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File4―30 怪力強盗と血色の悪魔 〜慟哭に集え、皆の衆〜

よければぜひ感想やレビューなどよろしくお願いします!

 〜ウィンダリア王城〜


 その慟哭は王城全体に轟いていた。

 まるで地の底から揺るがすように轟くその叫びは、王城にいる者全ての動きを止めていた。

 何かが起こる――そう思わせるには、その慟哭は充分たる力を持っていた。

 そして、その慟哭の主――白い巨人と相対していたバーン隊は。


「……やっちまったかな」


「やっちまったかもでありますな」


「落ち着いてる場合じゃないでしょ!?」


 うちわを扇ぎながら冷や汗を流すバーン、その意見に賛同するリュー、そんな二人に青ざめながら突っ込むラヴィー。

 そもそもこんな状況になったのは、他でもないバーン隊が原因であった。いや、仕方が無いと言えば仕方が無いのだが……。なるべくしてなった結果、と言った方がいいだろう。

 コピー能力に近い能力を持つ白い巨人は、ジャッカーの電撃能力を身につけ、その能力で辺り一面に放電攻撃を行っていた。このままでは王城に被害が出る――そう焦りを感じたバーン隊は、最低限の反撃により何とか王城を守っていた。

 ……しかし、最低限と言えどもやはり蓄積すればそれなりのものになる。

 その結果が、この慟哭だ。


「……ったく。殴ってもダメ蹴ってもダメ、どーしろってんだよ」


 ジャッカーは自分の十八番である電撃能力をコピーされた腹いせなのか、普段よりも口調荒く白い巨人を罵っていた。

 そしてバーンは、このままではこちらが消耗するだけである、と危惧していた。

 その時だ。


「うわっ、なんだあのでかいの!?」


 他の憲兵達が、この慟哭を聞きつけてやってきた。

 バーンはそれを見て、内心で安堵の息を吐く。

 これで一旦戦況を立て直すために退避することが可能になった。

 バーンはバーン隊の全隊員を集め、そして、この慟哭に引き寄せられてぞろぞろとやってくる他の憲兵達に、この場の引き継ぎを頼むことにした。


「おい、お前ら」


「あ! バーン先輩お疲れ様っす! ……あの巨人なんなんスか!?」


 憲兵達が皆、現れたバーンに敬礼する。バーンは憲兵の中でも優秀な実力派であり、彼を慕う者は多かった。

 バーンは一通り彼らに説明した。攻撃をしたらそれをコピーされてしまう事や、ここに至った経緯などを簡潔に話す。

 そして、ずっと戦い続けていたバーン隊は引き継ぎを済ませ、一旦退避する事を決定した。


「任せたぞお前ら。よし、それじゃ、バーン隊は一旦退避する! お前ら俺についてこい」


 バーンの号令にバーン隊全員が返事を返し、その場から立ち去っていく。

 そして、慟哭が轟く中……騒音の中で静かに、ジョケル博士の放ったドローンから白い巨人へと薬品が注射された。その薬品には白い巨人の構成要素である細胞を分解する『完全生命体細胞分解酵素』が含まれており、白い巨人の細胞の外部からの刺激への学習能力を無効化する力があった。

 そしてそのドローンは人知れず自爆……静かにその残骸を王城の庭に落とした。

 さて、これで完全無敵の白い巨人は倒せるようになった訳だが……それを知る者は、この王城の中には誰一人としていない。

 兎にも角にも、こうしてこの事件の最後の火蓋は落とされた。

 この事件の結末がどう転ぶのか……それは、彼等彼女等次第だ。



 ****



 〜ライト・マーロウ〜


 僕と怪盗ダッシュは、轟いていたその慟哭に首を傾げていた。


「おい、怪盗。この慟哭はなんだい?」


「俺だって知らねぇよ」


 ……どうやら嘘はついていないらしい。

 僕は足に力を入れ、よろよろと立ち上がる。

 視線を上げると、奴も同じように立ち上がっていた。

 奴も僕の視線に気づいたのか、ニヤリと笑いながら話しかけてきた。ウザ。


「なぁ、ヒョロガキ」


「何?」


「ここは一時休戦としよーや……なんか、嫌な感じがする」


「……そうだね」


 僕は奴の提案を受け入れた。

 本当は心の底から嫌だったが、この得体の知れない状況で好き嫌いは言ってはいられない。

 僕と奴は重い体を引きずりながら、瓦礫まみれの大広間を後にした。

 慟哭の正体を探るために。



 ****



 〜レフト・ジョーカー〜


「おいニュエル。お前何企んでんだ?」


「この声に関しては俺は何も知らねぇよ……」


 俺とニュエルは互いに顔を見合わせながら、この慟哭が何なのかを考えていた。

 ……なんだか、心がざわつく。嫌な予感、虫の知らせ……そのどれとも違うような、ざわつき。俺はその感覚に顔をしかめ、胸の前で握り拳を作った。

 俺はニュエルに提案した。


「……なぁ、ニュエル。見に行かね?」


「なんでそんな仲良さげなんだよ」


「昨日の敵は今日の友っていうだろ」


「今日も敵だったろーが! 今の今まで殺し合ってたろーが!」


「ろーがろーがうるせぇよ! ガチョウかお前は!」


「誰が鳥だ!?」


「もうやめだやめ! ……なんか嫌な感じすんだよ、この声」


 俺は上を見上げた。

 月の光が射す窓に、一瞬大きな影が映る。

 俺はニュエルを再び見据え、睨みつけた。


「俺は行く。お前はどうする?」


 俺のその問いに、ニュエルは少しだけ逡巡し、やがて手に持っていた血のナイフを放り投げた。


「……やめだ。萎えた。好きにしろよ探偵」


「お前はどうすんだよ」


「……そうだなぁ。お前への殺意は引っ込んだが……代わりに、この声出してる奴に、殺意が湧いてきた」


「よし。なら行くぞ」


 俺はニュエルと共にこの瓦礫まみれの大広間から出た。ニュエルに刺されて痛む左足を引きずりながら、一歩一歩歩いていく。

 微かに残る風の香りが俺の鼻腔を突いた。もしかしたら、ライトも一足先に声のする方に向かったのかもしれない。

 俺はどんどん先へ進んでいくニュエルの背中に言葉をぶつけた。


「おいニュエル! お前が左足刺したせいで俺歩くの遅いんだけど! 待ってくれたりしねーの!?」


 そんな俺にニュエルは振り返り、冷たい眼差しを向けた。


「おい探偵、念の為に言っておく」


「なんだよ」


「昨日の敵は今日の友、ってお前は言うが……俺とお前が友になる事は無い。俺のお前への殺意が消える事は無い」


「……そうかよ」


「俺とお前は友でもない。仲間でもない。それだけ覚えとけ」


「……わかった」


 虚しく響いたその会話は、広い廊下に溶けていく。

 俺達が歩を進める度、轟く慟哭は深く強く聞こえるようになっていった。



 ****



 〜ウィンニュイ・ヴェーラ〜


「……なんだ、この声は」


 目の前の執事タレイアは、私にそう聞いてきた。

 どうやら今響き渡っているこの慟哭を、私の仕業だと思っているらしい。

 しかしこんなの、私だって知らない。全く、ニュエルといると私まで余計な嫌疑をかけられる……。

 私はため息を吐き、執事に投げやりに言葉を返す。


「私だって知りません。何かあったらとりあえず指名手配犯を疑うその思考は安直すぎではありませんか?」


「指名手配されるような事をしているのだ、貴様は。そんな奴を疑って何が悪い」


「あーはいはいもういいです。私が悪いです。指名手配犯ですもんね」


「その態度……腹が立つ」


「私はさっきからずっと腹が立ちっぱなしですよ」


 私は今の状況を俯瞰して考えた。

 目の前には敵の執事。轟く謎の声。私個人としては今の戦闘にやる気無し。そわそわ具合を見るに、執事も私よりも謎の声の方が気になるようだ。

 私は執事にかけていた魔法を全て解除した。呪いなども含めて、全て。

 執事はそんな私の態度を怪訝に思ったのか、眉をひそめた。


「……何のつもりだ」


「この声がなんなのか知りたいでしょう? 正直私、そこまで戦いに乗り気ではありませんし……この声の正体の方が気になります」


「私が貴様をみすみす逃がすと思うのか?」


「逃がしてもらおうとは考えてませんよ。私が全力で貴方から逃げます」


 そう言うやいなや私は影を開き、その中に飛び込んだ。

 しかし。


「逃がすか――『千腕輪廻鏡写せんわんりんねきょうしゃ』」


 影の中に、執事も腕を差し入れてきた。

 この執事も影の中に――私がそう驚く間に、更に執事はその差し入れた腕を分裂させた。技名から察するに千本位はあるのだろう……その全てが影の中の私を捕まえようと伸びてくる。


「チィッ、めんどくさい!」


 私は執事の一本の腕を掴み、そして、そのまま影の中に引きずり込んだ。

 執事も影の中に、まるで湖に落ちたかのように沈み込む。

 私はやけくそになって言った。


「どうせ行くなら、一緒に行きましょう……!」


「貴様……!」


 私は笑いながら慟哭の響く方に影を進めたのだった。



 ****



 〜イラ・ペルト〜


「……何の声?」


 突然エルさんが、そう聞いてきた。

 言われてみれば確かに、何かの泣き声のようなものが聞こえてくる。

 私達は、突然轟いたその慟哭に耳をすませた。


「……何が起きてるのだ」


 国王様が眉間にシワを寄せながら、ぐぬぬぬと長い髭を揺らして歯噛みした。

 セルベール王子様も、凛とした態度をとってはいるが、その表情は恐怖の色に染まっている。よく考えたら、いくら傑物王子と言っても私と一つくらいしか変わらない。恐怖を感じて当たり前だ。事実私だって、震えるほど怖い。


「……どうすればいいの?」


 横を向くと、リナリアさんも鋼の炎杖を握りしめ、歯を食いしばっていた。

 ……と、その時だった。


『――ねえさん、そんなに握らんといてくださいな』


 突然、謎の中年男性の軽々しい声が聞こえてきた。

 えっ、どこから? 私達は揃って辺りを見渡したが……私、エルさん、リナリアさん、国王様にセルベール王子様。その五人以外に人影は全くない。


「……誰の声?」


 リナリアさんは少しだけ震えた声でそう尋ねた。

 すると――


『ワイでっせ、ワイ! 姐さん、アンタ手に持ってるでしょぉ!』


 ――と、声が再び聞こえた。

 ……ハッキリと聞いた。ここにいる五人全員が声の出処を見つめていた。

 そう。喋ったのは――『鋼の炎杖』。リナリアさんが手に握りしめている、この国の国宝だった。


『ちょっと、ちょっと、そんな熱い視線ぶつけんといてーな! ワイ、あがり症やねんて、そんな見つめられたら真っ赤になっちまう!』


 そんな事を言いながら、鋼の炎杖は照れるようにその杖身をくねくねと悶えさせた。

 リナリアさんは引きつった顔で国王様に目を向ける。


「……お父様? これ、喋りますの?」


「知らん……何も知らん……ずっと宝物庫に入れてあったから……何も知らん……」


『そうだ! ずーっと狭いわ暗いわホコリ臭いわ、けったいな場所に閉じ込めてくれてのぉー! おかげでしばらくの間めっちゃ暇やったわー! 謝ってくれや! 国王はん!』


「え……えっと……申し訳ございませんでした……?」


『おー! 謝ってくれればそれでええわ! ったく、次に何か物を仕舞う時は、自我があるかどうか確かめてから仕舞いーや!』


「は、はい……」


 杖に言い負かされる国王様。出来れば我が国のトップのこんな姿は見たくはなかった。

 すると、セルベール王子様がリナリアさんと同じような引きつった顔で、鋼の炎杖に問いかけた。


「……えーっと、すみません。一つ聞いてもよろしいですか?」


『おう! 何でも聞きや!』


「貴方は……どう言った存在なんですか?」


『どう言ったって……見て分からんのかい! 杖じゃ、杖! めっちゃ魔力込められてるけどな、杖や! 強えー杖や、なんつってな! ガハハハハハ!』


「僕の知ってる杖は、その……喋らないんですけど」


『ん? ほんならワイは、あんちゃんの知らない杖やったってことや! 兄ちゃん、あのな? この世の中にゃ常識で量れない事が山〜っ……ほどある。常識に囚われない人間……それこそが一番の常識人や! ……ワイ今ええ事言うたな! ガハハハハハ!』


 ……ヤバい人、じゃないや、杖だ。ヤバい杖だよ……。

 私はそそそっとエルさんの背に隠れた。その時、少しだけエルさんの顔が『イラちゃん可愛い……』とほころんだ気がしたが多分気のせいだろう。

 王子様と鋼の炎杖は会話を続ける。


「どうして杖が話すことができるのですか?」


『あーはいはい、なるほどなぁ。ワイはな、大昔に魔術師が作ったマジックアイテムっちゅーやつなんや』


「……だから喋るということですか?」


『ちゃうんやな、それが』


 うっざ。この杖うっざ。

 私はその声を噛み殺した。


『あんなぁ、ワイ、昔は喋らなかったんや。ただの火ィ噴く鋼でできた杖やった。でもな、ワイ、火を噴くやろ? その力が人共に悪用されたんや』


「……どんな事に使われたんですか?」


『拷問とか兵器とか人体実験とか……焼きたくも奪いたくもない人の命を、たっぷり具沢山に焼き払った』


 なんですかその過去。めっちゃ軽いノリで話すくせに背負ってる過去がヘビーすぎる。


『それでなぁ……多分、沢山ワイは人に恨まれたんやろなぁ。その怨念がワイの体に積もり積もって……気がついたら、自我を持って喋られるようになっとった』


「……杖さん……ぐずっ」


 よく見たらセルベール王子目が真っ赤! 泣いてるんですか、マジで!? チョロすぎませんか王子様!?

 いやまぁ、私も思う事がなかったわけじゃないけど……それよりは現状の混乱の度合いが大きくて、とりあえず内心でツッコミを入れる事しか出来ない。


『兄ちゃん……泣いて、くれんのか……? こんなワイの過去に……』


「ううっ、だって……辛かったでしょう……そんな、そんな……ぐすっ」


『そんな、泣かんでええんやで……だってワイ、杖やし』


「杖とか関係ありません……意思あるものに辛い過去がある……そんなの、辛いです……」


『……ううっ、兄ちゃん……兄ちゃああああん……!』


 二人……いや、一人と一本が揃って泣き始めた。

 ……杖の方は泣いているのかわからないけど、杖頭に付けられた赤色の宝玉からよく分からない汁が出てるし、多分泣いてるんだと思う。

 ていうか、その杖を持ってるリナリアさんの手にも、そのよく分からない汁がかかって……リナリアさんめっちゃ怖い顔してる……。


『……あ? さっきからなんかの泣き声するけど、何の声や?』


 ふと、杖は泣き止んで(?)先程から響き続けている慟哭について聞いてきた。

 エルさんが泣き続けるセルベール王子の代わりに答えた。


「さっきから聞こえてるんだよね……なんだろこの声?」


『ほーん、そういう事か……よっしゃ! ほな、行こか!』


「「「「「え?」」」」」


 五人の声が一つになる。

 その瞬間、杖から白い煙が出て、私達を包み込み……


『ほな行くで! 久々に力使うなぁ……張り切っちゃうで〜い!』


「ちょっと、この杖……何してんのよ!?」


 リナリアさんの悲鳴を最後に、私達はこの部屋から完全に煙と共に霧消した。



 ****



【キャラクター(?)設定】 〜鋼の炎杖〜


 ・身長……一メートルあるかないかくらい?


 ・体重……鋼製だから結構重いけど魔法の力で軽々持ち上げられるっぽい?


 ・種族……杖?


 ・年齢……大体八〇〇歳ほど?


 ・職業……ウィンダリア王国国宝……でいいのだろうか?


 ・誕生日……覚えてないけど作られた時めっちゃ暑かったし多分夏の日だと思う


 ・その関西弁風のエセ口調について……自我が芽生えた時からこの口調。多分、赤ちゃんがばぶばぶ言うのと同じ。もしかしたら違うかもしれない。


 ・自分のについてどう思う?……めっちゃイケメンだと思う(杖に顔はないだろというツッコミ待ち)


 ・性格……結構繊細。褒められると伸びるタイプなので、褒めてあげよう。ただ、お世辞でもその気になっちゃうので、もし褒め言葉がお世辞だとわかるとめっちゃヘコむから、その辺も気をつけよう。めんどくさいな。


 ・将来の夢……キャンプやバーベキューなどの時にライターやチャッカマン代わりに使われる事

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