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File4―24 怪力強盗と血色の悪魔 〜燃え広がる戦火〜

ブクマや評価や感想などよろしくお願いします!

 〜レフト・ジョーカー〜


 俺の目の前を緋の一閃が通り過ぎる。

 その緋の向こうでは、唇の端を吊り上げて笑うニュエルの顔が。


「死ねよ探偵! 殺してやるから死にやがれ!」


 俺とニュエルは、交戦していた……いや。これは交戦、と表現するようなものではない。

 一方的なワンサイドゲームだ。

 吸血族のニュエルは【血操】によって、自分の血を様々な武器に変化させる事が出来る。

 対する俺は、武器は持参しなければならない、能力もない人間族。更に、頼りの綱である武器はと言えば、ボールケンは折られ、マギカデリンジャーはどこかへ弾き飛ばされたまま忘れてきた始末。しかも、それらを折ったのも弾き飛ばしたのも、目の前で笑いながら殺しに来るニュエル本人なのだから、本当に執念深い。


「避けんな、当たれ! そんで死ね!」


「当たりも死にもしねぇよ!? 俺はこんな所で死んでられねぇんだ!」


 その時――ニュエルの持っていた血のナイフが、変化した。

 その形は、長い鎖の先に何やら重りのようなものがついていて――


(くっ、鎖分銅!?)


 俺がそれに気づいた時には、遅かった。

 俺のこめかみに血の分銅が直撃し、被っていたソフト帽がどこかへ飛んでいった。

 俺はこめかみを抑えながら、直撃の際の衝撃によりガタつく足を必死に奮い立たせ、気丈に振る舞う。


「……ってぇな」


「そのまま震えてろ。すぐに息の根止めてやる」


 血の鎖分銅は更に変化した。

 長い槍。だが、その槍部分には貫くような尖りの他に斧のような刃もついていた。

 斧槍ハルバード。それが、ニュエルが俺にトドメを刺すのに選択した武器だった。


「どっちがいい? 槍で心臓ぶち抜くか、斧でその首ちょん切るか。選ばせてやるよ」


「そうだな……残る死体が綺麗な方がいいな……ほら、俺、結構顔いいじゃん?」


「自分で言うか。そんじゃ……斧でその首、すっ飛ばす!」


 ニュエルはハルバードを引きずりながら、俺に向かって走り出す。

 そして、ハルバードの斧部分を俺の首に振るう――


「……バァカ」


 ――しかし、その刃は俺には届かなかった。

 何故なら……ニュエルの血操が、解けたから。

 ニュエルの斧槍となって固まっていた血が、溶けたから。

 俺は刃の代わりに、さっきまで刃だったはずのニュエルの血を浴びた。

 ニュエルは目を丸くして歯ぎしりをする。


「傍に森人族ウィンニュイがいるんだから……魔法の解き方くらい、教わるべきだったな?」


 俺はそうカッコつけながら、左手に握った小さな布袋をニュエルに揺らして見せつけた。

 それを見た奴は、憎々しげに唇を歪めた。


「……『親愛なる吸血鬼へ(ガーリックウィズラヴ)』か」


 そう。この布袋に入っているのは、超高級ニンニク『親愛なる吸血鬼へ(ガーリックウィズラヴ)』。

 味もニンニクとして最上級だが、それ以外にも特殊な効能を持っている。それは、『吸血族の【血操】の無効化』だ。

 ここは王城。こんな高級ニンニクも当たり前のようにキッチンに置いてあったので……今朝にこっそり忍び込んで、乾燥させたタイプのやつを一個だけ拝借した。そんでそれをすり潰して粉にして、こうして袋に入れて保管しておいた。ニュエル対策のためだ。


「本当にヤバい時のために、取っておいたんだ」


「テメェ……さっきはどうして使わなかった?」


「使うまでもなかったからな」


 俺は笑いながら、ニュエルを見据える。


「お前、……認めたくねぇけど、俺と若干似てる所あるからさ」


「ああ? お前と俺が似てるだと?」


「……お前も気づいてるだろ。なんつーか……なんて言えばいいのかわかんないけど、似てる所あんだろ」


「……チッ」


 ニュエルは舌打ちした。

 それが何よりの答えだろう。

 俺はそのまま言葉を続けた。


「だから……何となく、お前の手の内はわかりやすいんだ。だから、切り札を使うタイミングも計りやすい」


「……ああそうだな。確かにそうかもな。けどよ、それってつまり――俺だって、お前の手の内は把握してるって事だぜ?」


 ニュエルは、天井に血の鎖を打ち出した。

 そのままニュエルは昇降していき、天井にこもった夜の闇に消えた。

 クソッ、シャンデリアが全て落とされているのが痛い。シャンデリアが無いから、照明は月明かりのみ……天井の方までは照らされていない。

 闇の中から、ニュエルの声が響いてきた。


「そう。こんな状況になった時。お前なら、絶対に闇雲にあのちっちゃな銃(マギカデリンジャー)を撃つ。けど……そいつはもう、俺がどっかに弾き飛ばしたもんなぁ」


「……失くしたの、バレてたか」


「ああ。お前にはもう、打つ手がねぇってこともな!」


 ――その時、左足に激痛が走った。

 見れば、左足の太ももには、血のように赤いナイフが刺さっていて……傷口から、俺の血がだくだくと湧き染み出していた。


「ぐっ……ああああああああああああ!?」


 傷口がかっかと熱くなるような、そんな痛みに俺はたまらず声を上げる。

 何が起きたんだ……!?

 狼狽える俺の目の前には、口が裂けているのではないかと疑ってしまう程に唇を三日月型に歪めたニュエルの狂笑が……。


「咄嗟に身を反らすとはなぁ……でも、完全には避けきれなかったみたいだ」


 ……そうだ。

 何が起きたのか……俺は、今この時理解した。

 ニュエルは天井から俺の脳天目がけて、自身をダーツの矢のように見立て、自分ごとナイフを振り下ろした。

 だが、俺はその凶刃が迫る直前に、直感的に身を反らしたのだ。ニュエルが来る――そう気づいたわけじゃない。ただただ、あのままじゃヤバい……って命の危険を感じただけ。虫の知らせに近い。

 しかし、身を反らした事で上半身は凶刃を避けられても、しっかりと床を踏みしめていた下半身はどうにもならなかった。

 だから、左足にナイフが刺さったのだ。


「っ……野郎!」


 俺はニュエルを右足で蹴り飛ばし、ナイフを両手で引き抜いた。ナイフはそのままどこかへ捨てた。

 でも……左足の痛みは、ナイフを取り除いても消えることはない。むしろ、ナイフが無くなったことで溢れる血の量が増し、傷口に感じる熱みが強くなる。


「ニュエル……!」


 俺は、月明かりに照らされながら笑うニュエルを睨みつけた。



 ****



 〜ライト・マーロウ〜


「――ッ、がハッ!?」


 レフトがニュエル・ボルゴスとの戦闘中に悲鳴を上げた頃。

 僕も、怪盗ダッシュに完璧な角度でのボディーブローを食らわされ吹き飛んでいた。

 レフトが悲鳴を上げたせいで、そっちに一瞬気を取られた。その隙を突かれた。つまりはレフトのせいだ。

 僕は自分に降りかかった埃を払いながら、己の相棒がいるであろう所を、恨み三割心配七割の目線で睨んだ。


「……人の心配してる場合じゃないか」


 僕は憎々しげにそう吐き捨てた。唾や痰でも一緒に吐きたい気分だったが、生憎機人族の僕にはそんなものは一滴たりとも存在しなかった。


おとっていくいきおい……“劣勢”だな、ヒョロガキ」


 僕を殴り飛ばした怪盗ダッシュは、首の骨を鳴らしながらこちらへ歩み寄ってきた。

 下手くそな言葉遊びはもう散々だったが、黙らせるには僕では力不足のようで、非常に歯がゆい。


「少しは黙ってなよ。キミのその言葉遊びは寒気すら覚える」


「だったら耳でも塞いでろ。両手も一緒に塞がるけどな」


「……今の言葉遊びは、それなりに評価してあげるよ」


 よし。駄弁を弄する間に、僕の中で生じていた“歪み(バグ)”は完全に直った。強い衝撃を受けた際、たまに起こるのだ……三半規管を潰された生物のように、目眩やふらつきなどに苦しまされるバグが。

 僕は『トルネード』を拳に纏わせ、怪盗ダッシュに突貫した。


「死なない程度に死んでくれ」


 やられたらやり返さないと気が済まない……それが僕の性格だ。

 特に今回の事件では、怪盗ダッシュに何度も殴り飛ばされたから……せめて、一回くらい殴り飛ばさないと気が収まらない。

 振りかぶった拳を、怪盗ダッシュの顔面のど真ん中に突き刺す――が。


「真正面からの突撃か。個人的には好きだけど、今この場では愚の骨頂だな」


 ――怪盗ダッシュは、あっさりと僕の拳を受け止めた。たっぷりと筋肉を肥大させた右腕で。

 ……認めたくはない。認めたくはないけど……いや、しかし認めたくないな。認めたくはないけど……まぁ、……仕方ないし……認め……よう……。

 僕の拳では、怪盗ダッシュには傷一つ付けられない。……認めたくはない事実だが、まぁ致し方がない。怪盗ダッシュの筋肉は、鉄の鎧よりも堅牢だ。だから決して僕が弱いとかそんな話ではなく、ただただ単純に相手がおかしいってだけ。なんだあの筋肉ダルマ。

 ……そんな事、とうにわかってる。キミに初めて負けた、昨日の夜から……ずっと。

 だから――


「……何がおかしい?」


 ――僕は、怪盗ダッシュのその言葉を聞きながら、右腕のダイヤルを『テンペスト』に合わせ……ゼロ距離で発射した。


強風テンペスト・オン』


 機械音声と共に、怪盗ダッシュの右腕に阻まれた僕の拳から、緑色の風が巻き起こった。

 それは数える間にもどんどん強くなっていき、そして――怪盗ダッシュを、吹き飛ばした。


「なっ……うおおおおおおおおお!?」


 どんなに強固な鎧を持っていても……強風に体を浮かされれば、吹き飛ばざるを得ない。

 だから僕は、そうした。強風で奴の体を持ち上げ、吹き飛ばす。その戦法が、やられたらやり返さないと気が済まない僕の性格から編み出した答えだった。


「ぐっ……あああああああああ!?」


 どうやら吹き飛んだ怪盗ダッシュは、運悪く、落ちてきたシャンデリアが山積みになっていた所に突っ込んでいったようだ。シャンデリアの破片が皮膚に突き刺さったり……まぁ、色々大変な事になっている事だろう。

 まぁ、そっちの方に吹き飛ばしたのは僕の計算通りなわけだけど。

 さて……どれだけダメージ与えられたかな。まぁ……僕の見立てだと、そんなに与えられてはいないと思うが。


「……痛ってぇな!」


 思った通り、シャンデリアの破片を振り払いながら、怪盗ダッシュは僕を睨みつけていた。

 今僕がやったのは、ただ単にやられた事への意趣返し。ダメージの事なんて全く考えていない、ただの自己満足の攻撃だったのだから、効いていない事に関しては全く何も思わない。……少しだけ悔しいけど。


「ふぅむ……キツいな、これは」


 正直、予想はできてたとはいえ、やはり結構ショックだった。

 僕の渾身の『テンペスト』でもダメージは与えられないなんて。

 そもそも、僕の【機能ファンクション】は風を操るものだ。雑魚散らしや防御面に疎い敵には持ってこいの能力だが、堅牢な相手には相性が悪い。リューちゃんのような炎や、バーン・アイシクルのような圧倒的なパワーなどがあれば、僕にも勝機は見えるのだが。


「『必殺サイクロン』はチャージのための時間が必要だし……」


 僕はやれやれと首を振った。

 そんな僕に再び迫る怪盗ダッシュの影。


「オラァ!」


 僕は怪盗ダッシュの拳をすんでの所で避け、そのまま奴の背後を取った。

 そして、再び『テンペスト』で奴の体を吹き飛ばす。

 しかし、奴は今度は吹き飛ばなかった。両足を圧倒的な力で床に突き刺し、強風を大地に根を張る大樹のように耐える。


「二度目は通じねぇよ、ヒョロガキ」


「いい加減やめてくれないかな、その呼び名。僕にはちゃんと名前があるんだよ」


「知るか」


 ――そして、奴はその場で宙返った。

 空中で三日月のように反った奴は、そのまま僕の胸へと両足を振り下ろす。


「ガァッ!?」


 僕は奴に踏み潰される形でその場に崩れ落ちた。

 衝撃が僕の内部機構にショックを与え、機人族にとっては排熱などのために行っている呼吸が一瞬止まる。

 いやしかし、考えてもみてほしい。さっき僕は奴を『大地に根を張る大樹』に例えた。そのままその例を活用するなら、その大樹が突如根っこごとひっくり返って僕を踏み潰しに来たようなもの。避けられるわけがない。

 奴はそのまま僕の胸を踏みにじり、ニタリと笑った。


「さっき俺はお前ら二人を、『二人で一人の探偵』……そう例えたよな」


「……それが何か?」


 怪盗ダッシュの足をどかそうとしても、奴の力はかなりのもので、僕の力では全く歯が立たない。……僕、怪盗ダッシュと相性悪いなぁ。

 怪盗ダッシュは僕を踏む力を少し強めて言葉を続けた。


「それってさ。『どっちか一人じゃ半人前』……そういう事だよな?」


「……さぁ? 少なくとも僕の相棒は、僕がいなくても何とかやるさ」


「じゃあ、お前は?」


「……何が言いたいの」


「さっきも言ったように、常識は非常識には勝てない。それに対して、お前は非常識が隣に居るから大丈夫だって言ったな」


 案外記憶力あるなコイツ。


「だけどそのお隣の非常識くんは、ニュエル・ボルゴスがかっさらってったぜ。つまり、今の状況は結局さっきと逆戻りってわけだ」


 ……僕はずっと黙っていた。

 そう、ずっと――


「……つまり。お前に勝ち目はなくなった……そういう事だぜ、ヒョロガキ?」


「……そうかな」


「そうだよ」


「……本当に?」


 僕はそれと同時に右腕を奴に向け――『必殺サイクロン』を、撃ち放った。


「ずっとくっちゃべってくれてありがとう」


 僕は心からお礼を告げた。

 それと同時。怪盗ダッシュは、大きく、……それはもう、凄まじくド派手に吹き飛んだ。その姿はまるでロケット花火。

 僕が何をしたか――簡単な事だ。奴が自慢気にくっちゃべってる間に、『必殺サイクロン』に必要なエネルギーをチャージさせてもらった。


「キミ、確かに強いし記憶力も思ってたより良かったけど……それでも頭は良くないね」


 僕はそっと微笑んだ。

 今まで好き勝手言ってくれたので、その意趣返しだ。

 特に何も考えず自己満足のためだけに長々と喋った結果みすみす僕に時間を与えてしまうようなド間抜けな醜態を晒した怪盗ダッシュくんは、夜の闇に紛れてしまって見えないが、粗方天井にでも突き刺さっているのだろう。

 やがて、パラパラと瓦礫と一緒に怪盗ダッシュも落ちてきた。

 僕は軽く手首を捻り、微笑をたたえた。


「……油断した。次はねぇぞヒョロガキ」


「もうお喋りはいいからさ。来なよ」


「ああ――行くぞ!」


 再び、戦いの火花が散った。



 ****



 〜園寺映瑠〜


 私とイラちゃんは、さっきニュエルなんちゃらと戦っていた場所まで戻ってきていた。

 レフトくんが失くした……えーっと……なんか凄そうな名前の銃。それを探しに来たんだ。

 私が鼻歌交じりに独り言を呟いていたら、イラちゃんがノリノリで返してきてくれた。かわいい。


「どーこ行ったー?」


「わっかりっませーん!」


「こーまったなー!」


「……本当にどこなんでしょうね。困った……」


 急に素に戻るイラちゃん。頭を抱えて、ため息を吐いている。

 私はそんなイラちゃんの頭を撫でる。サラサラな髪がほのかに揺れた。


「大丈夫大丈夫、見つかるって」


「……そうですよね、見つかりますよね」


「そうそう。それにイラちゃん、目がいいんでしょ? その視力に期待してるよ〜?」


「う……プレッシャーです」


 あははと笑い合いながら、辺りを見渡す。

 本当はこんなほのぼのやってる場合じゃないんだけど、焦っても仕方がない。むしろ焦りは視界を狭くすると思うし。色んな意味で。


「あ、そうだ。守護獣達みんなにも手伝ってもらおう」


 私はペンダントを弾き、スパイド、バッティー、ビートルーブにスタグス、フロッガーにデンデンを呼び出した。

 私は皆に『レフトくんの銃を探して』って頼んだ……んだけど。デンデンだけは、皆と違って探しに行こうとはしなかった。


「……デンデン、どうしたの?」


 私はデンデンと視線をなるべく合わせるために屈んだ。

 するとデンデンは突然変形して、私の顔に飛び込んできた。


「わっ!?」


 最初は何事か……と思ったけど、思い出した。

 デンデンは変形するとゴーグルになる。それも、サーモグラフィーやセンサー、暗視ゴーグルなどの機能を持った、ハイテクなゴーグルに。探し物をするにはうってつけだ。

 確かに私でも使えるだろうけど……でも、このデンデンゴーグルは私よりももっと使いこなせる人がいる。


「……ね、デンデン。私じゃなくて、イラちゃんに使わせてもいいかな」


 デンデンのグラス部分に『OK』とドット調の文字が表示された。

 ……この世界、共用語は日本語だし文字もひらがなカタカナ漢字を使う日本従来のスタイル通りなのに、ちょいちょい外来語とか英語やらが使われているのはどういう事だろう? もしかしたら、やっぱりこの異世界何かあるんじゃ……。


「……おーい。エルさーん?」


「……わっ。イラちゃん」


 目の前に突然イラちゃんの顔のドアップが。かわいい。

 まぁ有り得ないよね。こんなかわいい子に裏があるわけない。言語問題は……神様みたいなポジションの人が、私を転生させる時に色々気を利かせてくれたに違いない。


「どうしました? ボーッとしてましたよ。休みますか」


「それよりイラちゃん、これ付けてみてよ」


 私はイラちゃんを無視して(心配してくれてたのにごめんね)デンデンゴーグルを手渡した。

 イラちゃんはゴーグルを透かしてみたりして、あれこれ首を捻っていたけど、やがて得心がいったように顔を晴れやかに緩ませた。


「ああ! これ、デンデンちゃんですか?」


「正解! これ、暗視とかめっちゃ機能あるから、せっかくなら目がいいイラちゃんに使ってもらいたいなって」


「いいんですか、私なんか」


「イラちゃんの方が私よりも使えるよ。お願い、イラちゃん」


「わっかりました! このイラ・ペルト、絶対に探偵さんの銃を見つけてみせます!」


 イラちゃんはノリノリで私の手渡したデンデンゴーグルを装着した。……ゴーグルのデザインのせいか、付けた姿がとても間抜けっぽい。ごめんねデンデン。ごめんねイラちゃん。


「むむむ……あ、見つけましたよ」


 だけど、その間抜け面になってしまった甲斐はあったようだ。

 イラちゃんは弾むような声音で私に報告してきた。


「あそこの奥の方です」


「……暗いね」


「明かりがついてませんからね。私はデンデンちゃんのおかげで見えますけど」


「一緒に、手、繋いで行こうよ。ちょっと怖いし」


「……そうですね。繋いでいきましょう」


 差し出されたイラちゃんの手を掴むと、イラちゃんのあったかさが私の手を通して伝わってくる。それだけで、目の前の暗闇の恐怖も薄れていく気がした。

 ……イラちゃんはまだゴーグルつけっぱなしなへんてこ姿だけど。

 一歩一歩、銃に向かって歩み寄る。やがて、ゴーグルを付けていない私の目にも銃が見えるくらいにまで近づいた時――


「むぐっ!?」


 ――突然何かに私の体が持ち上げられた。


「っ、エルさん!?」


 イラちゃんもバッと私の方に首を向ける。

 私は私を持ち上げた何かをジッと見た。

 これは……黒い……触手? ……あれ? 私、これと同じのを昨日見た気がする……!


 ――『「うわーっ、影が触手みたいにー! 触手プレイはやだーっ!」』――


 あ。昨日、()()()()()()()()()()()()()()()()()()……!


「まさか……!」


 私は後ろを振り向いた。

 そこには――


「さっきぶりです、お二人さん」


 ――薄く微笑む、さっき吹っ飛んだはずのウィンニュイ・ヴェーラその人がいた。



 ****



【キャラクター設定】〜ジョケル・ルイシュミット〜


 ・身長……一六五センチ


 ・体重……四三キロ


 ・種族……人間族


 ・年齢……五三歳


 ・職業……生物学者


 ・誕生日……一〇月八日


 ・家族構成……妻(離婚)、娘(享年一八歳)


 ・娘の名前……ガイア・ルイシュミット


 ・自分にとって娘とは……生きる目的。今も、なお。


 ・世間に発表した研究……『絶叫人型人参マンドラゴラの水耕栽培方法の確立』、『詳細不明だった灰被姫犀シンデレライノスの生態調査』、『実在しないとまで言われていた氷猿アイスエイジの発見』、『アミルーパ・ウイルスに対するワクチン開発』、『桜之龍(サクラノリュウ)の鱗のみから生成されるバチュニティア鉱石の安定生産方法の確立』、『完全生命体創造研究』

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