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File4―22 怪力強盗と血色の悪魔 〜マキシマム! サイクロンドライブ!〜

 〜レフト・ジョーカー〜


 二ュエルとの戦いの真っ只中。

 俺が二ュエルの拳を身を投げ打って受け止め、そのまま奴の動きを止めた。その隙にライトが二ュエルを『テンペスト』で窓の外へと吹き飛ばした。

 しかし、二ュエルはその程度では止められない。

 二ュエルは血の鎖を空中で投げ、それをウィンニュイがキャッチ。そのまま彼女が再び奴を引き上げた。


「敵ながらいい連携だねぇ」


 ライトは右腕のダイヤルを『必殺サイクロン』に合わせながら苦笑する。

 そして俺にささやいた。


「レフト。戦いの中で隙を見て僕は奴に『必殺サイクロン』を撃ち込むから……察して避けてくれ。後、チャージのための時間稼ぎもよろしく」


「察して避けろとか時間稼ぎとかって……無茶言うなぁ」


「大丈夫さ。だって僕とキミは相棒なんだから。そうだろう、レフト?」


「……そうだな、相棒。任せとけ」


 俺はライトの胸を拳で叩き、前へ足を踏み出した。

 二ュエルは、自分を引き上げたウィンニュイを庇うように、後方に押し下げた。


「ウィンニュイ、まだ探偵二号に蹴られた所が痛むだろ。下がって休んどけ」


「でも……二ュエル一人で、大丈夫ですか?」


「心配すんな」


 二ュエルはそう言うと同時に、血のナイフを片手に俺へと駆け出した。

 俺は咄嗟にそれを対処するが、二ュエルは何度も俺に血のナイフの連撃を放つ。

 それを何度も回避するも、正直かなり厳しい。実際何度か肌をかすめた。

 俺は二ュエルが大袈裟にナイフをアッパーカットのように切り上げたのをバク転で避け、そのまま距離を取った。


「いつまでも避けられると思ってんじゃねーぞ?」


「そっちこそ、いつまでも優勢でいられると思うなよ?」


「強がりだけは一丁前だな」


「強がりだけは得意なんだよ」


 二ュエルと言葉を交わしながら、ライトの方を見た。

 ライトは今、『必殺サイクロン』の為のエネルギーをチャージしている。あまり動かさない方がいい。

 それを確認した俺は、再び二ュエルと対峙する。

 そして、懐から探偵道具『メモちょう』を取り出し、数枚破いて二ュエルの方に投げつけた。


「行けっ!」


 破かれた数枚の白紙は、空中で正方形に近い紙から白い小鳥へと形を変えた。

 数匹の白い小鳥が二ュエルへと飛んでいく。

 しかし。


「それはこの前見たぜッ!?」


 そう言いながら二ュエルは、血のナイフを片手に、もう片方の手に血で作った手斧を持つ。


「芸が乏しいんだよ探偵!」


 そう言いながら二ュエルは二つの武器で白い小鳥を全て斬り落とそうとした――だが。


「――!?」


 血のナイフが小鳥を斬り裂いた瞬間、その小鳥は爆発した。

 その爆発は他の小鳥へと伝播していき、二ュエルの周りを爆炎が取り囲んだ。

 やがて、爆煙の中から膝をついた二ュエルが現れる。


「ぐっ……」


 俺はそんな二ュエルに自慢気に歩み寄った。


「探偵道具『ニトロ・ハニー』。花粉が火薬になっている花『バクフェン』から作った蜂蜜だ。更に、少しの衝撃で火花を散らす火打ち石『短気は損気(ヘイトストーン)』の粉末をメモ鳥にあらかじめ染み込ませておいた」


 ライトの必殺サイクロンを溜め終わるまでの時間稼ぎの為に、一から十まで説明してやる。

 二ュエルは変な所で律儀なので、膝をつきながら俺の話をキチンと聞いていた。

 ……いや、それとも。今のピンチな状況も、今俺が実行した爆発鳥作戦(今適当に考えた作戦名だ)も、この野郎は楽しんでいるのかもしれない。事実、今、二ュエルは笑っていた。


「なるほどねぇ……ニトロ・ハニーとヘイトストーンか。確かにその組み合わせは、ニトログリセリンみてーな効果を発揮するな。爆発の威力は低くなるが、扱いやすくもなる」


 ……コイツ意外とそういう事知ってんな。ニトログリセリンとか、俺は『なんかヤバい爆発するやつ』くらいにしか知らんぞ。

 ぶっちゃけると、この二つの組み合わせもおやっさんからの受け売りだ。作ったのはライトだし。

 俺はそんな事を考えながら、膝をつく二ュエルにマギカデリンジャーの銃口を向けた。


「大人しく降伏しろ」


 カチリ。デリンジャーの銃身から金属音が鳴る。

 しかし。次の瞬間、マギカデリンジャーは俺の右手から離れ、宙を舞っていた。

 じんじんと痛む右手の甲の向こうで、マギカデリンジャーが虚しく廊下を転がっていった。

 ――弾き飛ばされた。目にも止まらぬ速度で。誰に? ……当然、目の前で膝をついているこの男。二ュエルだ。

 俺は瞬時にそう思考し、二ュエルから距離を取った。

 どうやって? 俺は二ュエルの左手を注視した。そこには、何かが握られている。

 赤くてしなる、細長い何か――。


「……なるほど。ムチか」


 俺は二ュエルの持っているそれを、鞭だと推理した。

 鞭なら、実力があれば目にも止まらぬ速さで一撃を放てるだろう。それに、俺の右手の甲に未だにじんじんと響く痛み。これも、考えてみれば鞭のようにしなる物に打たれた時の痛みによく似ている。

 つまり、二ュエルは血操で己の血を鞭に変え、その鞭で俺の右手の甲を打ち、マギカデリンジャーを叩き落としたという訳だ。

 俺は赤くなった右手の甲に息を吹きかけながら、二ュエルを睨みつけた。


「随分と鞭打ちが上手だな。騎手ジョッキーとかに転職すれば?」


「やる気も興味もねぇな。今の俺にあるのはお前への“殺る気”だけだ」


「随分と俺にお熱だねぇ」


「言っただろ? お前と初めて殺り合ってから……ずっとお前を、殺したくてたまらない!」


 そう言うと二ュエルは再び鞭をしならせて俺に襲いかかってきた。

 ヒュン、と鞭が空気を切り裂く音。俺は紙一重で鞭を避け、逆にその鞭を左手で掴み取った。そのまま左手に鞭を巻き付け、思いっきり引っ張った。


「オラッ!」


 二ュエルの手から血の鞭は引っこ抜け、俺の手元に飛んできた。

 それと同時に、ライトが俺に合図を送る。必殺サイクロンのチャージが完了したのだ。


「悪ぃな、今日はここまでだ。じゃあな、ニュエル」


 俺が手を振ると同時に、ライトの右手から龍のようにうねる風の塊が射出された。

 それは竜巻のように渦を巻き、二ュエルとウィンニュイを飲み込み、王城の壁を崩壊させて二人を外へと吹き飛ばした。


「チッ、ウィンニュイ俺に掴まれ!」


 吹き飛ばされながら、ウィンニュイを己の体に抱き寄せる二ュエルを見送った俺は、ふぅとため息を吐くライトに笑いかけた。


「とりあえずこの場はなんとかなったな」


「……どうだろうねぇ。あの男、随分とキミに執着してるし……このままあっさり終わるとは思えない」


「……モテる男は辛いな」


「男にモテて嬉しいかい?」


「全っ然嬉しくねぇ!」


 そこでようやく、俺達二人はその場に腰を下ろして、互いの苦労を労うかのようにお互いに手を打ち合った。



 ****



 〜ウィンニュイ・ヴェーラ〜



「ウィンニュイ、俺に掴まれ!」


 探偵二号ライト・マーロウが私達を何やら巨大な暴風で吹き飛ばした時。二ュエルは私に手を伸ばし、そのまま私の体を抱き寄せた。

 だが、そのまま私達二人は夜空へと吹き飛ばされ、どこか遠くへ飛んで行ってしまいそうになっていた。


「チッ、これでどうだ!?」


 二ュエルは瞬時に右手の平を傷つけ、そこに溢れ出た血に血操を使った。

 流れていた血は鎖状になって、二ュエルの右手から射出される。

 金属音と共に血の鎖はどんどん伸びていく。それを何かに巻き付けて、吹き飛ばされるのを阻止しようとしているのだろう。

 しかし、中々鎖は何にも巻き付かない。虚しく空を切るだけだった。


「ガッ……くっそ……!?」


 やがて、二ュエルが放出できる血の限界が近づこうとしたその時、奇跡的に王城の屋根に立てられた避雷針に鎖が巻きついた。


「っ、ギリギリセーフ!」


 二ュエルは私を抱き寄せる腕の力を一層強くし、血の鎖を手繰った。そんな二ュエルの頑張りの甲斐があり、何とか私達二人は吹き飛ばされる事もなく、王城の屋根の上に着陸する事が出来たのだった。


「っ……ハァー……キッツ」


 血を限界まで出し尽くした二ュエルは、いつも悪い顔色がより悪くなっていた。

 恐らく、今出した鎖分の血を回収しても、まだ完全回復には足りないだろう。

 新たな血を摂取させなければ。

 私は服の袖をまくり、二ュエルの口に二の腕を押し付けた。


「二ュエル。飲んでください」


 だが、二ュエルは私の腕を押し返して手をひらひらと振った。


「……いらねぇ」


「どうして」


「どうしてって……」


 二ュエルはそこでモゴモゴと口ごもった。

 ……まぁ、理由は想像つきますけど。

 二ュエルは奴隷オークションで私に一目惚れしちゃった挙句に持ち金全部はたいて後先考え無しに私を買っちゃったような男。しかも、私を奴隷として買っておいて、特に肉体的な関係を求めず『本当にお前は二十歳なのか』と疑ってしまう程にプラトニックな関係に落ち着いている始末。奴隷である私の方が立場は実質上ですし。私が目を少しでもうるうるさせて上目遣い気味に頼んでやれば、何でも言う事聞いてくれますからねこの男。チョロい。私のご主人様チョロい。

 まぁ要するに私の血を飲まない理由は至極単純、『惚れた女の血なんて飲めない』という凄く童貞くさい理由だろう。


「どうせまた戦うんでしょう。血飲んどかなきゃ、あの探偵に即やられますよ。即」


「嫌だ。お前の肌にも傷がつくだろ」


「私は別に魔法で治せますし。ていうか、二ュエルこそ手の平とか毎回傷つけて、ボロボロじゃないですか。魔法で治してあげようとしても拒否するし……変な所で強情ですよね貴方」


「……でも」


「でもじゃありません。ハイ、飲む」


 無理やり二ュエルの牙に私の腕を押し付けた。

 牙が私の肌に刺さり、血が流れ出た。


「ほら、血出ちゃいましたし飲んでください。でないと私、ただの流し損ですよ」


「……わかったよ」


 そう言うと二ュエルは、ゆっくりと私の血を吸い始めた。

 平静を装っているものの、二ュエルの耳は真っ赤だ。恥ずかしがってるのだろう。本当に二ュエルは二十歳なのだろうか。二十歳ってもう少し大人だと思うのだが。


「……んっ」


 途中、二ュエルの舌が私の腕を這った。

 別に嫌ではない。嫌ではないが……くすぐったい。


「……あっ」


 なんか……段々、変な気分になってきた。

 私自身、二ュエルの事は異性として好きだ。それを別に否定する気は無い。言う気もありませんけど。

 その気持ちが影響しているのだろうか。それとも、好きな異性に血を吸われているという状況が影響しているのか。


「っ……」


 ……私の頬に熱が集まるのがわかる。

 今の私に出来ることは、私の血を吸う二ュエルが、私のその顔に気づかない事を願うのみ。


(……やっぱり、血を吸ってくださいとか言うんじゃなかった)


 私はちょっぴり後悔したのだった。



 ****



 〜イラ・ペルト〜


「……どうするんですかこれ」


 今、私とエルさん、それに探偵さんにライトくんは揃って頭を抱えていた。

 目の前には、崩壊して外が丸見えの壁、砕け散ったステンドグラスの破片、焼け焦げた床……先程の戦いの結果、恐らくかなりの建築費を使ったのであろう王城の一角は、悲惨な有様になっていた。


「……これ、修理費とか請求されんのかな」


 探偵さんは顔を青くしながらそう呟いた。

 ……もしそうなったら、一巻の終わりだ。私達の探偵事務所は間違いなく潰れる。いや、それだけで済めばまだラッキー。王城の修理費なんて、どれだけかかるのか想像もつかない……。

 ライトくんが震える指先でステンドグラスの破片をつまみ上げながら言った。


「……レフト。このステンドグラスの破片をちょっと解析してみたんだけど……これ作った技術、今はロストテクノロジーになってるよ」


「つまり、どういう事だ?」


「このステンドグラスは、とある技術者が独自の製法で作り上げた、言わば至高の一品。その技術者は確か弟子も取らずに一昨年亡くなって……それ以来、この製法でのステンドグラスは――」


「いや、うんちくはいいや。簡潔に言ってくれ」


「このステンドグラスは弁償不可能。プライスレスな代物って事」


「……わーお」


 私達を取り囲む空気がどんどん重くなっていく。

 ふとエルさんが裏返った声を張り上げた。


「でで、でもさ!? あの、二ュエル……なんちゃらのせいでもあるんだし……あの王様、優しそうだったし! 許してくれそうじゃない!?」


 しかし、そんなエルさんの希望的観測に探偵さんが首を横に振った。


「王様はいいんだよ。王様は。問題は王妃様……アフロディーテ様だよ」


 探偵さんも、ライトくんと同じようにステンドグラスの破片をつまみ上げ、ため息を吐いた。

 そんな探偵さんにエルさんは首を傾げて、聞いた。


「どういう事?」


「元【天人族】……つっても、異世界人のお前にはわかりにくいか。元神様なんだよ、アフロディーテ様」


「……へぇ」


「で、そのアフロディーテ様はまぁ、神様の間に伝わる『掟』を平気で破りまくって、天人族失格の烙印を押されちまうような女な訳よ」


「ふんふん」


「他にも色々とやらかし話聞くし……。それに、鬼畜サディストなリナリアとか、超がつくほど自由奔放なアリア様の産みの親だぜ? そんな女が……この惨状見て、どんな反応するか想像つくか?」


「……まぁ、まともな人ではなさそうだね……」


「意外とあっさり許してくれるかもしれねぇけど……リナリア(アレ)とかアリア様(アレ)の親だしなぁ」


 再び、思い沈黙が流れる。

 やがて、ライトくんがゆっくりと口を開いた。


「……とりあえず、怪盗ダッシュが暴れてる所に行こうか。そこで何かしら活躍出来れば……これもいい感じにチャラにしてくれるかもしれない」


 そんなライトくんの意見に、私達は揃って頷いた。


「それしかねぇよな……」

「皆さん、頑張りましょう……」

「えい、えい、おー……」


 虚しくエルさんの勝鬨かちどきが響く中、私達四人は並んで歩き出した。



 ****



 〜バーン隊VSジョケル博士〜


 星空の下、バーン隊とジョケル・ルイシュミット博士は戦闘の火花を散らしていた。

 だが、バーン隊総勢一二人に対して、ジョケル博士はたった一人。その差は歴然か……と、思われたが。


「何なんスかこの化け物!?」


 ガリウスが悲鳴を上げた先には、全長一五メートルはあろうかという四足歩行の生物がいた。

 その四足歩行の生物は、頭はコウモリのようで、胴体はトカゲのような蛇腹になっており、所々からタコのような触手が生えている。前両足はゴリラの腕のように筋肉質。ただし指の代わりに毒の牙を光らせるコブラが両の手に五本ずつ生えていた。そんなグロテスクな前足に比べ、後ろ両足はまるで人間の女性のようなスラッと長い、毛の生えていない美脚。それが逆に異質キモさを際立てていた。尻尾には、極太の人などの大型生物を食べてしまう花『食人花バクルフラワー』が一本、透明な蜜を口からヨダレのように垂らしていた。


「キメェ! キメェ!」


 キャシィはマスク越しでも響く程の大きな声で、リキラの服のすそを掴みながら叫ぶ。

 だが、当のリキラはメガネの奥で瞳を輝かせ、目の前の合成獣キメラに興味津々な様子だ。


(こんなにも様々な生物が融合している……こんな合成獣キメラは見た事がない。もはや芸術品……!)


「うわよく見たら陰キャメガネもキメェ! なんでこんな糞キモい化け物に目ェキラキラさせてんだよ! 死ねよもう!」


 キャシィの暴言も耳には入らず、リキラはメガネを光らせる。

 そんなリキラの様子に、少しだけ嬉しそうにしながらジョケル博士はこの合成獣キメラの説明を始めた。


「このキメラは私が数年前に作った、近年では最高の出来のものだ。更にそれを『完全生命体』の細胞生成技術の応用で試験管に収納する事に成功した。今やって見せたように、試験管を割る事をトリガーとし、いつでもこのキメラを現出させる事を可能にした」


 そう。この全長一五メートルのキメラは、ジョケル博士が取り出した試験管から現れたのだ。

 白い粘性の液体が入った試験管を彼が懐から取り出し、地面に投げつけて割った瞬間、中の白い液体がどんどん膨らんでいき、このキメラに変化したのだ。


「凄い技術だ。敵ながら拍手を送りたい」


「送るな送るな! アホ!」


 リキラが手を叩こうとするのを、必死で止めるキャシィ。

 そんな彼らを他所に、突然キメラが胴体に生えているタコの触手をアステロルに伸ばした。


「むぅっ……これは……触手?」


 触手がアステロルの全身に絡みつく。

 アステロルは手を獅子の爪に【獣化】させ、触手を切断しようと試みるが、それより先にどんどん触手がアステロルの全身を這っていった。


「うげっ、おっさん(アステロル)の触手プレイとか誰得なんだよ!?」


 二六歳アラサーのおっさんの触手プレイ……元からアステロルが老け顔という事もあり、そのビジュアルは凄まじいものだった。

 その閲覧注意な絵面に、吐き気を堪えるように、電気人間に変身していたジャッカーが嘆いた。

 ジャッカーは電気をバチバチとスパークさせながらキメラに吠える。


「どうせなら女子勢に絡みつけよ! キメラ野郎!」


「そーッスよ! どうせならラヴィーとか!」


 ジャッカーに同調するガリウス。

 しかし、最後の余計な一言がラヴィーの気を立たせた。


「は? ちょっとガリウス、それどういう意味?」


「まーまー落ち着いてラヴィー!? ガリウスもっ、今そんなこと言ってる場合じゃないでしょ!?」


 極寒零度の目線を持ってガリウスに詰め寄るラヴィー。

 そんな彼女を止めるべく、ガリウスの親友であるアウラは引き攣った笑いを浮かべた。

 ネネリートは、そんな男勢を極限まで蔑んだような目で見つめながら兎の耳を揺らす。


「子供は見ちゃダメ!」


「……フララ。僕もう一六歳なんだけど」


 ミューの両目を塞ぐフララ。

 しかしミューはそれに不満気に愚痴を漏らした。


「触手プレイ……それなら、ライトくんはボクに振り向いてくれるでありますかね?」


「この場にライトはいない。集中しろアホ」


 真剣な顔でとぼけた発言をするリューを冷たくいなすバーン。

 そんなバーン隊を見つめて、ジョケル博士は『コイツら全員どうしようもねぇな』という感想を胸中に抱いていた。


「いいからはよ助けんかい!」


 そんな愉快なコントを繰り広げる彼らに、堪忍袋の緒が切れたようにアステロルが触手と格闘しながら怒鳴る。

 そこでようやく正気に戻ったバーン隊は、触手を切り裂き、撃ち抜いてアステロルを救出した。


「ったく……さかるのは後にしろ!」


 アステロルのもっともな言い分を最後に、キメラが甲高い砲声を上げた。

 戦いはまだ、終わらない。



 ****



【小話】〜ジョケル博士と出会う前までのバーン隊〜


「庭なんか見回って意味あんのかよ」


「やかましいジャッカー。王家の偉大なる庭だぞ。ちゃんと任務に集中しろ」


「出たよアステロルのジジ臭い説教」


「なんだとォジャッカー!」


「やるかおっさん!?」


「「うおおおおおおおおおおおおお!」」


「……とまぁ、そんな二人は無視しまして。最近、ラヴィーとはどうなの、ガリウス?」


「唐突ッスねアウラ!? まぁ、ぼちぼち……っスかね」


「……もっと頑張ってよ。今年中に二人には付き合って欲しいな」


「つっ、『突き合う』……!? アウラ、な、な、なんて事を……!」


「多分ガリウスの『つきあう』は漢字が違うと思うなー」


「あっ、誰かいるでありますよバーン先輩!」


「……うっげぇ面倒くせぇ……絶対侵入者じゃんか……」



 ――そしてFile4―21の『バーン・アイシクル』パートに続く

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