……人が多すぎんな。もし暴走したら、目も当てられない」
バーンは歯を噛み締めた。
もし自分の能力が暴走したら――昨日の怪盗ダッシュとの戦いの時のように、飲まれてしまったら。
周りには自分以外の人も大勢いる。そんな状況で、敵味方見境なく襲いかかるような事になったら……。
バーンは自分の能力の使えなさに溜息をついた。
「俺一人なら使える能力なんだがなぁ……」
と、その時だった。
バーンの後ろで、突然何かが燃え上がった。
「なんだ?」
それに気づいたバーン達は後ろを振り返る。
もしやまた面倒事ではあるまいな……そんな風に危惧しながら。
だがしかし。そこにいたのは……髪と目が赤く染まった、ライト・マーロウの姿だった。
ライトは白い巨人を見上げて笑った。
「僕の炎が燃え滾る」
それと同時にライトは自分の右腕についているダイヤルを回した。
よく見たらそのダイヤルは、髪が緑色の時よりも微妙に変化している。
機械音声がライトの右腕から流れた。
『弱火!』
ライトは右腕を白い巨人に向け、そして――火炎球を発射した。
その火炎球は白い巨人の肩の辺りに当たり、そこに刺さったままだった鋼の炎杖をどこかに吹き飛ばした。
『ぬわああああああああもう散々やわあああああああ!?』
先程までも自分の事は完全に忘れ去られ、攻撃の嵐に白い巨人共々晒されていた鋼の炎杖は、叫び声を上げながらどこかの草むらに消えた。
ライトはバーンの肩に手を置いて流し目を送る。
「あの杖、喋るようだし見つけるのは簡単だろう。探して回収してあげてくれ、バーン・アイシクル」
バーンはそう言って自分の肩から離されるライトの腕を掴んだ。
「おいライト。どういう事だ、その姿にその炎は」
「……やっぱり驚くよね」
「当たり前だ。お前に何が起きたんだ」
「僕にもわからない。ただ、一つだけ言えるのは――僕に新しい機能が増設されたって事」
そのライトの言葉に、バーンは目を見開いた。
そんなの、有り得ない。有り得るはずがない。
そんなバーンにライトは優しく微笑みかけた。
「安心したまえバーン・アイシクル。僕はこの通り、ピンピンしてるし暴走もするようには思えない。……僕自身、今のこの状況はあまりよくわかってないんだ、キミが受け止めきれないのはわかる。けど、今はそんな事を気にしている場合じゃないだろう?」
「……そう、だな」
今優先すべきは、白い巨人の排除だ。
バーンはそれを思い出し、気を引き締めた。
ライトはバーンの背中を押し、言葉をかける。
「鋼の炎杖、頼んだよ」
「憲兵をパシリに使うな」
そんな事を言いながらも鋼の炎杖を探しに行くバーンに、ライトはクスリと笑う。
そうしてから、ライトは右腕のダイヤルを回した。
『強火!』
機械音声を合図に、ライトの両手両足から炎が噴出された。まるでジェット機のように噴出される炎によって、段々とライトの体は浮き上がる。
「……飛んでる」
その場にいた全員が、浮き上がったライトを見上げていた。
そして、王城の医務室の窓からも、ライトの体を診た技術者のウェアチェル・イーサカがその光景を見ていた。
「うっそ。あの子の機能、風でしょ? 炎なんて……マジかー……」
そんな周りの反応も気にならないという風に、ライトは笑って白い巨人へと飛んでいく。
そのスピードは、まるでジェット機のよう。
あっという間に白い巨人の眼前に辿り着いたライトは、そのままのジェット噴射の勢いで巨人の顔面を殴りつけた。
『グオオッ!?』
とてつもないスピードで鼻っ面を殴られた白い巨人はよろめく。
しかしライトは止まらない。巨人の周りをジェットで飛びながら、何度も突撃。ダメージを与えていく。
『グオオオオオオオッ!』
白い巨人は雄叫びを上げながら電撃を放つ。腕を振り回し、周りをビュンビュン飛ぶライトを撃ち落とそうと、叩き落とそうとする。
しかし、その電撃のスピードよりも腕のスピードよりも、ライトの方が速かった。
ライトは迫り来る電撃や豪腕をかわしながら、白い巨人の体を殴る。
そして、最後にライトは高く高く飛び上がり、そして白い巨人の脳天めがけて、右腕のダイヤルを回しながら急降下した。
『中火!』
ライトの右腕に炎が纏わり、そして――
「食らえっ!」
炎の鉄拳に、ジェットによる急降下の勢いが加わったそれは、白い巨人にとっては痛恨の一撃だ。
『ウオオオオオオオオオオオオオ!』
白い巨人は対応しようにも間に合わない。
白い巨人の脳天に、ライトの拳が突き刺さった。
よろめく白い巨人はその場に倒れ込む。
ライトもその近くに墜落するように着地した。
そんなライトに声がかけられた。
「おいライトォ! これ使えこの野郎!」
その声の正体は、バーンだ。
バーンは何故だか鼻息荒くイラつきながら、鋼の炎杖をライトへと投げ渡した。鋼の炎杖も叫びながらライトの方へ飛んでくる。
ライトはキャッチしたそれを強く握り締める。
『うう……あんな急に投げんといてーな……。ん、初めましてやなぁ兄さん! いっちょ一発決めたりましょうぜ!?』
「……ああ。よろしく、鋼の炎杖」
ライトは右腕のダイヤルを最大まで捻った。
ライトの右腕から機械音声が流れる。
『必殺!』
ライトの全身から灼熱の炎が揺らぎ出る。
更にそこに、鋼の炎杖からの炎も加わり――
「行くよ」
『了解!』
――そして、白い巨人へとトドメの一撃――爆熱の炎を全身に纏っての、体当たり。
しかしそれはただの体当たりではない。その体当たりは一つのとてつもなく大きな火球となって、月夜に晒されるこの王城の庭を昼間のように明るく照らした。
そして、その大きな大きな火球は、白い巨人を飲み込み――爆発。白い巨人は断末魔を上げる事なく、一瞬で燃やし尽くされた。
辺り一面に美しい火花が、蛍のように舞い散って消えた。それはまるで、この事件の終幕を祝う花火のようで……。
「……あーあ。いい所持ってかれちまった」
レフトは、その光景を一歩離れた所で見ながら、ボヤくように月を見上げたのだった。
「いいなぁ、あの炎。かっけーなぁ」
最後にそう言い残して……。
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【小話】〜鋼の炎杖&バーン〜
「鋼の炎杖探せったって……どうすりゃいいんだ。呼べば返事すんのか? ……少し恥ずいが仕方ないか。……お、おーい、鋼の炎杖ー」
『……うう。こっちやでこっち〜』
「うわマジで返事した。どこだよ」
『こっち〜』
「そっちか」
『うう……おお、兄さん、見つけてくれておおきに!』
「いや……別に礼には及ばねぇよ」
『おっ、今のカッコええねぇ兄さん。もしかしなくても、モテるやろ?』
「な訳ねーだろ」
『えっ、モテないの兄さん』
「……まぁ、モテた試しはあるが……若い頃だ」
『へー。じゃあ、そのモテまくりの若い頃はヤリまくりやなぁ。毎夜毎夜腰振ってたん?』
「……へし折るぞ杖ゴラ」
『ちょっ、待って待って兄さん! 冗談やがな! 後、ワイ一応この国の国宝やで!?』
「ったく……国宝じゃなけりゃへし折ってるからな」
『もうホンマに冗談通じないわぁ。モテへんで? ……って、モテてたんやっけ。あ、でもその性格じゃ付き合うても長続きはせんやろなぁ』
「…………うるせ」
『あ、もしかして兄さん童貞? 未だにもしかして童貞なん? 結構兄さんええ歳やろ?』
「………………………………」
『え、兄さんもしかして図星やった? あーそれはスマンなぁワイも冗談のつもりやったんやけどなぁ!』
「……ッ、おいライトォ! これ使えこの野郎!」
『えっちょっと兄さんそんな振りかぶって投げんといてああああああああああああ!?』
――そしてライトに投げ渡される所に続く――




